ダイエット失敗の理由はどこにある? ファスティング系・糖質制限系・運動系のダイエット法をズバリ検証

ファスティング系ダイエット――ファスティング、プチ断食など

一定の期間、固形物を摂らないファスティングは、やせるために行なうものではありません。本来の目的は、内臓を休ませて機能を回復させることにあります。ですから、もともと体脂肪減少が目的ではないということを、まず押さえておくべきです。

もちろん、食べなければやせます。断食道場などでは、酵素ドリンクなどを摂りながら相当な期間にわたって食事を断って一気に体重を落とし、その後、回復食を摂りながらゆるやかに元の食事に戻っていくといった手法をとっているところもあります。

もっとも、かなり急激に体重が減少するので、体に相当の無理がかかり、ファスティング後に大きくリバウンドしてしまうケースが少なくありません。また、食事をしていないと、脂肪よりも先に筋肉が落ちてしまうため、動くのが億劫になったり身体機能が低下したりするケースも目立ちます。

私は、基本的に「極端に食べないダイエットはすべてNG」だと考えています。やせるためにがむしゃらに断食なんかしたら、待ち受けている事態は、リバウンドして以前にも増して太ってしまうか、心や体の健康を壊してダウンしてしまうかのどちらかです。たとえ内臓を休ませて健康を取り戻すためにファスティングをするのだとしても、実施する場合は、管理者の下でしっかりと栄養コントロールをしながら行なうようにすべきでしょう。

糖質制限系ダイエット――炭水化物抜きダイエット、糖質ゼロダイエット、ケトジェニックダイエットなど

次は、糖質制限系です。ごはん、パン、麺類、お菓子、果物、ジュースなどの糖質の摂取を控えることによって得られるメリットはいろいろあります。血糖値の上昇を抑えることにもつながりますし、糖尿病や脂肪肝を予防することにもつながります。ただ、ダイエットへの関心が高い方々にとっていちばんの魅力は、やはり「糖質摂取を控えれば、確実にやせる」という点でしょう。

普段から糖質を摂りすぎていると、余分な糖が脂肪に変換されてどんどん貯蔵に回されていってしまいます。一方、糖質摂取を控えていると「糖質が余る→脂肪へ変換→脂肪蓄積」の流れが止まり、その代わりに、日々の運動や活動に糖質や脂肪などの体内ストックエネルギーが使われるようになっていくのです。これにより、やせていく流れができるわけですね。

また、糖質を極端に少なくした生活を続けていると、やがて体を動かすエネルギー源がブドウ糖から脂肪へと移行するようになっていきます。つまり、体が脂肪を使って稼働することに適応して、体脂肪が効率よく消費されるようになっていくのです。これがケトジェニックダイエットと呼ばれているメソッドです。ケトジェニックでは、糖質の摂取を1日50gにまで減らし、その代わり、糖質以外の脂肪やたんぱく質はどんどん摂っていいということになっています。

もっとも、私は、糖質摂取を完全にゼロにしてしまうのは避けるべきだと思います。どのダイエットにも共通して言えることですが、何かをゼロにするような極端な方向に走ってしまうと、ろくなことがありません。糖質ゼロも炭水化物抜きもかなりの我慢や忍耐を必要とするので、ストレス負担も多く、「あまりにつらすぎて到底長続きしない」という人が多いようです。

それに、糖質を極端に減らしていると、筋肉がたいへん落ちやすくなってしまうというデメリットもあります。とくに、瞬間的ハイパワーが出しにくい体になってしまう傾向が高く、もしこうしたダイエットを行なうのであれば、筋トレを並行して行なって筋肉量をキープしていくことが必須でしょう。

そもそも糖質は私たちの脳と体を動かしているエネルギーであり、古くから生命活動の原動力として人類を支えてきました。これをゼロにしてしまうという行為が、何年何十年も経ってから私たちの体にどのような影響を与えるのかは、まだ十分検証されているわけではありません。また、糖質摂取をゼロにしてしまうことが、私たちの子どもや孫たちにどのような影響を与えるのかも分かってはいません。

こうした点からも、私は、「完全糖質ゼロ」にしてしまうのには基本的に反対です。体脂肪を減らす効果は高いにしても、やはり「糖質摂取を少し控えめにする」くらいのレベルで留めておくべきでしょう。

それに、周りを見渡してみれば、ごはんやパン、お菓子などの糖質を普通に摂っていてもやせている人はたくさんいます。糖質にいちいち目を吊り上げるよりも、そういう人たちの生活習慣を見習いながらうまく糖質とつき合っていくくらいのほうが、ダイエットとしては理に適っているのではないでしょうか。

スポーツジム・フィットネスクラブ

「私、週に2回、フィットネスクラブに通って体を動かしてるんです。筋トレをやって、エアロビクスの教室にも参加して......でも、全然やせないんですよ」

近年、こういう訴えをする人がたいへん増えています。みなさんの中にも「私も同じだ......がんばってジム通いをしているのに、何でやせないんだろう」と不思議に思っている方がいらっしゃるかもしれません。

やせない理由は、「期待するよりもカロリー消費量が少ないから」です。週に1、2回ジムに通って汗をかく程度では、消費されるカロリーはたかが知れています。ジムでエアロビクスを1時間やったとして、消費されるカロリーはせいぜい500kcalくらい。週2回なら1000kcalです。

でも、1週間は7日ですから7で割ったら1日あたり140kcalほどになってしまいますよね。缶ビールを1本飲んだら帳消しです。もし、この方がデスクワークで、ジム通い以外に1週間ほとんど動いていないような生活を送っているとしたら、このカロリー消費量では全然足りません。カロリー収支をマイナスにするには程遠い状況となってしまうのです。おそらく、このままでは何年ジム通いを続けてもやせられないでしょう。

ジムに通って汗を流していると、いわゆる「やってる感」を得ることができますし、「ジムに通ってる私→エライ」というある種の自己陶酔感も得ることができます。でも、そういう肯定感がものの見事に打ち砕かれてしまうくらいに、やせる効果は小さいのです。

もちろん週2回でも体を動かしていればそれなりに体力がつくので、まったく無駄なことだとは言いません。ただ、ことダイエットが目的なのであれば、「週末のジム通い」や「週1~2回のジム通い」に過大な期待をかけるのは控えておいたほうがいいでしょう。

 

清水忍

トレーニングジムIPFヘッドトレーナー。アメリカスポーツ医学会認定運動生理学士(ACSM/EP)、健康運動指導士。一九六七年、群馬県生まれ。大手フィットネスクラブ勤務後、スポーツトレーナー養成学校講師を経て独立。「なぜ」を追求するロジカルな指導で、メジャーリーガー・菊池雄星投手らプロアスリートのパーソナルトレーナーとして絶大な人気を誇る。ダイエット指導歴三十五年以上。NESTA JAPANエリアマネージャー、菊池投手考案の野球複合型施設「King of the Hill」アドバイザー。「Tarzan」監修など多くのメディアで活躍中。『ロジカル筋トレ』『超宅トレ』など著書・監修書多数。

※本記事は清水忍著の書籍『ロジカルダイエット 3か月で「勝手に痩せる体」になる』(幻冬舎)から一部抜粋・編集しました。
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