世界中から愛され続ける女優、オードリー・ヘップバーン。実は、妖精ともうたわれるその容貌に、コンプレックスを感じていたそうです。銀幕の向こう側で抱えていた葛藤、仕事と家庭の両立、死について、など彼女の言葉がまとめられた『オードリー・ヘップバーンの言葉』(山口路子/大和書房)から、現代の女性たちが共感できるオードリーの名言を連載形式でお届けします。
コンプレックスだらけの女優
私は自分を美人だと思ったことがありません。
世界中の女性が憧れている女性の、これはおそらく、本音です。
息子のショーンも「母は、自分のことを美人だとは思っていなかった」と語っていて、その発言の様子から、母オードリーが常日頃からそういったことを口にしていたことが想像できます。
痩せすぎている。胸がない。背が高すぎる。足が大きい。歯並びが悪い。顔が四角い。鼻孔が大きい......。
コンプレックスがたくさんあったのです。とくに胸がないことについては、デビューしたてのころ、胸に詰め物をして写真を撮るという屈辱を味わったこともあるくらい。
ところがオードリーがスターとなると、世界の美の基準が大きく変化します。それまでは、美しい女性といえば豊満なバストとヒップが絶対条件だったのに、オードリーによって、それ以外の美が存在することが証明されたのです。
それほどまでに大きなことをしてのけたというのに、自分のことを美人だと思わないと本気で言っていたというのですから、ここに、多くの人が語るオードリーの謙虚さがあり、事実、この謙虚さが、その美しさをさらに際立たせていたのでしょう。
小さな目と四角い顔
自分自身に対して100パーセント率直になって、欠点から目をそらさずに正面から向かい合い、欠点以外のものに磨きをかけるのです。
この言葉をメイクに活かすとすれば、オードリーの場合はとにかく鼻の欠点と四角い顔を目立たせないために、目のメイクが重要となりました。「世界一美しい目のもち主」だと賞賛されましたが、そのたびに彼女は言っていました。「いいえ、世界一美しい目のメイクです」。
そしてメイク担当者の技術とセンスを褒めました。仲良くなった女性には、メイクを落としたところを見せて、「ね、ほら、私、目がほんとは小さいの、目がどこにあるのかわからないくらい!」と言っておどけてみせました。
世界が賞賛する自分の魅力的な目はアイメイクによるものなのだから、「それは違う、メイクのおかげなの」ということを告白しなければ、なにか世界を騙しているようで落ち着かなかったのでしょう。
オードリーが容姿にコンプレックスをもっていただなんて嘘のようだけれど、コンプレックスというのは周囲が決めるものではなく、その人自身が「感じる」もの。
だから、彼女はたしかにコンプレックスをもっていた。重要なのはその先で、欠点以外のところに徹底的に磨きをかけることによって、世界中の女性たちの「美のモデル」となったという事実です。
美・愛・仕事・人生・使命の5つをテーマに、大女優オードリー・ヘップバーンが残した人生のヒントがつづられています