2021年の冬至は12月22日、2022年も12月22日が予想されます。冬至といえば、「ゆず湯に入ったり、カボチャを食べたりして、風邪をひかないようにする」といったイメージしか持っていなかった人もいるのではないでしょうか。今回紹介する、冬至のならわしや言い伝え、食文化、気象条件などを参考に、日本に伝わる文化について今一度考えてみませんか。
冬至は日照時間が1年で最も短い日
冬至は「二十四節気」のひとつにも数えられています。
「二十四節気」とは、太陰太陽暦が用いられていた時代に広く知られていた、季節の移り変わりを示すしるしです。
冬至は暦でおおよそ決まっていて、2021年は12月22日、翌2022年も12月22日が予想されます。
この日、北半球では1年間で太陽の位置が最も低くなるとともに、日の出から日没までの時間が1年間で最も短くなります。
なお、冬至を含む前後の期間で、北極圏全域では極夜(きょくや)が、南極圏全域では白夜が発生します。
1年で最も日照時間が短い「冬至」を過ぎると、昼間の長さは徐々に長くなります。
従って気温も上昇するかといえばそうではありません。
その証拠に、過去30年間の11月から3月の東京の平均気温は、1月は5.2℃、2月も5.7℃と、しばらくは寒い日々が続きます。
なぜなら1月から2月にかけてシベリアからくる寒気により、空気が温まらないからです。
冬至には「かぼちゃを食べる」風習のほかに、「ん」が2回つくものを食べると「運」が呼びこめるとされています。
冬至と夏至
夏至は1年で太陽が最も空高く昇り、最も昼の時間が長くなる日です。
昼の長さが最も短い"冬至"と比べると、東京近郊では5時間ほど昼間の長さが違います。
夏至の時期では、夏至から11日目にあたる7月2日前後の「半夏生」までが田植えの目安と言われているため、豊作にまつわる食材を食べる風習が各地で見られます。
関東で小麦餅が作られるほか、関西では、「タコの吸盤のようにしっかり稲が根を張るように」とタコを食べたり、田の神様への感謝を込めて「半夏生餅」が食されたりしています。
冬至では先述の通り、「ん」のつくものを食べて縁起をかついでいます。
冬至を境に運気UP!中国の験担ぎ「一陽来復」とは
中国で古くから伝わる言葉に「一陽来復(いちようらいふく)」があります。
冬至を境に、太陽が生まれ変わり陽気が高まるという意味を表しています。
中国の人々にとって、冬至は大事な節目の日なのです。
・冬至は太陽が生まれ変わる日
一陽来復の由来は、古代中国の書物「易経」にさかのぼります。
易経とは天文や地理、人事、物象などを、中国ならではの「陰陽変化」の考え方に基づいて記した書物のことです。
この易経には、「旧暦5月の夏至に陰が生じてから、冬至になり、7カ月経って、陽が戻る」と書かれています。
つまり、「夏至以降、陰が濃くなっていき、冬至で極限まで陰が極まって、陽に反転する兆しが見え始めた」という喜びを表しています。
・日本でも「一陽来復」のご利益が受けられる
一陽来復の考え方は、日本にも伝わっています。
江戸時代から庶民に崇敬されてきた東京・早稲田の穴八幡宮は、「一陽来復」のお守りが有名です。
「陰の終わりに運が開け、これまでの苦労が報われる」として金運上昇のご利益があります。
その隣の放生寺では「一陽来福」のお守りが授与されます。「一陽来復」の「復」を、「一陽来復」の結びの言葉「福聚海無量」の「福」とかけた、金運のお守りです。
冬至の風習で「ん」が2回つく食べ物を食べる理由は日本流のおまじない
冬至は「かぼちゃを食べる」イメージがありますが、元をたどれば「ん」が2回つく食材を食べる風習です。
具体的には饂飩(うんどん)、寒天(かんてん)、金柑(きんかん)、銀杏(ぎんなん)、南瓜(なんきん)、人参(にんじん)、蓮根(れんこん)で(諸説あり)、冬の季節らしく根菜が多いです。
これらは「冬至の七種(ななくさ)」とも「冬の七草」とも呼ばれ、幸運を呼ぶという言い伝えもあります。
にんじんには、皮膚や粘膜の健康維持をサポートしてくれるβ-カロテンが豊富です。
金柑は、のど飴などでお馴染みですが、昔から咳や喉の痛みなどの風邪予防に良いとされています。
海藻からできている寒天は、8割が食物繊維で、便通を整えます。
饂飩(うんどん)は、うどんのこと。
寒い冬に根菜を入れた温かいうどんは体も温まり、風邪予防に最適です。
ビタミンCが含まれているれんこんも風邪予防に適した食材です。
このように、「ん」が2回つく食材は不足しがちなミネラルが豊富で、栄養をつけて寒い冬を乗りきるための知恵ともいえるでしょう。
冬至にかぼちゃを食べる意味
南瓜(なんきん)とも呼ばれるかぼちゃは、「ん」が2回つく食材の中でも、特に冬至に食べる食材の代表格です。
もとは、戦国時代にポルトガル人がカンボジアから持ち込んだ「南蛮渡来の瓜」が、江戸時代中期に日本で根づいたと言われています。
ビタミンやカロテンが多く含まれていて、風邪予防の野菜としてもよく知られています。
かぼちゃの旬は夏ですが、長期間の保存がきくために冬でも食べられています。
特に昔は今のように食料が豊富ではなかったことから、夏に採れたかぼちゃを冬まで取っておき、食べていたと言われています。
しかし、日持ちがするにしても半年以上たてば栄養価も減ってしまうことから、「冬至かぼちゃに年をとらせるな」といういわれの通り、その年のうちに食べきるように、という教えもあったようです。
冬至の食べ物、小豆粥の別名「冬至粥」は邪気祓いに食べよう
冬至に小豆粥を食べる風習もよく知られています。
これは、中国などの東アジアの国で、「赤」が悪霊や不浄を祓う霊力を持つ色だと昔から伝えられているためです。
日本でも食べ物には霊力が宿っていると考えられていたため、赤い色の食物を食べ、その力を体内に取り込む意味があったようです。
1月15日の小正月も同様に、「小豆粥を食べて健康な1年を過ごすことができますように」との願いが込められています。
冬至の風習「ゆず湯」に入る理由
「ゆず湯」も冬至の風習のひとつです。
冬の寒いときに入ると体が一層温まるうえ、香りに癒やされることからも親しまれていますが、どのようないわれがあるのか詳しく紹介します。
・邪気払いと風邪予防
ゆず湯に入る習慣は江戸時代にさかのぼります。
「冬至」を「湯治」に、丈夫な体を意味する「融通が利く」を「柚子」にかけて、銭湯が最初に取り入れたと伝わっています。
実際には、主に2つの理由からゆず湯に入ることが広まったようです。
1つ目は、毎日入浴する習慣がなかった時代、風呂に入る行為自体が、体を清めるとともに邪気を払う効果があるとされてきました。
さらに、強い香りを放つゆずは邪気を寄せ付けないと考えられていました。
2つ目は、健康のためです。
ゆず湯に入ると、さら湯に比べて体表温度が高まり、風呂から出たあとも保温効果が長く持続するという実験結果もあるようです。
一説によると、ゆずの皮に含まれている香りの成分「リモネン」が、湯に溶け出して肌の毛細血管を刺激。
血行を促すので熱が逃げにくくなるそうです。
昔の人は、実質的な効能を経験的に身につけていたのかもしれませんね。
・ゆず風呂の入り方
ゆったりと温まることを楽しみましょう。
簡単なのは、通常200リットルのお湯にゆずを2個程度、丸ごと入れる方法です。
刺激成分が出にくいので、敏感肌の人におすすめです。
輪切にする場合は、200リットルのお湯に1個以下で十分です。
有効成分が出やすくなりますが刺激成分も多く出るため、敏感肌の人は注意が必要です。
そのほか、絞ったり皮だけをネットに入れて利用したりする方法もありますので、好みで試してみてください。
最初は、ゆずを浮かべた湯船に浸かって香りを楽しみ、その後は体を洗い、もう一度湯船に浸かって温まり、シャワーで軽く流します。
注意点としては、朝に入ってしまうと、その後の外出時に紫外線を浴びて肌を痛めてしまう恐れがありますので控えることです。
ほかの冬至の食べ物や風習
ここで、冬至にまつわるそのほかの代表的な料理や風習についても簡単に紹介します。
●こんにゃく
昔は、冬至にこんにゃくを食べ、その年にたまった害を体外へ出す「砂払い」と呼ばれる風習がありました。現在ではあまり行われなくなりましたが、こんにゃくに多く含まれる食物繊維は今でも健康に欠かせません。
●火焚き
社前で火を焚き、作物の実りに感謝し厄除けを祈願する行事です。冬の火祭として江戸時代に定着したようです。冬至の時期に行われることから、太陽の復活を願ったことに由来すると言われています。願いを書き入れた護摩木が焚き上げられ、炎と煙を見守ります。
●朔旦冬至
「さくたんとうじ」といって、陰暦11月1日が冬至と重なった日のことで吉日とされています。朔旦とはついたちの朝のことです。日本では聖武天皇の時代に朝廷の祝日として祝われ、「朔旦の旬」とよばれる宴会や恩赦が行われたと伝えられています。
海外の冬至の過ごし方は?
・【中国】スイーツを味わいながら家族団らんでお祝い
冬至は中国で「冬節、交冬」とも呼ばれています。
周の時代から「冬至大如年(冬至は春節のように大切な行事)」とされ、宮廷のみならず、民間でもとても重視されていました。
先祖の像、位牌などを取り出し、供物台を置き、香炉、お供えを並べて天と先祖をおまつりし、来年の幸運と家族円満を祈ります。
そして中国語で「湯円(湯団)」と言われる、白玉粉で作られたあん入りの団子も冬至の風物詩。
家族で味わいながら団らんのひと時を楽しみます。
ちなみに中国で「円」は「団円(団欒)」、「円満」を意味することから、冬至に湯円(湯団)を食べることを「冬至団」とも言います。
・【ヨーロッパ】古代からの風習が今にも残る!?
冬至とクリスマスには、実は関係があるという説があります。
かつてローマ帝国で行われていた冬至の祭りがローマ歴の12月25日であり、この日が太陽神の誕生を祝う日だったといいます。
後にキリスト教の教会がこの祭日を取り入れ、キリストの誕生の日として祝うようになったそうです。
また古代の北欧では、日中でも太陽が昇らない「極夜」の冬至の時期に、木の幹を燃やして太陽の復活を祝う儀式がありました。
後にこれが木の幹を模したチョコレートケーキ、ブッシュ・ド・ノエルになったという説もあり、古代から続く冬至にまつわる風習が、今も形を変えて残っていると言えそうです。
冬至は縁起のいい日だった!新たな気持ちで新年を迎えよう
冬至の歴史は古代中国やローマ帝国の時代にまで遡るほど、世界中で重要な節目とされてきました。
主に北半球では、短い日照時間の中で健やかに、そして家族が穏やかに過ごす知恵が結びついて様々な風習が生まれたのです。
このように地域によって違いはあるものの、昔の人は自然の営みをうまく自分たちの生活に取り入れ、厳しい冬を乗り越えてきました。
地球環境が変わりつつある今、季節の移ろいが希薄になっていますが、改めて冬至の風習に思いをはせながら新年を迎えたいものです。