【92歳の現役デザイナー】初対面でも声をかけずにはいられない、私が惹かれる「顔」の魅力

『92歳、好き放題で幸せづくし』 (粟辻早重 /KADOKAWA)第7回【全8回】

92歳になった現在も、デザイナーとして創作活動に忙しい日々を過ごす粟辻早重さん。彼女の著書『92歳、好き放題で幸せづくし』(KADOKAWA)は、大人世代がその先の人生を自分らしく彩るためのヒントが詰まった一冊です。驚くことに、粟辻さんが陶芸やギターに挑戦したのは90歳を過ぎてから。日課の縄跳びや散歩も、「健康を維持しなきゃ」という義務感からではなく、「自分が楽しいから」続けています。食事もまた、献立をスケッチして器を選ぶ時間を慈しむような、丁寧な暮らしを大切にする一方で、大好きなコーラやカップ麺も我慢しません。年齢という枠を軽やかに飛び越え、今この瞬間を味わい尽くすその姿は、私たちに「老い」への希望を届けてくれます。

※本記事は粟辻 早重  (著)による書籍『92歳、好き放題で幸せづくし』から一部抜粋・編集しました。

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縄跳び上手(?)の私にとっては、ゆっくり跳ぶほうが難しい!

「気になる男」に出会うと写真を撮らずにいられない

数カ月前、近所で少し大がかりな道路工事が始まったとき、作業員さんが挨拶に来てくれました。季節は、真夏。日陰になる自宅の車庫を休憩場所として使ってくれて構わないことを伝えると、とても喜ばれました。

そんなことから作業員さんと顔見知りになったのですが、よく見るとこの彼、なかなか味のあるいい顔をしている......。というわけで、あるとき、「写真を撮らせてもらえませんか?」とお願いしてみました。

写真を撮りたいのは、彼の顔を描いてみたいから。顔を描くのは、「男の顔」をテーマにした展覧会を予定しているからです。最初は驚いていた作業員さんも、理由を説明すると少し照れつつモデルになってくれました。

若い頃からずっと、女性をテーマに作品を作ってきました。女性で興味深いのは、体。メイクで飾れる顔より、体に「その人らしさ」が出るように思えるからです。

ただし男性の場合は、体より顔。スッピンで生きてきた顔には、ひとりひとりの人生がにじみ出ているようなおもしろさがあります。そのことに気づいて以来、気になる顔を見つけると、たとえ初対面でも「写真を撮らせて!」と頼まずにいられなくなりました。

でも人の顔を描くことには、独特の難しさもあります。作品として私が納得できるかどうかだけでなく、モデルさん自身がどう感じるかも気になってきてしまうから。この髪形がこの人らしいんだけど、本人はイヤだろうな......なんて、ちょっと残念に思いながら帽子をかぶらせたりすることもあるんですよ。

 
※本記事は粟辻 早重 (著)による書籍『92歳、好き放題で幸せづくし』から一部抜粋・編集しました。

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