【おかえりモネ】姉妹ってつくづく難しい! 恋に仕事に...抑えられなかった「ズルい」の気持ち/15週目

毎日の生活にドキドキやわくわく、そしてホロリなど様々な感情を届けてくれるNHK連続テレビ小説(通称朝ドラ)。毎日が発見ネットではエンタメライターの田幸和歌子さんに、楽しみ方や豆知識を語っていただく連載をお届けしています。今週は「朝ドラで描かれる姉妹の感情」について。あなたはどのように観ましたか?
※本記事にはネタバレが含まれています。

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清原果耶主演のNHK連続テレビ小説(通称朝ドラ)『おかえりモネ』第15週のサブタイトルは「百音と未知」。

今週は百音(清原)のキャスターデビュー、菅波(坂口健太郎)とのデート計画、妹・未知(蒔田彩珠)の上京、新次(浅野忠信)と亮(永瀬廉)父子の葛藤、百音と未知の衝突と、情報量がかなり多かった。

東日本大震災で行方不明になった新次の妻・美波(坂井真紀)の母・フミエ(草村礼子)が新次たちのもとに現れ、美波の死亡届に印鑑を押してくれと言う。

高齢のフミエが美波の葬儀をしてあげたいという気持ちも、新次が自分が印鑑を押すことで行方不明者の妻を「死者」にするのが耐えられず、再び酒に溺れたくなる思いもわかる。

いや、本当は他者が簡単に「わかる」はずなどないのだろうが。

しかし、そこでついに、一生懸命父を支え続け、漁師として頑張ってきた亮の気持ちが切れてしまうのが、なんとも辛い。

そしてそれは、百音と未知の姉妹ならではの複雑な感情をあぶり出す。

行方がわからなくなった亮に未知が電話をしても出ず、百音が電話すると出たこと、スピーカーフォンになっているとも知らず、全部やめたくなったという本音を語り、「百音にしか言えない」と言ったことで、未知は言う。

「りょーちん、お姉ちゃんには知らせるんだ。お姉ちゃん、ズルい!」

未知が亮に片想いしているための嫉妬だが、それだけではない。

「逃げたいんだよ、本当は。でも、誰かが残んなきゃ!」の言葉には、未知が自身と亮を重ね合わせている思いが見える。

息子(内野聖陽)すら継いでいない牡蠣業を孫である未知が継ぐ必要なんてないし、未知も自ら望んで進んだ道ではあるはずだ。

それでも土地に縛られている思いはどこかにあり、都会に行き、仕事も順調で、好きな人もいて、幼馴染にも思われている姉を羨む「ズルい!」の気持ちは抑えられない。

ちなみに、近年、朝ドラで姉妹の複雑な感情を描いた作品としては『スカーレット』が思い出される。

次女は空襲で一人取り残されたことがトラウマとなり、奔放に育ち、父が姉ばかりを気にかけることに嫉妬・反抗し、早々に実家を飛び出す。

『花子とアン』では長女が給付生として女学校に通う傍ら、妹たちは過酷な労働条件下で女工として働いたり、想いを寄せる相手が長女に片想いしているために失恋し、過酷な結婚生活に苦悩したりしていた。

『カーネーション』では主人公が一人で自分の道を切り開き、好きなことをしていることを妹が羨み、母にたしなめられており、後には主人公の娘たちが度々衝突する姿が描かれていた。

姉妹ってつくづく難しい。

だからこそ、最も生っぽい感情が描かれるパートでもあった。

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文/田幸和歌子

 

田幸和歌子(たこう・わかこ)
1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経て、フリーランスのライターに。ドラマコラムをweb媒体などで執筆するほか、週刊誌や月刊誌、夕刊紙などで医療、芸能、教育関係の取材や著名人インタビューなどを行う。Yahoo!のエンタメ公式コメンテーター。著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)など。

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