あなたの脳、本当は天才レベル!? うまく使うために必要なのはメンテナンス

すっきり起きれない、いびきがうるさくなったなど、歳を重ねてくると、誰でも大小さまざまな「睡眠」の悩みを抱えます。ただ、その悪い睡眠を放っておくと、思考力や集中力の低下を招き、仕事や生活が不安定になる恐れも。そこで「睡眠を変えれば人生が変わる」と説く医学博士・田中俊一さんの著書『45歳からは「眠り方」を変えなさい』(文響社)から、脳と体を老け込ませる「睡眠負債」をリセットする方法を連載形式でお届けします。

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成功する人・しない人の脳と、睡眠

私たちの脳には、だいたい1000億個のニューロンがあり、1個1個のニューロンには情報を伝達するためのシナプスという接合部が、少なく見ても1万個あるとされています。ですから計算上、私たちの脳の中には約1000兆個のシナプスがあることになります。

これはとてもすごいことで、私たちは自分の頭の中にスーパーコンピューターを所持しているのと同じ。それくらいのスペックを誰もが持っているのです。

でも、ちょっと待ってください。皆の頭が同じ構造で動いていて、ニューロンやシナプスの数は変わらないのに、世の中には、「頭がいい人」と「そうでない人」がいます。「成功する人」と「そうでない人」がいます。「新しいアイデアを生み出せる人」と「そうでない人」がいます。

この差は、いったいどこからくるのでしょう?

その答えは、私は、「脳内にきちんとしたネットワークがつくられているかどうか」にあると考えています。

「頭がいい」というのも、「世の中での成功」も「新しいアイデア」も、まったく何もないところから何かを生み出すものではありません。ほとんどの場合が、見たことのあるもの、触れたことのあるものを結びつけることによって生み出されています。脳をうまく使っている人というのは、脳の中にある情報のネットワークに、うまく意味づけができて効率的に脳を使っているのです。

では、効率的に脳を使うためにはどうしたらいいのか。そのカギは、お話ししてきたように睡眠が握っているのです。

もし今、努力しているのに、なかなか成果が出ないとしたら、それはご自身のスーパーコンピューターの使い方やメンテナンスの仕方をわかっていないだけ。誰もがスーパーコンピューター並みの能力があるのに、そのことに気づいていません。そして、自分に適度な期待を持てずにいるのです。

脳が「人間らしい働き」を止めてしまうとき

神経細胞同士のつながりこそが脳の力のすべてといっても過言ではありません。けれども、脳の病気以外に、私たちの脳が自らそのつながりを断ってしまうことがあります。その大きな原因は、これまでに何度か登場したストレスです。

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私たちの脳は大きく3つに分かれています。爬虫類にもある一番古い脳が「脳幹」といわれる部分。これは内臓や呼吸の動きを調節しています。脳幹は肉体が生きている限り動き続けます。睡眠時も呼吸ができるのは、脳幹が働いてくれているからです。

脳幹より進化した部分が「大脳辺縁系」です。これはライオンやハイエナにもあります。快不快を感じ、食欲、生殖、恐怖や怒りなどを司る、本能や感情を担当する脳です。

人間しか持たない新しい脳は、一番外側にある「大脳新皮質」。私たちが本を読んだり、音楽を楽しんだり、勉強をしたりできるのは、この脳のおかげです。相手の気持ちがわかるのも言語を使って思考できるのも、私たちに大脳新皮質があるからです。

これまで何度か登場した「ストレス」は、大脳辺縁系で感じる「恐怖」や「怒り」といった感情と深く関連しています。そして、大脳辺縁系で感じる感情が強く働いているときには、大脳新皮質の思考は強制的にストップさせられてしまいます。

これは、私たちがまだ人間になる前、大型肉食動物の餌食になっていた頃に由来します。敵に遭遇した際にとる行動は、恐怖にしたがって「逃走する」か、怒りのパワーで「闘争する」かのどちらかでした。

このときは大脳新皮質で行なわれる思考はストップ。考え込んでしまえば、その間に食べられてしまいますから、脳自体が「考えるな」というモードになってしまうのです。

年下の弟とのケンカで、最初は逃げていた弟が、追い詰めすぎたらすごい勢いで反撃してきた、というような経験がある方はいませんか?そのとき、弟の脳は思考をしていません。恐怖と怒りというストレスに突き動かされて、反応しているだけなのです。

捕食される恐怖や、兄弟ゲンカは極端な例かもしれませんが、このようにストレスや恐怖などの感情は私たちから思考を奪います。

そして、睡眠不足もまた、大きなストレスのひとつ。睡眠不足になると感情的になりやすい、という経験をしたことのある方も多いと思います。睡眠不足は様々な側面から、私たちの思考する力を停止させてしまいます。

同じ構造、ほぼ同じ容量の脳を持って生まれてきたにもかかわらず、私たちの人生に大きな差が出てくるのは、脳の使い方がうまい人とそうでない人がいるからだ、そういっても過言ではないでしょう。そして睡眠を専門にしている私からすれば、睡眠のとり方が、そこにつながっています。

若い頃は、多少の無理は利きます。もともと生まれ持った生命力が、多少の不眠があってもそれを補ってくれるからです。

しかし、45歳を過ぎてからは自分で気をつけなければなりません。睡眠に対して真摯に向き合っていかなければ、脳をうまくコントロールすることができなくなるからです。そしてきちんと寝ている人とそうでない人の差は、じわりじわりと広がっていきます。

自分の頭の中にあるスーパーコンピューターを使って最大のパフォーマンスを発揮するためには、良質な睡眠は不可欠なのです。

45歳から人生が激変?「眠り方を変えなさい」記事リストはこちら!

052-syoei-nemurikata.jpg仕事の立場や生活スタイルなど、人生が大きく変わり始める40代に贈る、「5つの睡眠改革法」がまとめられています

 

田中俊一(たなか・しゅんいち)

医学博士。横浜市立大学院客員教授、医療法人みなとみらい理事長。1997年に金沢内科クリニック設立後、国際医療福祉大学院教授、横浜市立大学大学院教授など経て、現職に。毎月8000名の生活習慣病の治療に睡眠から取り組む、睡眠と糖尿病のスペシャリスト。日本テレビ系「世界一受けたい授業」などメディア出演も多数。

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『45歳からは「眠り方」を変えなさい』

(田中俊一/文響社)

睡眠が人生を変える――。人生の成功をつかんだ人は、睡眠をより良いものにし、常に最高のコンデションを保つ努力をしています。35年にわたり延べ10万人の睡眠と、人生を変える姿を見てきた医学博士が、人生を楽しく生きるための「5つの睡眠改革法」を伝授。

※この記事は『45歳からは「眠り方」を変えなさい』(田中俊一/文響社)からの抜粋です。
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