【虎に翼】涼子さま(桜井ユキ)との再会も...同時に複数の「拠り所問題」を描き切った脚本の凄さ

【前回】亡き夫・優三(仲野太賀)の存在感...寅子(伊藤沙莉)と娘の「溝」を埋める鍵は大人の「ダメな部分」?

毎日の生活にドキドキやわくわく、そしてホロリなど様々な感情を届けてくれるNHK連続テレビ小説(通称朝ドラ)。毎日が発見ネットではエンタメライターの田幸和歌子さんに、楽しみ方や豆知識を語っていただく連載をお届けしています。今週は「拠り所問題」について。あなたはどのように観ましたか?

※本記事にはネタバレが含まれています。

【虎に翼】涼子さま(桜井ユキ)との再会も...同時に複数の「拠り所問題」を描き切った脚本の凄さ pixta_78751524_M.jpg

NHK連続テレビ小説『虎に翼』の第17週では、涼子(桜井ユキ)と玉(羽瀬川なぎ)や稲(田中真弓)ら懐かしい面々との再会、娘・優未(竹澤咲子)の学校事情、寅子(伊藤沙莉)が向き合う非行少年少女の暴行事件などが描かれた。

航一(岡田将生)の行きつけとして案内されたのは、涼子と玉が経営する「喫茶ライトハウス」。これは、よね(土居志央梨)の働いていたカフェー「燈台」を元にした店名だ。かつて法廷劇を妨害した男子学生に正面から立ち向かったよねが「怒りを飲み込まず、真っすぐに、真っ先に殿方の......股間を蹴り上げた!」以降、よねは涼子の目指す先・燈台となっていて、互いに戦争を経て生死がわからなかった中、新潟に来てもその燈台を受け継いでいることがわかる。

しかも、この店の「とっておきの料理」として、女子部のみんなで作った「毒まんじゅう」が登場。涼子と玉はこの場所で、昼は喫茶店を、夜は高校生のための塾を開いていた。かつて寅子らと交流し、傍らで洋書「アンクル・トムの小屋」の原書を必死に読んでいた玉が、高校生に英語を教えているとは。時を経ても生き続けているもの、積み上げられてきたものが見える胸アツの展開だ。

しかし、ここに至るまでに涼子と玉に起こったことが徐々に見えてくる。玉は空襲によるケガで車いす生活を余儀なくされる。一方、戦後の法改正で華族の身分を失った涼子は、莫大な借金を清算するために屋敷を手放し、夫と離婚。玉と2人、新潟で新しい人生を始めたのだった。

玉は涼子の人生を自分が奪ってしまったと思っており、寅子に障がいのある人が治療や職業訓練をしながら生活支援を受ける施設に入れるよう力添えして欲しいと懇願する。しかし、悩んだ末、寅子はその答えを手放し、当事者2人――玉と涼子に託す。そこで初めて玉は自分が涼子を縛り付けているという苦悩を語り、涼子は自分が一人になるのが怖くて、いつまでも玉を手元に置いてしまった後ろめたさを告白する。

相談を受けていた玉の許可なく、いきなり涼子の前でぶちまける寅子のやり方は少々乱暴だが、二人をよく知るからこそ自分が介入すべきではないという判断だったのだろうし、玉に請われて寅子が同席したのは、涼子と玉の共依存関係において必要なことだったのだろう。結果的に「敬語」のない英語で、対等な立場の「親友」として共に生きていくことを約束し合う。夫婦でもなく家族でもなく、誰と生きても良いのだという「個人としての尊重」がここでもまた描かれる。

一方、「友達」が必ず必要なわけではないことも同時に描いていくのが凄い。

学校に友達がいないという優未の発言が気になった寅子は、友達を作ることを勧めてしまう。自己肯定感が強く、物怖じせずどこでも誰を相手にしても自分の意見を堂々と言えた寅子は、友達も多く、いつでも場の中心にいた。そんな寅子にとって、友達がいない子は理解できないうえに、寂しい子に見えるのだろう。自分は勉強ができたから、成績の悪い優未の気持ちがわからなかったように、当たり前に持っている側の想像力のなさ、親としての未熟さが明確に見える。

しかし、あるとき寅子は、優未が同級生たちと下校する場面に遭遇する。そこで、同級生たちが担任に頼まれて優未と一緒にいた事情を察し、礼と共にお互いに無理しても誰も幸せじゃないと冷静に言う優未を見て、考えを変える。帰宅後、気まずい空気を変えるために、互いに「変顔」で迎える寅子と優未。自分と違う考えがあるのだということを寅子が学び、優未の考えを尊重できるようになったのは、人と溝を作る航一と接している影響もあったろう。

今週はさらに、障がいの問題や、友達の有無と共に、高齢者の孤独も描いていた。忙しい寅子を助けるため、花江(森田望智)が稲を送り込むが、寅子はそんな稲に家のことを曜日限定で頼み、かわりに涼子と玉の店を紹介する。これは任期があり、やがては去る自分と優未が稲にとっての唯一の拠り所にならないようにするためだった。

この「拠り所を複数持つこと」「拠り所は友達じゃなくても良いこと」は、子どものいじめの問題や若者の孤独、高齢者の孤独などに通じるメッセージだろう。

一方、今週は寅子に理解できない人達が登場。暴行事件を起こしている非行少年少女は、元木(山時聡真)など、貧困などやむにやむにやまれぬ事情を持つわけではなく、恵まれた家庭の優秀な子ばかり。しかも、その首謀者として浮かび上がるのが、優秀な美佐江(片岡凛)で......。航一の過去や、少年少女の問題など、次週はなかなか重い展開になりそうだ。

文/田幸和歌子
 

田幸和歌子(たこう・わかこ)
1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経て、フリーランスのライターに。ドラマコラムをweb媒体などで執筆するほか、週刊誌や月刊誌、夕刊紙などで医療、芸能、教育関係の取材や著名人インタビューなどを行う。Yahoo!のエンタメ公式コメンテーター。著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)など。

PAGE TOP