「若見え」よりも、今を楽しみたい。90代の私が軽やかに街へ出て、誰かと心を通わせるコツ

『92歳、好き放題で幸せづくし』 (粟辻早重 /KADOKAWA)第6回【全8回】

92歳になった現在も、デザイナーとして創作活動に忙しい日々を過ごす粟辻早重さん。彼女の著書『92歳、好き放題で幸せづくし』(KADOKAWA)は、大人世代がその先の人生を自分らしく彩るためのヒントが詰まった一冊です。驚くことに、粟辻さんが陶芸やギターに挑戦したのは90歳を過ぎてから。日課の縄跳びや散歩も、「健康を維持しなきゃ」という義務感からではなく、「自分が楽しいから」続けています。食事もまた、献立をスケッチして器を選ぶ時間を慈しむような、丁寧な暮らしを大切にする一方で、大好きなコーラやカップ麺も我慢しません。年齢という枠を軽やかに飛び越え、今この瞬間を味わい尽くすその姿は、私たちに「老い」への希望を届けてくれます。

※本記事は粟辻 早重  (著)による書籍『92歳、好き放題で幸せづくし』から一部抜粋・編集しました。

タクシーの運転手さんにオマケしてもらった理由

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若く見えるのは、好きな服が若い頃から変わらないからかもしれません。

最近は「若見え」なんて言葉がありますよね。私は特に意識したことはないのですが、この年齢であちこち出歩いていると、実際より若く見られることがほとんどです。

たまに買い物に行く洋服屋さんでは、若い店員さんとおしゃべりするのも楽しみのひとつです。あるとき、彼女が会話の中で「粟辻さん、お若く見えるから」。接客の仕事をしている人にとっては、決まり文句です。でも私たちの長いおしゃべりにあきれていた娘が、「うちの母、いくつだと思います?」なんて口をはさんできたんです。

お客の年を予想するのはやりにくいだろうと思い、私はすぐに「90歳を過ぎてるのよ」と助け船を出しました。店員さんは「90代!?」とびっくり。そこからあらためて話が盛り上がって......。娘は「余計なことを言わなければよかった!」と後悔したかもしれません。

またあるときは、タクシーに乗ったら、70代と思われる男性運転手さんが「この年で働くのは大変なんだよね」とブツブツ。ちょっといたずら心が出て、「わかりますよ、私も90代ですから」と言ってみました。

私のほうが「先輩」だと知り、運転手さんのグチはピタリと止みました。おまけに目的地でタクシーを降りるとき、千数十円の料金を「1000円で結構です」と言うんです。「ちゃんとお支払いします」とお金を出しても1000円しか受け取らず、「今日はよいお客さんを乗せました。ありがとうございます」なんてお礼まで。長生きすると、こんなお得なこともあるんですね。

 
※本記事は粟辻 早重 (著)による書籍『92歳、好き放題で幸せづくし』から一部抜粋・編集しました。

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