相続、介護、オレオレ詐欺...。年を重ねるにつれ、多くのトラブルに巻き込まれるリスクがありますよね。そこで、住田裕子弁護士の著書『シニア六法』(KADOKAWA)より、トラブルや犯罪に巻き込まれないために「シニア世代が知っておくべき法律」をご紹介。私たちの親を守るため、そして私たちの将来のための知識として、ぜひご一読ください。
意思を伝える
相続対策としての遺言
「生前整理」とは、自分の死後を考えて「物」や「財産」の整理を行うことです。
自分の希望を死後にも確実に叶えるために、また残される家族などの負担を減らすためにも、生前整理は重要です。
最初にすべきは、財産目録を作ることです。
そのための書類を揃え、財産の全容を明らかにしておきましょう。
財産の多少に関係ありません。
相続人にとって、そのまま相続するか、3カ月以内に家庭裁判所に申し立てる必要のある相続放棄・限定承認するかの判断材料として重要です。
特に、相続税の税務申告が必要なときは必須です。
とりわけ、相続税法上の配偶者の特例などの軽減措置を受けたいときは、期限がありますので遅れるわけにはいきません。
本人が作成するのもそれなりに大変ですが、遺族にとってはさらに困難です。
専門家に依頼して時間と費用をかける必要が生じるかもしれません。
元気なうちに少しずつ進めましょう。
ところで、改正民法によって、自筆証書遺言作成のハードルが劇的に低くなりました。
遺言書に添付が必要な財産目録は、パソコンで作成できることになり、簡便になりました。
一度作ると訂正も容易ですし、今後の方針も決めやすくなるでしょう。
財産目録の記載内容
すべての財産を書きます。
プラス資産預金(有価証券・保険など)だけでなく、マイナス資産(借金・ローンなど)も必要です。
添付資料は、原本とともに、できればコピー・写真も作成しておきましょう。
財産の処分・整理の方針
不動産
大きな資産ですが、住んでいない家の売却や住み替えを生前整理の対象として検討しましょう。
専門家の意見を聞いたうえで、処分するか、貸家とするか、リバースモーゲージにするかなどを考えましょう。
収益用マンションなどについては「不動産の相続」の項を参照してください。
宝石や骨董品などの動産
価値を確認したうえで、処分するか残すか、家族や知人の意向を確認しておきましょう。
形見分けも検討しましょう。
株
相続時に手間がかかるため事前に家族を含めて相続対策をしておきましょう。
売却と保有のどちらがよいかなど、専門家の意見も確認しておくと参考になるでしょう。
デジタル終活とは
情報の整理と断捨離
パソコンのデータには、金融情報だけでなく、これまでの種々雑多な情報が集積しています。
電脳空間では、これらの情報が世界に伝播する可能性があり、半永久的に残ります。
よい情報だけでなく秘密にしたいものもあるでしょう。
余計な情報、外に出るとまずい情報は、早々に「断捨離」しましょう。
特に、遺族が困るかもしれない情報かどうかは重要な視点です。
逆に「連絡先」「親族一覧」など、遺族にとってもあると便利な情報は、データ化や印刷をして渡すこともお勧めです。
金融情報についての対応
財産目録やエンディングノートに、各暗証番号・パスワードを書き残しましょう。
それだけではなく、もう一歩踏み込んだ処理をしましょう。
例えば、株式や投資信託など、ネット証券に預けているものは、ある年齢に達したら現金化することです。
老後はできるだけ、さまざまな処理が容易な資産にしておくことがお勧めです。
いざ相続となると、相続人にとって払い戻し等の処理が困難になるおそれがあるからです。
また、複数の株式を保有しており、売却したくない場合は、相続人全員に、同じ証券会社に口座を作っておくことも一つの方法です。
口座があれば、相続に際して容易に移管ができます。
ほかにも書籍では、認知症や老後資金、介護や熟年離婚など、シニアをめぐるさまざまなトラブルが、6つの章でわかりやすく解説されていますので、興味がある方はチェックしてみてください。