毎日の生活にドキドキやわくわく、そしてホロリなど様々な感情を届けてくれるNHK連続テレビ小説（通称朝ドラ）。毎日が発見ネットではエンタメライターの田幸和歌子さんに、楽しみ方や豆知識を語っていただく連載をお届けしています。今週は「ニーニーと視聴者の関係性」について。あなたはどのように観ましたか？
※本記事にはネタバレが含まれています。
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本土復帰前の沖縄本島・やんばる地域で生まれ育ったヒロインと家族の50年間の歩みを描くNHK連続テレビ小説『ちむどんどん』第9週。
先週は新聞社で常識を勉強したかと思えば、今週、暢子（黒島結菜）がオーナー・房子（原田美枝子）に命じられたのは、ヨシ（大島蓉子）という女性が営むおでん屋を黒字にすること。
これは暢子がアッラ・フォンターナで働き始めて3年目になり、仕事に慣れてきて勝手にアレンジに走るようになっていたため「基本の大切さ」を教えるためだった。
しかし、おでんを食べたことがなかった暢子は早々に「イタリア風おでん」で基本を逸脱し、友人・和彦（宮沢氷魚）に「おでんの屋台に立ち寄る人が求めているのは、もっとありきたりな、ホッと心が安らぐような味のおでんではないか」とド正論をぶつけられると、「和彦君に料理の何がわかるの？」と憤慨。
一方、房子が暢子をかつて引き取ろうとしていた「大おば」であること、戦後の闇市で屋台から商いを立ち上げたことなどを知り、基本の大切さに気付く。
そこから、足てびちを使っておでん屋を繁盛させ、アッラ・フォンターナに戻ることを許されるという展開は、先週終わりの次週予告に「おでん屋」が登場したこと、サブタイトル「てびち！てびち！てびち！」を見た時点で予想していた人も多かっただろう。
しかし、読めないのは、６月10日放送分の『あさイチ』プレミアムトークにニーニーこと賢秀を演じる竜星涼さんが出演したこと。
『あさイチ』の金曜トークには、結婚、死、再登場など、物語的にもキャラ的にも大きな節目を迎える人が来ることが多い。
その点、今週のニーニーといえば、「紅茶豆腐」なる怪しいビジネスに手を染め、再び母・優子（仲間由紀恵）に借金した挙句、詐欺に騙され、鶴見を去る。
そして暢子に手紙を送り、同封した600円だけ優子に送ってくれるよう伝えた後、給料を前借りしてトンズラしていた千葉の養豚場に戻っていたのだ。
なぜ平然と戻れるのか呆れるばかりだが、ある意味、ニーニー的には通常営業であるだけに、なぜこのタイミングで竜星涼さんが？
『あさイチ』にはこの日、200件超のメッセージが寄せられたという。
冒頭では「地道に働け」などのメッセージが紹介され、ニーニーの悪行三昧がダイジェストで紹介されたが、鈴木アナは言う。
「そんなニーニーのことはさておいて、竜星涼さんってとっても素敵な方なんですよー」
そんな狙い通りか、SNSには「ニーニーのときと全然違う。爽やかイケメン」「オンオフでこんなに違うとは」「小顔でスラッとしていてカッコいい」「役者さんってすごい」などの声が続出していた。
近年は『おちょやん』の父・テルヲをはじめ、いわゆる「クズ」キャラはいろいろ登場しているが、ニーニーの特異なところは「なぜこうなってしまったのか」と視聴者に深く考えさせること。
博多華丸・大吉の大吉さんはニーニーについて、なぜ苛立つのか考えてみたが、自分の中にもどこかこういうところが、あるいは周りにもここまでとは言わなくとも似たような人が......と必死に理解しようとしていた。
また、華丸さんは豚のアベベ・アババの一件（黙って潰してラフテーにした）からこうなったのではと推測してみせる。
実はこの両者の見解はこれまでもSNSでは散見されており、ニーニーに腹を立て、理解不能ながらも心配しつつ、「なんでこうなった？」を自分なりに考えてみる人が非常に多いのである。
これはある意味、毎日見る顔ゆえに、親戚や近所のおばちゃん気分でヒロインを見守る、昔からの朝ドラと視聴者の関係性そのものでもある。
思えば、「ダメな人」キャラは父親やおじさんが多い朝ドラにおいて、幼少時を知っていて、そこから「なんでこうなった？」を視聴者が考え、思い悩む作品は他にあまりない。
そして、「中の人」竜星涼がパリコレに出たカッコいい写真が紹介されたことで、視聴者の中にはニーニーの「成功し、ビッグになる道＝モデル」を期待する声も出ていた。
はたしてニーニーはどこへ向かうのか。
