日本人は立ち直るのが早い?感情コントロールの決め手は「公私混同しない」

「食後にお皿をまとめる」「落し物を自分の物にしない」「見えないところで努力する」――。日本で長らく育ってきた方であればきっと普通のことだと感じるでしょう。でも、外国人からしてみると、実は想像できないほど不思議な行動だそうです。「幸せに生きるコツは日本で見つけた」という、来日30年を超えるアメリカ人女性が気付いたのは、この行動や考え方は世界に誇れるということ。外国人から見た、「日本人の本当のすごさ」についてお届けします。

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なぜ、日本人は立ち直るのが早いのか?

私が「公私混同」という言葉をはじめて知ったのは、スペースデザインで働くようになってからのことです。入社してすぐに、「ROD研修」という研修を受けました。

この研修では、50の項目で自分の行動や思考について自己採点する一方、同僚と上司にも自分のことを採点してもらいます。自己評価と他者評価では当然ズレが生じますが、その違いを通して自己理解を深め、成長につなげようという教育プログラムです。

その50の項目のなかに「公私混同することなく、仕事を遂行しているか」というものがあり、一瞬、意味がわかりませんでした。

アメリカには「公私混同」という発想がありません。パブリックとプライベートは別のものだということはわかりますが、仕事ができるかどうかの基準として、「公私をきちんと分けているか」が条件になるなど、考えたこともなかったのです。

でも、その項目を見て、「I've got it! 」。とても合点がいきました。ああ、だから日本での仕事はとてもスムーズに運ぶのだなと納得したものです。

私たちアメリカ人は、何か心配ごとがあると、すぐ顔に出てしまいます。そして、そのことにとらわれて、仕事に手がつかなくなってしまうのです。だから、日本人にとって私はとてもわかりやすい人間のようです。「ルーシーは何でも顔に出るから、いま、楽しいのか、怒っているのか、沈んでいるのか、すぐわかるよ」と笑われます。

感情がすぐに出るのは、何もアメリカ人にかぎったことではありません。同じアジアでも、韓国の人は感情をあらわにすることが多いですし、中国の人は意外とロマンチックで、熱く語ったり涙もろかったりします。

また、アメリカでは、会議がまだ進行中なのに、「今日は遠方に住む孫たちに会いにいかないといけないので、このへんで失礼します」などと平気で退席する人がいます。

アメリカはこのスタイルでうまくいっているのでいいのですが、私は日本のやり方を見ていて、公私をきちんと分けたほうが、じつは両方ともうまくいくということに気づいたのです。

日本人は身内に不幸があったり重い病気をしたり、プライベートでものすごく大変なことが起きたりしていても、第三者からすると、普通に仕事をこなしているように見えます。

その人に何が起きているのか、表情やしぐさから読み取ることはむずかしく、しばらくしてから「ああ、そうだったのか!」とわかることが多いのです。

私の部下がいつもどおりに働いて、いつもどおりに仕事を終えて帰っていったのですが、後になって、じつはその日お母さんが入院されたことを知る、ということがありました。

ただ、プライベートのこととはいえ、部下のつらい状況は知っておかなければなりません。このことがきっかけで、新しい日本人のスタッフが配属されたときに、私はいつもある「警告」をしています。

「私はKY人間で、日本人ほど空気が読めません。だから、何かつらいことや困ったことがあれば、直接言ってくださいね!」と。

しかし、日本人は、「仕事の場では公私の混同をしない」というルールを無意識に自分に課しているため、彼らのほうから、プライベートで困っていることを打ち明けられることはほとんどありません。

でも、この環境で育った日本人どうしは、黙っていても、お互いに察し合う力がついています。何も言わなくても、「あの人は何かあったな」と察知し、「顔色が悪いみたいだけど、大丈夫?」などと声をかけているのです。

いまならわかるのですが、仕事に没頭すると、つらい気持ちをしばらく忘れられますし、仕事もはかどります。おまけに、気分転換になって、そのことばかり考えつづけるよりも、よほど早く立ち直ることができます。恋人と別れてつらいときも、日本では、「仕事に集中すれば忘れられるよ」などと言いますね。

日本人はなんて賢い対処法を実践しているのだろう、と目からウロコが落ちる思いでした。非常に冷静に、淡々としていて、まさかそんな大変なことを抱えているようには見えません。感情に溺れることなく、仕事に集中できる日本人はすごい!と感心しています。

日本人は無意識にしていることなのかもしれませんが、私にとって「公私混同しない」というやり方は画期的な発見だったのです。

また、公私混同しないことで、ネガティブなことからいち早く抜け出せる日本人のすごさを目の当たりにしたのは、東日本大震災の直後のことです。

被災した人たちが毅然としてインタビューに応えている映像を見て、多くの外国人は驚きました。

家も仕事も失い、家族を亡くし、究極の大難に直面しているのに、なぜ日本人はこんなに早く立ち直れるのか......。なかには「日本人は感情がなさすぎる」というネガティブな報道をした外国メディアもありました。

でも、私は日本に長く暮らし、彼らは決して感情がないわけではないことを知っています。日本人は公私混同しないことを美徳と考えているから、自分がどんなにつらくとも、それを表に出さないようにすることができるのです。

そうすることで、同じ状況にある地域の人たちが1日も早く復興の道を歩み出せると考えているのです。

これも、つらいことがあったときは仕事に集中したほうがいい、という考え方と同じです。日本人のこうした「公私混同しない」スタイルを広めれば、会社としても全体的に効率が上がると思います。

日本人は、外国人をマネジメントするときは、このあたりのルールにうんとこだわったほうがいいでしょう。何より、それが本人のためになるからです。

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hokorinisitai_syoei.jpg39の「日本人の特長」がつづられた本書は、読むだけで何だかうれしくなります

 

ルース・マリー・ジャーマン

米国ノースカロライナ州生まれ、ハワイ州育ち。1988年にボストンのタフツ大学国際関係学部から(株)リクルートに入社し、以来30年間日本に滞在。2012年4月に(株)ジャーマン・インターナショナルを起業。日本企業と外国人の潜在顧客をつなげるため、経営戦略と営業・広告活動をサポートしている。2018年に日本企業のグローバル化トレーニングを行う「Train to Globalize」事業も立ち上げる。NHK教育テレビ「しごとの基礎英語」にてビジネスアドバイザーとして出演するなど、メディアでも活動中。

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『日本人がいつまでも誇りにしたい39のこと』

(ルース・マリー・ジャーマン/あさ出版)

見えないところで努力する日本人は、世界からかっこいいと思われている!?来日30年を超えるアメリカ人著者が、日本で見つけた「39の幸せに生きるコツ」。精神性や美意識、ビジネス論など、5つの観点から日本人をながめてみると、世界に誇れる気質がたくさん見えてくる。著者の体験談を交えて語られるエピソードは、まるで大好きな日本への愛情をつづったラブレター。きっと、日本人に生まれて良かったと感じられます!

※この記事は『日本人がいつまでも誇りにしたい39のこと』(ルース・マリー・ジャーマン/あさ出版)からの抜粋です。
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