柴門ふみさん「80代も20代も恋する気持ちは同じ。恋っていくつになっても訪れるもの」三世代の女性の"恋"を描く《インタビュー》

これからは、年齢を超えた個性の時代になっていく

──紙&WEBマガジン『毎日が発見』では、『老漫画家と老犬の毎日』というコミックエッセイを連載されています。こちらは、ストーリーマンガとは違い、ほぼ実体験ですよね。

柴門ふみさん「80代も20代も恋する気持ちは同じ。恋っていくつになっても訪れるもの」三世代の女性の"恋"を描く《インタビュー》 紙&WEBマガジン『毎日が発見』7月号より
紙&WEBマガジン『毎日が発見』7月号より

柴門:そうですね。私自身、年齢を重ねるにつれて集中力もなくなってきましたし、目も見えづらくなってきて。毎年眼鏡を替えていますが、どんどん視力が弱まっています。このマンガは、「そんな自分の老いを笑いとばせば、もっと楽しく過ごせるんじゃない?」というスタンスです。

──メインとなる読者は、50~70代の女性です。でも、先ほど恋する80代女性のお話があったように、年齢は関係ないようにも思います。それこそ年齢を重ねても推し活を愉しんでいる方もいますし、恋をする方も。こうした現状について、どうお考えでしょう。

柴門:体力は衰えても、精神って意外と老いないような気がします。70歳になったから、70代の精神になるかというとそうでもない。意外と、小学5年生くらいでもう確固たるものが完成するのかもしれません。数年前、マンガに小学6年生の子を登場させようと思い、近所に住んでいる小6女子に話を聞いたのですが、喜怒哀楽も考え方もすでに完成されていましたね。

でも、経験値はまだ追いついていなくて。その子たちが「クラスの不良連中とは口を利きたくない」と言うので、「小学6年生の不良って何をするの?」と聞いたら、「学校にお菓子を持ってくるの」って(笑)。精神はすでに完成しているけれど、そういうところはかわいいですよね。

80代で韓流スターに熱を上げている人も、気持ちは若い人と同じでしょう? 韓国まで追っかけることはなくても、若い人たちと同じ気持ちでキャーキャー言ってるんじゃないでしょうか。

──コンサートなどに足を運ぶご年配の女性を見ると、少女のように瞳をキラキラさせていますよね。

柴門:自分の姿は見えませんからね(笑)。自分の姿が鏡に映っていたら、はしゃぐのを控えるかもしれませんが、憧れのスターを前にしたら自分の年齢なんて忘れるじゃないですか。ユーミンのコンサートもそう。白髪のおじいちゃんおばあちゃんでも、曲を聴けばあの頃に戻るんです。

──これからの時代、50~70代の方々はどのような生き方になると思いますか?

柴門:これからは年齢よりも、個性の時代になっていくと思います。私が子どもの頃は、70代以上の方は、頭の中までおじいさんおばあさんになっているんだろうなと思っていました。でも、いざ自分がその年代に近づくと、そうでもない。おじいさんおばあさんという枠ではくくれず、それぞれ違う人間なんですよね。

年齢による肉体の衰えやハンディキャップはあっても、みんな"個"として生きていく。"個"の集まりがコミュニティを築いていくのではないでしょうか。

 

柴門ふみ(サイモン フミ)

漫画家。1957年生まれ。1979年、『クモ男フンばる!』で、漫画家デビュー。『P.S. 元気です、俊平』で、『第7回講談社漫画賞』一般部門を受賞。『家族の食卓』『あすなろ白書』で、『第37回小学館漫画賞』青年一般部門を受賞。さまざまな世代の恋愛をテーマにした『東京ラブストーリー』『恋する母たち』など多くのヒット作品を手掛け、実写化作品も多数。現在は、10年前にやってきたウェルシュ・コーギーのリンコちゃんと楽しく暮らす。「いつも犬が居た」シリーズは、『いつも犬が居たー老漫画家と老犬の毎日ー』(紙&WEBマガジン『毎日が発見』)、『いつも犬が居たー夫のヒミツー』(ダ・ヴィンチWeb)を同時連載中。

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