「センスないね」後輩に嫉妬して始まる「とっちめてやるゲーム」/イヤな人間関係(3)

「とっちめてやる」ゲームから抜け出す方法

それでは、「とっちめてやる」ゲームから抜け出すためにはどうしたらいいでしょうか?

この事例の場合は4つのゲームの終わらせ方である、1「ミスをしない」、2「仕掛け人の否定的な気持ちに反応しない」、3「大人の対応を心掛けて事実を告げる」、4「ゲームの場から離れる」のすべてが有効です。

より効果の高い方法から順にお話ししましょう。

(2「仕掛け人の否定的な気持ちに反応しない」は、カモになることを回避できます。

仕掛け人の裏面交流に反応しないようにしましょう。

仕掛け人はミスをしたという事実を告げて、心の裏側で「とっちめてやる」と思っています。

この「とっちめてやる」という気持ちに反応せずに、「そうでしたか。すみません」と淡々とミスを直していくと、仕掛け人が裏面交流を使って、こちらの心に湧き起こそうとしていた「悔しい」「悲しい」などの気持ちが湧き起こらず、仕掛け人によるコントロールを回避できることになります。

(3「大人の対応を心掛けて事実を告げる」は、ゲームを終わらせることができます。

自分の心の中に起こっている状況(事実)をありのまま伝えるだけで、相手がいかに不合理な行いをしているかが明確になります。

林くんが「センス悪いな」と森くんに暴言を吐いた時、森くんが「センスはたしかに悪いかもしれませんが、それを大声で言われるととても嫌な気持ちになります。林さんは、わざと私を嫌な気持ちにするために言っているのですか?」と告げましょう。

1つ注意すべきは、事実を告げることで、仕掛け人とカモの攻守が変わるという点です。

事実を告げることが、相手に喧嘩を売っているような印象を与えることがあります。

事実を告げた場合、おそらく林くんは、「いいや。そんなことはない」と打ち消してくるかもしれませんし、本音を漏らして「お前が気に入らないのだ。でかい顔をするなよ」と言うかもしれません。

それでも、嫌がらせを受ける度に、感情的にならず、大人の対応を心掛けて事実を告げましょう。

ほかの対処方法である(1「ミスをしない」は、念には念を入れてチェックをすることで、ゲームを回避できます。

しかし、そうは言っても、仕事にミスはつきものです。

そのため、ミスをしてもいいように仕掛けを張り巡らせておきましょう。

思い切って、森くんは林くんに「先輩。ミスをしたくないので、やり方を教えてください」と事前に教えを乞うのも1つの手です。

林くんの言った通りにして、ミスが起こった場合、林くんは森くんに何も言えなくなります。

カモは、自分をとっちめる人とは話などしたくないと思うかもしれませんが、ミスをしなくても、仕掛け人はミスを探そうとします。

仕掛け人を頼ることで、相手の自己肯定感を満たすのが賢明です。

仕掛け人の自分を否定する気持ちが慰められ、一時的にこのゲームが和らぎます。

また、林くんが森くんをとっちめそうな雰囲気になったら、森くんは「電話がきました」「トイレに行きます」などと言って、(4)「ゲーム場から離れる」と、ゲームに巻き込まれにくくなります。

しかし、その時は逃れることができますが、根本的な解決にはなりません。

ただ、ゲームに対応するのが億劫に感じる時に使用すれば、その場しのぎの解決にはなります。

※取り上げている事例は、ゲームを理解しやすくするために、実際にあった事例をもとに筆者が考えたものです。どの事例も、状況が変われば、別のゲームが生じることがあります。あらかじめご承知おきください。

【最初から読む】誰かの「カモ」になってしまう3つの原因

【まとめ読み】「イヤな人間関係から抜け出す本」記事リスト

「センスないね」後輩に嫉妬して始まる「とっちめてやるゲーム」/イヤな人間関係(3) 168-c.jpg

心理学の理論をもとにした10のゲーム。5章にわたって人間関係のルールとトラブル攻略法が解説されています

 

高品孝之(たかしな・たかゆき)
1960年北海道生まれ。臨床心理士。一級交流分析士。博士(教育学)。早稲田大学国文科卒業後、高校の教員になるも人間関係のトラブル解決の困難さを目の当たりにし、心理学を学ぶ。北海道大学大学院教育研究科博士後期課程を修了後、30年間、高校の現場で心理学的手法を用いて、生徒と生徒、生徒と親、親と親など、さまざまな人間関係のトラブルを解決してきた。

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※この記事は『イヤな人間関係から抜け出す本』(高品孝之/あさ出版)からの抜粋です。
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