【ちむどんどん】まさに理想! 若手を導き、手柄は譲る...山中崇さん演じる田良島の上司像

毎日の生活にドキドキやわくわく、そしてホロリなど様々な感情を届けてくれるNHK連続テレビ小説(通称朝ドラ)。毎日が発見ネットではエンタメライターの田幸和歌子さんに、楽しみ方や豆知識を語っていただく連載をお届けしています。今週は「田良島の理想の上司像」について。あなたはどのように観ましたか?

※本記事にはネタバレが含まれています。

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本土復帰前の沖縄本島・やんばる地域で生まれ育ったヒロインと家族の50年間の歩みを描くNHK連続テレビ小説『ちむどんどん』第8週。

制作統括の小林大児氏が「基本的に物語は暢子の冒険を追っていきますが~」(『MANTANWEB』4月10日)と語っているように、展開もBGMもRPG的な本作において、今週のクエストは「暢子が新聞社の坊やさん(雑用係)をして常識を獲得する」こと。

イタリアの地図もわからず、常連客を呆れさせた暢子は、例によってオーナー・房子(原田美枝子)にクビを宣告される。

しかし、ここから「ただし、条件が~」的言葉が続くのが本作の定番で、暢子は常連客・田良島(山中崇)の勤務する東洋新聞で働くことになるのだった。

仕事がコロコロ変わるのは一種の朝ドラあるあるだが、この唐突な展開は和彦(宮沢氷魚)と再会するためか...と思ったが、舞台が新聞社に移った今週は「見やすい」という声も多かった。

ずいぶんシュッとした和彦だと思った宮沢氷魚は、喋りながら顔を紅潮させ、はにかんだ笑顔を見せるところなど、子役の面影を感じさせる。

また、下宿まで暢子と一緒など、ご都合主義的な部分があるとはいえ、亡き父(戸次重幸)のライフワークとしていた「沖縄の歴史を伝え続ける」遺志を引き継いでいるらしいことが描かれている。

また、和彦の同僚記者で恋人の愛(飯豊まりえ)は嫌なライバルキャラかと思いきや、働く女性としての意識を強く持ち、意外にも暢子とすぐに打ち解ける。

おそらくそれは愛の人柄と暢子の無邪気さ、さらに愛が暢子を「木の実など食べて育った田舎者」としてライバル視していないからだろうが、ここからの暢子と愛の関係性の変化は要注目だ。

そして、今週最も注目を浴びたのは、田良島の理想の上司ぶり。

無知な暢子を馬鹿にすることもなければ、明るさ・素直さなどを「人柄は100点満点」と評価してくれ、和彦への指導ぶりも真っ当で、和彦の取材不足を指摘・原稿にダメ出しし、追加取材させ、何度も書き直させた上で赤字を入れまくって掲載された和彦の署名記事が評価されても、自分の手柄には一切しない。

「我が生涯最後の晩餐」取材で、イタリア北部・ミラノ出身のシェフ・タルデッリ(パンツェッタ・ジローラモ)がイタリア南部のピザを挙げたことに違和感も持たなかったこと、なぜそれを選んだかの理由は聞いても答えてくれず、約束の時間を過ぎていたからとそのまま終わらせた和彦がダメ出しされるのもわかる。

しかし、これは若手に限らず、どの分野の記者でも一度は経験したことのある話ではないか。

脱線ばかりで肝心の質問への答えはなかった、聞いてみてもたいした理由はなかった、「この本読んで書いといて」と言われなどは結構あることで、「追加取材なんて頼めない」ことも現実には多々ある。

ちなみに、「ただし条件が~」パターンは、和彦が追加取材を許されるターンでも発動。

それにより、朝まで愛と暢子と総動員でタルデッリが探していた記事を見つける。

ちなみにここで、暢子が記事を発見&歌子(上白石萌歌)が歌で励ます&良子(川口春奈)が出産という姉妹コラボが見られた。

新人歌手の最終オーディションで、体調不良のために倒れた歌子は気の毒だが、またしても善一さん(山路和弘)の厚意を裏切って就職を蹴ることにならなかったことには一安心。

また、届けたい相手のことを思いながら歌う歌子の脳内にニーニ―(竜星涼)が登場しないことには、思わずクスリとした視聴者もいただろう。

和彦の取材不足のくだりなど妙なリアリティも交えつつ、クエストも無事終え、暢子が店に戻れることが決まって、新聞社編は終了。

と思ったら、来週はおでん屋さんになるようで...。

まだまだどこに向かうのかわからない本作がちょっと「ちむがかい(心配・気がかり)」だ。

文/田幸和歌子
 

田幸和歌子(たこう・わかこ)
1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経て、フリーランスのライターに。ドラマコラムをweb媒体などで執筆するほか、週刊誌や月刊誌、夕刊紙などで医療、芸能、教育関係の取材や著名人インタビューなどを行う。Yahoo!のエンタメ公式コメンテーター。著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)など。

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