「いわぬが花、聞かぬが花」過去の恋愛についてはこれが鉄則/大人の男と女のつきあい方

「いわぬが花、聞かぬが花」過去の恋愛についてはこれが鉄則/大人の男と女のつきあい方 pixta_23226566_S.jpg40歳を過ぎ、しかも家庭を持つ男の恋愛は難しいのが現実。しかし、年齢を重ねても、たとえ結婚していても異性と付き合うことで人間は磨かれる、と著者は考えます。

本書『大人の「男と女」のつきあい方』で、成熟した大人の男と女が品格を忘れず愉しくつきあうための知恵を学びませんか?

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大人の男の潔さを持っているか

「妻が結婚前に異性とつきあっていた人数は何人までなら許せますか」

という内容のアンケート調査をテレビでやっていた。60歳以上の夫たちは、圧倒的にゼロが多かった。「当然、自分がはじめて」というお考えのようである。

年齢が下がるほど3人、5人、なかには10人と人数が増えていった。
人数だけでなく、自分の妻や恋人が、過去にどんな男性とつきあっていたかということに、異常なまでに関心を示す男性がいる。だが、相手の女性が正直に話すわけがない。

「そんなステキな男性とつきあっていたのか。それはよかったね」
かりに問われた女性が正直に話したところで、こんな反応をする男はまずいない。それは女性と男性の立場を換えても同じことだろう。

男性でも女性でも、人を好きになってしまうと相手の過去に少なからず興味を持つ。それは、ある意味で愛情の表れだろう。人を好きになってしまうと、多くの人は自分と出会う前の相手の過去に、まったくの無関心ではいられなくなってしまうようだ。

だが、相手の過去への過度の関心は避けたほうがいい。
現在の20代から40代の世代は、10代の半ばからセックスを含めた恋愛を経験してきているから無縁の話かもしれないが、かつては結婚相手の処女性に異常なほどこだわる男性が数多くいた。さんざん悪所通いをした自分の過去には寛大なのに、である。

一九世紀後半、英国の作家トーマス・ハーディーが書いた『ダーバビル家のテス』は、奉公先の道楽息子アレックに犯され、私生児を出産した過去を持つ主人公テスの純愛と悲劇を描いた名作だ。自分を愛しているエンジェルに対して、テスが自分の過去の秘密を包み隠さず話してから結ばれるのを選んでしまったことで、悲劇が始まる。

エンジェルはテスの告白を聞き、ショックのあまり家を出ていってしまう。数年後、彼がそのショックを克服して、再びやり直そうとテスの元に戻ったとき、彼女はアレックの囲い者となっている。テスはアレックを刺し、エンジェルと逃亡の旅に出て、束の間の幸福を味わうが、捕らえられて死刑となる。

何かと話題を提供するロマン・ポランスキーが監督し、ナスターシャ・キンスキー主演で映画化もされた。ご覧になった方も多いだろう。
もちろん、作品の舞台は一九世紀の英国。当時の恋愛事情と現代のそれを、同じ次元で考えることはできない。だが、恋愛において、相手の過去にどう対峙(たいじ)するかという大きな問題を突きつけている作品でもある。

テスのような不幸な過去を背負った女性の場合、たとえ彼女自身に落ち度がなかったとしても、そんな女性を愛してしまった男の決断には、なかなかつらいものがあることは否定できない。いま、私が選択を迫られたとしたら、どうするだろうか。

だが、テスの例はさておき、私が思うに、男子たるもの、自分と出会う以前の相手の恋愛には、できるだけ無関心でいるべきだと思う。相手の過去のエピソードなど聞いたところで、不愉快になることはあっても、幸せな気分になることなど万に―つもない。

人を好きになると、多くの人はその人の過去をも占有したいと思う。それは否定できない。だが、自分が不在である相手の過去は、その人のものであって、どんなにあがこうとも新たに上書きすることはできないのだ。そうであるならば、いま自分の目の前にいて、これからを自分に託そうとしている相手との未来にだけ目を向ければいいのである。

それでも、ときとして相手の過去の恋愛に想像をめぐらすことがあるかもしれない。そこをじっと我慢するのが男ではないだろうか。それが相手に対する本当の思いやりというものだろう。叩けば埃(ほこり)の出る身であれば、なおさらである。

何よりも、どんなに強く相手の過去を欲しがっても、それは絶対に手に入れることのできないものなのだ。

「いわぬが花、聞かぬが花」
結婚相手であれ、恋人同士であれ、過去の恋愛に関してはこれが鉄則である。

 

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川北義則(かわきた・よしのり)
1935年大阪生まれ。1958年慶應義塾大学経済学部卒業後、東京スポーツ新聞社に入社。文化部長、出版部長を歴任。1977年に退社し、日本クリエート社を設立する。現在、出版プロデューサーとして活躍するとともに、エッセイスト・評論家として、新聞や雑誌などに執筆。講演なども精力的に行なっている。主な著書に『遊びの品格』(KADOKAWA)、『40歳から伸びる人、40歳で止まる人』『男の品格』『人間関係のしきたり』(以上、PHP研究所)など。

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『大人の「男と女」のつきあい方』
(川北義則 / KADOKAWA)
「年齢を重ねても、たとえ結婚していたとしても、異性と付き合うことによって、人間は磨かれる」というのが著者の考え。しかし、40歳を過ぎてから、 しかも家庭を持つ男の恋愛は難しいのが現実です。 本書は、成熟した大人の男と女が品格を忘れず、愉しくつきあうための知恵を紹介。 いつまでも色気のある男は、仕事も人生もうまくいく!

 
この記事は書籍『大人の「男と女」のつきあい方』からの抜粋です

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