毎日の生活にドキドキやわくわく、そしてホロリなど様々な感情を届けてくれるNHK連続テレビ小説(通称朝ドラ)。毎日が発見ネットではエンタメライターの田幸和歌子さんに、楽しみ方や豆知識を語っていただく連載をお届けしています。今週は「『おかえりモネ』に見る朝ドラの三角関係」について。あなたはどのように観ましたか?
※本記事にはネタバレが含まれています。
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清原果耶主演のNHK連続テレビ小説(通称朝ドラ)『おかえりモネ』第16週のサブタイトルは「若き者たち」。
今週は一部視聴者お待ちかねの「恋愛」メイン週。
しかし、そこには数々の割り切れない思いがあった。
東京に突然やって来た亮(永瀬廉)は、百音(清原)を頼る。
亮に想いを寄せる未知(蒔田彩珠)は苛立ちを見せるが、そもそも同級生5人組の中に1人妹が入っているわけで、そこは仕方ない気もする。
それでも、亮と近くあり続けるために、地元に生きることを選び、家業の牡蠣に向きあう未知の思いは、正論では割り切れないのだろう。
また、妻の死から立ち直れない父の割り切れない思いは、亮の心を壊してしまう。
そんな亮は、百音を頼る中、彼氏ができそうな百音に、抑えてきた自分の感情が溢れ出す。
そして、亮を心配し、自分との待ち合わせをすっかり忘れてしまう百音を肯定しつつも、百音が抱えてきた地元に対する後ろめたさを感じ、救いたいと思う菅波(坂口健太郎)。
不愛想で、コミュニケーション力が不足しているように見えた不器用な菅波が、百音との出会いで柔らかく、大人になっている。
一方、菅波と対面した亮は、どこか弱い子どものように見える。
それぞれに切ない三角関係、いや、未知を含めた四角関係だ。
ところで、朝ドラで三角関係が描かれた例と言えば、思い出されるのは『ちりとてちん』の主人公・B子(貫地谷しほり)が恋をする草々(青木崇高)が、よりによって劣等感を抱いてきた同級生で優等生のA子(佐藤めぐみ)だったこと。
『半分、青い。』の鈴愛(永野芽郁)と律(佐藤健)は、高校時代の弓道少女や、マアくん(中村倫也)との三角関係などが描かれた後、互いに結婚・離婚を経て人生のパートナーとなっていく。
少女漫画的恋愛と、生々しい大人の感情のぶつかり合いの両面を持っていた。
また、『カーネーション 』や『花子とアン』は不倫を描いているが、相手の妻は病床にあり、登場しないだけに"三角関係"の綱引きはない。
しかし、『ごちそうさん』では、め以子(杏)と悠太郎(東出昌大)とその幼馴染(加藤あい)の間でかなり生々しい嫉妬が描かれていた。
『スカーレット』では不倫に至らなかったものの、喜美子(戸田恵梨香)の才能に嫉妬する夫・八郎(松下洸平)と、元恋人に才能で追い抜かれた自身を重ね合わせた弟子(黒島結菜)が急接近する。
『おちょやん』では千夜(杉咲花)が夫・一平(成田凌)と女優の裏切りを知り、絶望を経て喜劇俳優として開花する。
こうして振り返ると、朝ドラでは恋愛も爽やかなイメージを持たれがちだが、実は近年は三角関係を含め、生々しさも表現される機会が増えているようだ。
【まとめ読み】『田幸和歌子さんの「朝ドラコラム」』記事リスト
文/田幸和歌子