「ペットボトルのふたが開けにくい」は危険な兆候? 楽な予防法とは/もっともっとおもしろく生きようよ

定期誌『毎日が発見』で好評連載中の、医師・作家の鎌田實さん「もっともっとおもしろく生きようよ」。今回のテーマは「ズボラ筋トレで、全身の筋力低下を予防しよう」です。

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むせやすくなったら、口腔フレイル予防を始めよう

新型コロナウイルス対策で、みんながマスクをするようになりました。

そのおかげでインフルエンザや風邪は減りましたが、その一方で死亡者が増加した疾患があります。

何だと思いますか。

答えは「誤嚥性肺炎」。

この一年で4万2746人が誤嚥性肺炎で亡くなりました。

前年に比べて2361人も増えています。

政府もマスコミも、新型コロナウイルスへの注意喚起を行ってきましたが、コロナより死亡者数が多い誤嚥性肺炎についてはほとんど触れられていません。

では、なぜコロナ禍で誤嚥性肺炎が増えたのか。

原因はマスクです。

マスクをしていると、水を飲む回数が減って、口の中の粘稠度(粘り気の度合)が増します。

すると雑菌が増えやすくなり、むせたりしたときに雑菌が肺に入って誤嚥性肺炎の原因になります。

体力が低下した高齢者では、命を落とすことも多くあります。

こうした誤嚥性肺炎を防ぐには、歯磨きなどの口腔ケアとともに、むせなどを起こす「口腔フレイル」を予防することが大切です。

口のフレイル(虚弱)も、口やほっぺ、舌、のどを動かす筋肉の低下によって起こるので、普段から口の周りの筋肉を意識して使う必要があるのです。


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「おでこ体操」。手とおでこで押し合いをします。これが誤嚥性肺炎の予防になります。


「ペットボトルのふたが開けにくい」は、筋力低下のサイン?

握力の低下にも注意が必要です。

手や指の関節に痛みがないのに、ペットボトルのふたが開けにくくなった、ジャムのふたを開けるのに手こずるといった体験はありませんか。

握力は、全身の筋力を反映しているといわれ、握力が低下している人は、全身の筋力も低下している可能性があります。

全身の筋力の低下は、筋肉がやせてくるために、体重が減少します。

しかし、体重が減っていないから安心というわけではありません。

筋肉が減っても脂肪がついたために、体重が変わらない人がいます。

これは"隠れ肥満" "隠れサルコペニア"といった状態で、最悪のパターンです。

運動不足のうえに、甘いものを食べすぎたり、お酒の量が増えたりしてしまうことが原因と思われます。

運動機能の低下だけでなく、うつや認知機能も心配に

サルコペニア(加齢性筋肉減少症)になる割合は年齢とともに高くなります。

東京都健康長寿医療センターの研究では、75~79歳では男女とも2割を占めていますが、80歳以上になると男性は約3割、女性では約半数がサルコペニアに該当するそうです。

サルコペニアになると死亡リスクや要介護リスクがいずれも約2倍高まるといわれています。

サルコペニアの人は、(1)身体活動が少ない、(2)血液中のアルブミン濃度が低い、(3)女性ではうつ症状が多い、(4)認知機能が低下しやすい、といった特徴があります。

アルブミン濃度の低下は、たんぱく質が足りないために起こるので、しっかりとたんぱく質を摂取すること。

そして、同時に筋トレをすることで、90代になっても動ける体をつくり、うつや認知機能低下を予防していくことが大切です。

50代から予防が必要です。

「がんばらない」「ズボラ」は継続のコツ

ぼくは以前から「貯金より貯筋」を合言葉に、中高年の人たちに筋トレを呼びかけてきました。

佐賀県では「がんばらない健康長寿実践塾」で、健康づくりを指導してきました。

塾生は1000人を数えます。

その塾生たちには、スクワットやかかと落としをおすすめしてきましたが、「もっと違う筋トレもやってみたい」という意欲的な言葉が出るようになりました。

そこで、ぼくが毎日やっている簡単筋トレを一冊にまとめました。

『疲れない 太らない ボケない60代からの鎌田式ズボラ筋トレ』(エクスナレッジ)です。

口腔フレイルの予防になるパタカラ運動や、歩行のために大切な脚の筋肉や腹筋、背筋などを鍛えるワイドスクワット、ランジ、お腹ひっこめ歩き、認知機能を鍛えるコグニサイズなど、20種類の運動を写真と図解でわかりやすく紹介しています。

今回は、そのなかから2つ紹介しましょう。

〈ペットボトル握力強化運動〉

(1)水を入れた500mlのペットボトルを左右の手に一本ずつ持ちます。

両腕を胸の前にまっすぐに伸ばし、手のひらを上に向けます。

(2)腕を伸ばしたまま、ペットボトルを持った手首を巻き上げ、元に戻します。

これを10回繰り返します。

(3)腕を伸ばしたまま、手のひらを下に下げ(写真参照)、元に戻します。

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これも10回繰り返します。

コツは、ペットボトルはできるだけ指で持つようにすること。

できなければ手のひらで握ってもかまいません。

〈ダイアゴナル・エクササイズ〉

2点支えとも言います。

(1)四つん這いになり、両手、両足は肩幅くらいに開きます。

(2)右手は前にまっすぐ伸ばし、左足は後ろに伸ばし、左手と右ひざの2点で体重を支えます(写真参照)。

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(3)3秒静止し、元の姿勢に戻します。

これを3回行い、手足の左右を変えて、同じようにやりましょう。

これは、腕と脚の筋肉だけでなく、体幹の筋肉も鍛えられ、バランスもよくなります。

90歳になっても元気に歩くことができるような筋肉を作ります。

どの運動も、1セット3分以内でできます。

運動習慣のない人や、ズボラな人でもできる簡単さを目指しました。

ぼくは20種類から一日5種類選んで行っています。

5つやっても15分なので、あまり負担になりません。

1時間ごとに体を動かすと、気分転換にもなります。

『がんばらない』を書いたのは20年以上前ですが、「がんばらない」も「ズボラ」も、健康づくりを継続するための大事なテクニックです。

ぜひ、楽しみながら、挑戦してほしいものです。

【カマタのこのごろ】

毎週日曜は、「日曜はがんばらない」(文化放送、朝6時20分~)を10年続けています。

元NHKエグゼクティブアナウンサー村上信夫さんとその時々の話題を取り上げて、楽しく、まじめに語り合っています。

毎週水曜午後5時からは、佐賀のコミュニティFM「えびすFM」で、「しあわせの処方箋」という番組で健康づくりについてお話ししています。

放送エリアが限られますが、専用のスマホアプリから聞くことができます。

 

<教えてくれた人>
鎌田 實(かまた・みのる)さん

1948年生まれ。医師、作家、諏訪中央病院名誉院長。チェルノブイリ、イラクへの医療支援、東日本大震災被災地支援などに取り組んでいる。『だまされない』(KADOKAWA)など著書多数。

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『疲れない 太らない ボケない 60代からの鎌田式ズボラ筋トレ』

(鎌田 實/エクスナレッジ

全国の書店で販売中。1,540円(税込)

■鎌田實先生の書籍

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ミッドライフ・クライシス

(鎌田 實/青春新書インテリジェンス)

1,100円(税込)

■鎌田實先生の書籍

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『医師が考える 楽しく人生を送るための簡単料理 鎌田式 健康手抜きごはん』

(鎌田 實/集英社

1,430円(税込)

■鎌田實先生の書籍

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『鎌田實の人生図書館』

(鎌田 實/マガジンハウス)

1,400円+税

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『それでも、幸せになれる 「価値大転換時代」の乗りこえ方』

(鎌田 實/清流出版)

新型コロナウイルスにより、人々や社会の価値観は大転換する。災害も含め苦難の多い時代、それでも、私たちは幸せになれる。コロナに負けない生き方、新しい幸福の形とは? 第2波、第3波、そして災害への心の準備は万全ですか?

■「認知症予防」をもっと詳しく知りたい人は!

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「図解 鎌田實医師が実践している 認知症にならない29の習慣(朝日出版社)

今回、鎌田先生が紹介してくださった「認知症予防」が詳しく解説されている最新刊! 医学的に正しい認知症予防の方法が、豊富なビジュアルとともに紹介されています。
「速遅(はやおそ)歩き」「青魚、えごま油、高野豆腐を食べる」「新聞から4つの単語を選ぶ」など、無理なく日常生活で実践できる習慣がわかりやすく解説されています

■鎌田實先生の特集が一冊の電子書籍に!

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「鎌田實式 若返り健康法」(『毎日が発見』健康ブック Kindle版)

定期誌『毎日が発見』の大人気特集が電子ブックになって登場!! 
「ぼくは67歳で筋トレを始めてから、人生が変わった!」と話し、ご自身を「スクワット伝道師」という鎌田實先生(71歳)の健康法を大公開。「スクワット」や「かかと落とし」など無理なくできる「筋トレ」の方法をはじめ、ゆで卵やジュースなどの「若返りごはん」レシピ、「心の若返り方」や、若々しい先生の「着こなしの極意」まで、盛りだくさん。保存版の一冊です!!

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この記事は『毎日が発見』2022年2月号に掲載の情報です。

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