宇野昌磨、坂本花織などが大活躍で幕を閉じたフィギュア世界選手権。写真家が大会で見つめた「表情」

2023322日から25日、さいたまスーパーアリーナでフィギュアスケート世界選手権が開催されました。宇野昌磨選手・坂本花織選手が大会を連覇し、りくりゅう(三浦璃来選手、木原龍一選手組)による日本勢初の年間グランドスラム達成など、日本勢の大活躍で幕を閉じました。印象的なシーンが多かった本大会、現場で撮影をしたスポーツ写真家の中村康一氏に、フォトグラファーの視点で振り返ってもらいました。


宇野昌磨、坂本花織などが大活躍で幕を閉じたフィギュア世界選手権。写真家が大会で見つめた「表情」 KNA59005.jpg

さいたまスーパーアリーナで開催されたフィギュアスケート世界選手権、素晴らしい大会でした。開幕前から日本勢の3種目制覇が有望視されてはいましたが、それを実現できたことは並大抵のことではありません。地元開催だからこそのプレッシャーは計り知れないものがあり、また宇野昌磨選手は元からの不調に加え、公式練習で負傷。その中でよくぞあれだけのパフォーマンスを披露してくれたものだと思います。また、いつも言われることですが日本のファンは実に熱心に観戦し、自国のみならず他国の選手にも愛情のこもった応援をします。コロナ禍がほぼ終息し、熱い声援が戻ってきたことが、今大会の成功に大きく寄与したものと感じます。

 今回、編集部からの依頼は「写真撮影の技術、エピソードについて語ってほしい」とのことでした。最近、他の媒体でも同様のコラムが見受けられますが、私はおそらく他のフォトグラファーとは全く違う撮り方をしています。果たして参考になるかどうか分かりませんが、写真を添えて語ってみたいと思います。

熱心なファンの方々ならばご存知とは思いますが、宇野昌磨選手は、演技中にはっきりとした喜怒哀楽、特に笑顔を見せることの少ない選手です。もちろん表情を表に出すシーンはあるのですが、それはとてもさりげないもので、そこをいかに上手に写真に収めるかをいつも思案しています。例えば今回で言えば、ショートプログラムでのコンビネーションジャンプ。今回、予定要素としては4T+2Tと記載していたのですが、練習で4T+3Tを試していたことからも、本人もあわよくば、の気持ちがあったはず。しかし最初の4Tの着氷があまり良くなかった。この時点でフォトグラファーとしては(コンボを2Tにするはず→その後に微妙な表情をするはず)とまで読んで表情を押さえに行く、ということをしています。昨年のモンペリエでは同様の手法で素晴らしい写真が撮れたのですが、今回は微妙過ぎる表情であまり良い写真になりませんでした。一応、掲載しておきます。

宇野昌磨、坂本花織などが大活躍で幕を閉じたフィギュア世界選手権。写真家が大会で見つめた「表情」 KNB25076.jpg

私は演技中、エレメンツの構成と実施を見て、頭の中でざっくり点数を計算しています。そうすると、後半でリカバーに行くところ、絶対に失敗できないところなどが分かりますので、当然それに付随して選手の表情の変化も予想できます。

宇野昌磨、坂本花織などが大活躍で幕を閉じたフィギュア世界選手権。写真家が大会で見つめた「表情」 KNB47840.jpg

これはフリー後半、2つ目の4Tの着氷です。ここが一番の勝負所で、転倒していたらチャ・ジュンファンに逆転されていた可能性が高いです。着氷は悪かったのですが、辛うじて1Tを付け、REP(同じソロジャンプの繰り返しによる減点)を回避しました。厳しい表情ですが、この難所を乗り切った後はいい表情の写真が増えました。

宇野昌磨、坂本花織などが大活躍で幕を閉じたフィギュア世界選手権。写真家が大会で見つめた「表情」 KNB45486.jpg

 

この記事に関連する「趣味」のキーワード

PAGE TOP