毎日の生活にドキドキやわくわく、そしてホロリなど様々な感情を届けてくれるNHK連続テレビ小説(通称朝ドラ)。毎日が発見ネットではエンタメライターの田幸和歌子さんに、楽しみ方や豆知識を語っていただく連載をお届けしています。今週は「『おかえりモネ』で描かれる『普通』のヒロイン」について。あなたはどのように観ましたか?
※本記事にはネタバレが含まれています。
【前回】【おかえりモネ】まさに異例作。「合格」は冒頭でサラリ...重点が置かれたのは「どう伝えるか」/9週目
【最初から読む】『おかえりモネ』は異例のスタート? 朝ドラの"重要な2週間"に思うこと/1~2週目
清原果耶主演のNHK連続テレビ小説(通称朝ドラ)『おかえりモネ』第10週のサブタイトルは「気象予報は誰のため?」。
気象予報士の資格を取得した百音(清原)がいよいよ上京。
朝岡(西島秀俊)のいる気象情報会社のアルバイト面接を受けるため、下見で会社を訪れると、登米で交流があった気象予報士・野坂(森田望智)にいきなりテレビ局に連れて行かれる。
そこで朝岡が夜のニュースの気象コーナーを若手気象予報士たちに託し、いなくなってしまう中、百音は気象予報士の資格を持っているということで手伝うことに。
バイト面接前の下見でいきなり最前線に駆り出され、テレビで見ていた気象コーナーの裏側を知る百音。
さらに朝の情報番組の気象コーナーにもピンチヒッターとして駆り出され、仙台の強風情報を伝える方法としてパペットを駆使すると、パペットの名前「コサメちゃんと傘イルカくん」がSNSでトレンド入りする。
いきなりのとんとん拍子だ。
しかし、これはある意味、リアルである。
仕事が決まらずにいきなり上京してしまう百音は、朝ドラ定番のグイグイ突き進むエネルギッシュなヒロインじゃないし、ドジっ子ヒロインでもなく、度胸が据わっている。
朝岡のコネを利用しようとしているわけでも、必死で誰かにすがったり頭を下げたりするわけでもなく、「なんとなく普通にそこにいて、巻き込まれて、なんとなくうまくいく」のだ。
しかも、採用という知らせに対して歓喜するわけでもなく、驚いてぼんやりするのが、実に百音らしい。
心の中ではすごく驚き、喜んでいるのだろうが、それが打てば響くような反応にならず、「普通」に受け止め、周囲に「普通」に受け入れられていく百音のような人は、確かにいる。
そういう度胸の良さもまた朝岡が百音を評価した点なのだろうか。
ところで、美しい自然が大きな魅力だった登米編が終了してしまったが、東京編では百音が下宿をする銭湯・汐見湯のセットが天井の高さも差し込む光加減も実に素晴らしい。
朝ドラでは喫茶店がヒロインたちの集う場所として登場しがちだが、銭湯とコインランドリーが出会いや集いの場になるのは非常に珍しいケースだ。
そして、東京編は、仕事仲間でおそらくライバルで友人となる気象予報士・神野マリアンナ莉子役で今田美桜が登場。
登場した瞬間に画面が華やぐパワーがあるが、百音との気象予報に対する向き合い方の違い、大事にしているモノの違いが今後の見どころになるだろう。
【まとめ読み】『田幸和歌子さんの「朝ドラコラム」』記事リスト
文/田幸和歌子