職場でバリバリ頑張っていた若手社員に、突然「来月で辞めます」と言われた――。そんな話を耳にしたことはないでしょうか? 若者の働き方研究の第一人者・平賀充記さんによると、今の若者は「すぐ辞める」のではなく「突然辞める」。そこにはオトナと若者の価値観の違い、世代間ギャップがあるといいます。そこで、平賀さんの著書から「若者の価値感がわかる20のキーワード」や「オトナと若者の意識のギャップ例」を5回にわたってご紹介します。
※この記事は「なぜ最近の若者は突然辞めるのか」(平賀充記/アスコム)からの抜粋です。
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関わる・近づくコミュニケーション
まずは若者にちょっと近づくための、日々のベーシックなコミュニケーションです。ポイントは、コミュニケーションの「質より量」を意識すること。
最近の若者は雑談が苦手だとか、興味のない話をしたがらないなどといわれます。みなさんの職場にも、黙々とデスクに向かっていて「話しかけないでオーラ」が出まくっている若者がいるかもしれません。
でも、だからといってオトナが距離をとってしまうと、結局、若者が理解できずに気をつかう毎日が続いてしまいます。それに、若者は人と関わることが嫌いなわけではありません。面倒なタテの人間関係が苦手なだけで、「居心地のいいフラットな人間関係」自体は強く求めています。
先日、とあるバーで一緒になった若者(男性・26歳)は、大学院卒の新卒1年目。実は先輩や上司からの飲みの誘いを待っているのだと話してくれました。彼なりに職場に溶け込みたい、また仕事について職場では聞きにくいことを教えてもらいたい、と極めて真面目です。
しかし彼の職場では「アルハラ(アルコールハラスメント)」を気にする空気が蔓延しているらしく「まったく誘ってもらえないんです」と嘆いていました。こんな若者もいるんですよね。やはり、ここはオトナから積極的に関わっていくことが必要なようです。
働く人のメンタリティは、「マズローの欲求5段階説」を使ってよく説明されます。ご存知の通り、「マズローの欲求5段階説」は(1)生理欲求、(2)安全欲求、(3)社会欲求、(4)承認欲求、(5)自己実現欲求の順に、段々と欲が満たされることで高次の欲求が湧いてくるという説です。
しかし現代の日本の若者には、この5段階が当てはまりません。生まれたときからモノがあふれ、日本という安全な国で育っているので、(1)生理欲求、(2)安全欲求は基本的に満たされています。スタートラインが第3段階なのです。つまり(3)社会欲求=どこかに所属していたい欲求と、(4)承認欲求=価値を認められたい欲求が、異常に肥大しているのです。これがSNS村社会と強くリンクする部分です。
たくさんの人とつながることができて、「いいね!」がもらえるSNSは、社会欲求と承認欲求を満たす格好のツールでした。だからこそ爆発的に普及したといえますが、その一方で、より一層、若者の社会欲求や承認欲求を増幅させていったのです。
そして、これは最低限の生活をする場所がほしいという物理的な欲求ではなく、「人間関係の中に確かに自分がいる」こと、そして「自分の価値や必要性が認められている」ことを望んでいる精神的な欲求です。ですから、単に雇用関係が結ばれているという安心感だけではダメで、「みんなが自分の存在を認めて必要としてくれている」と感じられなければならないのです。今、職場のマネジメント層に求められているのは、若者の「居場所を作り出すこと」と言っても過言ではありません。
なんて面倒な......と思うかもしれませんが、実は今までやってこなかっただけで、簡単な声かけひとつでも彼らに居場所を感じてもらうことはできます。毎日できることで、ちょっと近づくことから始めてみてはどうでしょうか。
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