"伝説の家政婦"と呼ばれ、多方面で活躍するタサン志麻さん。築60年の古民家での暮らしをつづった著書『ちょっとフレンチなおうち仕事』(ワニブックス)には、フランスのエッセンスを取り入れた家事や育児を楽しむ方法がつまっています。今回はその中から、「忙しい日こそフランス料理は便利」という料理を楽にするヒントとお家で作れるフレンチレシピを連載形式でお届けします。
【志麻さんのフレンチの格言】
煮込みは、こびりついたうまみを無駄にしないことと、時間でおいしくなる
肉を焼き付けてまわりをしっかり焼き固めることで肉汁を逃さないというコツを、鶏肉ときのこソテーでご紹介しました。
>「フレンチは炒めない」伝説の家政婦・志麻さんのレシピ「鶏ときのこのソテー」
煮込みのときも同じように肉はしっかり焼き付けますが、どうしても、フライパンにこびりつきが残ります。
これはうまみの素なので、洗い流さないようにしてください。
こびりつきの残ったフライパンにワインやビール、水など、煮込みに使う水分を加えて、そのうまみを溶け込ませ、その水分もろとも煮込みのソースに入れます。
このひと手間で、煮込みのうまみがぐっとアップし、おいしくなります。
煮込みをおいしく作るもう一つのコツは、時間です。
しっかり焼き付けてうまみを閉じ込めたら、あとはひたすら煮る。
日本の家庭料理では、さっと短時間ででき上がるものを手軽なメニューとする傾向があって、長時間煮込む料理は避けられがちです。
でも、煮込み料理は、たしかに時間はかかりますが、自分が手を動かす工程は少なく、煮ている間にほかのことがいろいろできるので、ラクな料理だと思います。
時間が料理をおいしくしてくれるのを待つ間、副菜も作れますし、洗濯物をたたんだり、子どもたちと遊んだりもできます。
工程自体は少ないですから、フレンチの煮込み、ぜひ作ってほしいなと思います。
煮返すことでおいしくなる料理なので、一度に多めに作れば、さらにラクです。
志麻さんのフランス料理レシピ
「豚バラ肉のビール煮」
肉のうまさ、玉ねぎの甘み、ビールの苦味が三位一体となった濃厚煮込み。
材料(2〜3人分)
豚バラ肉(かたまり・骨つき)...2本(約500g)
(なければ豚スペアリブ、または豚バラのかたまり肉)
ビール...500ml
玉ねぎ...1個
コンソメ(キューブ)...1個
はちみつ...小さじ1
サラダ油...適量
塩、こしょう...各適量
タイム、ローリエ(あれば)...各適量
※今回はさつまいものピュレを添えています。
作り方
① 玉ねぎは薄切りにする。
鍋にサラダ油を入れて火にかけ、玉ねぎを加える。
塩をふり、全体がしんなりし、ほんのり色づくまでしっかりめ(※)に焼き炒める。
(※)玉ねぎをしっかり焼き炒めて(こまめに動かす必要はない)、甘みを引き出しておくとビールの苦味とのバランスがよくなる。それでも苦いと感じたら最後にマスタードを加えると味に厚みが出て緩和される。
② 豚肉は全体に塩、こしょうをまぶす。
フライパンにサラダ油を中〜強火で熱し、豚肉の表面全体を焼き固める。
①の鍋に加え、脂はペーパータオルで取り除く。
ビールを50mlほどフライパンに入れて煮立たせ、フライパンにこびりついたうまみをこそげとり、鍋にうつす。
鍋に残りのビールと、ひたひたになるくらいの水を加え、煮立たせる。
あくを取り除き、コンソメ、はちみつ、タイム、ローリエを加えて20~30分、肉が柔らかくなるまで、ぐつぐつした状態になるくらいの火加減で煮る。
<ポイント>
フライパンにこびりついた「うまみの素」にビールを加え、煮溶かしてから肉の鍋に加えます。
【まとめ読み】『ちょっとフレンチなおうち仕事』リストはこちら!
料理、子育て、家仕事など、フランス流を取り入れた著者のライフスタイルが4章にわたって紹介されています