コロナ禍以降、子どもと過ごす時間が増えている方が多いのではないでしょうか。そこで、絵本の読み方や選び方、読み聞かせの効果などについて理解を深めて、子どもと充実した時間を過ごしませんか? 書籍「子どもの脳と心がぐんぐん育つ 絵本の読み方 選び方」(パイ インターナショナル)から、子どもに絵本をもっと読んであげたくなる豆知識を紹介します。
※本記事は仲宗根 敦子著の書籍『子どもの脳と心がぐんぐん育つ 絵本の読み方 選び方』から一部抜粋・編集しました。
【前回】脳の成長は「6歳までの過ごし方」が重要! 7歳以上でも遅くない!/絵本の読み方 選び方
3000万語の格差。お母さんがかける言葉の量と質が重要
6歳までに脳の神経回路が活発につながる子どもたちにとって、たくさんの言葉のシャワーを浴びることは、とても重要だということをこれまでもお伝えしてきました。
「絵本で学ぶお母さんの言葉の重要性について」私はある本の内容に非常に大きな衝撃を受けました。
シカゴ大学医学大学院、小児外科教授のダナ・サスキンドによる『3000万語の格差』(明石書店)です。
彼女は耳の聞こえない子どもに、人工内耳移植をし、耳が聞こえるようになった後、発達にどのような変化が見られるか調査しました。
すると、耳が聞こえるようになった子どもも家庭環境によって成長に大きな差が見られたのです。
温かな会話の多い家庭で育った子どもは順調に言葉を習得していきましたが、親が毎日の生活に精一杯であまり会話のなかった家庭の子どもは、言葉の理解が進んでいなかったのです。
さらに、言葉の量だけでなく、ポジティブな言葉かけをしていると学力が高くなっていました。
このように、いくら言葉をたくさんかけていても、「ダメ」などのネガティブな言葉はかえって子どもの成長を妨げます。
子どもにとって、かけられる言葉の量と質がいかに大事かということが、わかるのではないでしょうか。
これを読んで、絵本を読み聞かせる習慣がいかに重要か確信しました。
つい、子どもを叱ったり怒鳴ったりして、イライラが止まりません、というママからのお悩みをたくさん頂きます。
ここで少しだけ、否定的な言葉を言われたときの感情を、味わってみてください。
例えば、以下の言葉をパートナーや会社の人に言われたとします。
「料理作るのが遅い! ダメじゃないか!」
「もっと伝わるようにしっかり話せないの?」
「早くして! 仕事が遅い!」
「だから注意したじゃない!」
いかがでしたか?
マイナスの感情(いやな気持ち)が起きた方がほとんどだと思います。
「否定的な言葉」が、子どもに与える影響を整理してみましょう。
(1)否定的な言葉は、先ほど体験したような、マイナスな気持ちをどんどん蓄積します。
今の感情を、具体的に数値化してみましょう。
0を基準とした場合に、マイナスの感情はいくつくらいですか?
例えば、マイナス10が最大値で、感情もマイナス10だったとしたら......。
もし、子どもが親との会話の中で、1日5回マイナスの感情を味わっているとしたら、感情の指数は、マイナス10×5回でマイナス50になってしまいますよね。
(2)脳は否定語を理解しないために、禁止したことをやってしまいます。
脳科学では「脳は否定形を理解できない」と言われています。
「絶対に、オレンジ色のパンダを想像しないで!」どうでしょう?
語尾の「しないで!」の前に、オレンジ色のパンダを想像してしまいますよね。
このように、脳はすでに最初の言葉からイメージを始めて、想像します。
それを否定されても、一度想像してしまったら、そう簡単には脳内から消えないのです。
例えば子どもに、「絶対にこぼしちゃダメ」と伝えると、残念なことに、たいていはこぼしてしまうのです。
そして、失敗体験を重ね、さらにネガティブな状態や気持ちを実現してしまいます。
では、どうしたらいいのでしょうか?
(3)「して欲しい行動+肯定語」が具体的な行動へ導きます。
子どもは「こぼしちゃダメ」と禁止するだけでは、具体的にどう行動していいかがわかりません。
親がして欲しい行動へ導くためには、やって欲しい具体的な言葉かけをします。
例えば、「両手でしっかり持って運んでね」と肯定的に具体的な行動を伝えることが大切です。
【まとめ】
かけられる言葉の量と質によって、子どもの脳の成長に大きな差が出る。