九州・能古島の名物。81歳のおばあちゃんが揚げるほっこり「いも天」の魅力

「いまの幸せは、昔ん人がおったから」
花いっぱいの自然公園・のこのしまアイランドパークをご主人と築いた久保田睦子さん。
嫁いで61年。"昔"の暮らしに思いをはせ、いまも懐かしい味を守り続けています。

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自分の子どもが実家に帰ってきたときのようにお客さまを迎えたい。そんな思い出店頭に"いも天"を並べる。

「おいしかいも、食べんかーい」
のこのしまアイランドパークの入場門をくぐると、睦子さんの明るい声が聞こえます。

15haもの土地に花を咲かせるだけでなく、睦子さんは毎日売店に立ち、お客さまに50年前の開園当初から欠かさない故郷の味・いも天をすすめているのです。

5~6枚入りで1袋300円!

九州・能古島の名物。81歳のおばあちゃんが揚げるほっこり「いも天」の魅力 1911p114_01.jpg手書き文字から睦子さんの温かさが伝わる。

毎日いもの天ぷらを揚げるのは、農家の苦労を忘れんため。花畑は、昔、いも畑やったから。

「赤いもちゅうてね、能古島の名産。花畑ができる前は、ここはぜーんぶいも畑だったんよ。子どもや孫の世代になったら分からんけど、私がおるうちは昔ん人の土を耕す苦労を忘れたくなかけん、続けとるんよ」

笑顔でそう話し、揚げたての1枚を差し出してくれました。

九州・能古島の名物。81歳のおばあちゃんが揚げるほっこり「いも天」の魅力 1911p114_02.jpgさつまいもはざくざく厚切りにして...。

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大きな鍋で揚げるから、おいしい!

九州・能古島の名物。81歳のおばあちゃんが揚げるほっこり「いも天」の魅力 1911p115_02.jpg赤いえりをぬい留めた法被(はっぴ)は、お客様の前に立つときの睦子さんのユニフォーム。

「それに、いくら花畑を造ろう思うたっちゃ、土地がなければ始まらん。いま、花がいっぱい咲くんは、広い土地を手に入れていもを育て、土を肥やしてくれたご先祖さまのおかげたい」

地元の甘夏ジュースも自慢たい。手間がかかるけん、飲めば、頭がきりきりしたのがほどけるよ。

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咲き誇る花を眺めながら、青空の下で飲む甘夏ジュースは1杯200円。"いも天"とともに大人気

さつまいもの天ぷらの横には、甘夏ジュースも...。

素材はもちろん地元産です。3月から6月までかけて睦子さんが皮をむき、袋から中身を丁寧に取り出して、真空パックにして冷凍し、ジュースにするのだそうです。
「甘いだけじゃない。皮の苦みや酸味もあって、いろんな味がするやろ。自然はありがたかね」
何に対しても感謝の気持ちを忘れない睦子さん。

九州・能古島の名物。81歳のおばあちゃんが揚げるほっこり「いも天」の魅力 1911p115_01.jpgいも畑を花畑に変えようと土と格闘する睦子さんの旦那さま・耕作さん(2005年に他界)。のこのしまアイランドパークの創業者でもある。写真は1960年代の風景。

「14年前、主人は私にさよならも言わんと突然一人で逝きんしゃった。そんときはどうして?とずいぶん泣いたけん、でも、いまは、少しも寝込まず、私が苦労せんように助けてくれた思うとる。やっぱり、ありがたか」

九州・能古島の名物。81歳のおばあちゃんが揚げるほっこり「いも天」の魅力 1911p115_04.jpg秋の花畑で見つけたポンポン咲きのダリア

九州・能古島の名物。81歳のおばあちゃんが揚げるほっこり「いも天」の魅力 1911p115_05.jpg花壇の縁に並んで咲くマリーゴールド

のこのしまアイランドパーク

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住所:福岡県福岡市西区能古島 
電話:092-881-2494

料金:大人1200円 
営業時間:9:00~17:30(平日)、9:00~18:30(日・祝日。冬季は平日と同じ) 
定休:なし
アクセス:福岡市営地下鉄空港線 福岡空港駅~姪浜駅(約25分)下車。西鉄バスに乗り換え「姪浜駅北口」~「能古渡船場」(約15分)下車。フェリーに乗り換え、姪浜港~能古港下船。西鉄バスに乗り換え、アイランドパークへ(約13分)
*行き方は複数ありますので、あらかじめご確認ください。
*レストランやバーベキュー場、コテージもあります。島内にはキャンプ村、海水浴場も。

 

久保田睦子(くぼた・むつこ)さん

1938年、福岡県久留米市生まれ。19歳で夫・耕作さんのもとに嫁ぎ、能古島に移住。二人三脚で「のこのしまアイランドパーク」の花畑を造り上げた。いまも毎日花畑に立ち、大勢のお客さまを迎えている。

この記事は『毎日が発見』2019年11月号に掲載の情報です。

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