25年前にイギリスから単身日本にやってきたポール・スミザーさんは、無農薬で庭づくりをしている注目のガーデナー。山梨県の八ヶ岳にある彼のナチュラルガーデンが人気を博しています。今回ポールさんにお聞きしたのは、種まきや挿し木から始める「植物を"育てる"楽しさ」について。ポールさんは「種まきは、自然への恩返し」と話してくれました。
小さな苗が、やがて大きな景色になる
分け入った野山で、数少なくなった野草を見つけては、種を少しだけ持ち帰って土にまくポールさん。挿し木(茎の一部を土に挿して根付かせる)や株分け(根を分ける)もします。地道なそんな作業を何年も続けているのは、庭作りのためだけではなく、その命を絶やしたくないという思いからです。
軽トラックの荷台で一休み。発芽した苗を眺めながら、さらさらとスケッチをする楽しい時間
まだ幼い野草の苗もそうして根付かせたもの。もともとは山梨の八ヶ岳南麓に自生いた植物です。まもなく庭に移植され、時を経て美しい景色の一部になっていくでしょう。
種はどれもポールさんが採取し、じっくり乾燥させてから発芽させたもの
「この子たちの故郷は八ヶ岳。日当たりや土を故郷に近い環境にすることが大事だね」
ポールさんはそう話します。育てることは、言葉を替えれば、植物の故郷をもう一度作り直すこと。人が生まれ育った土地を忘れないように、植物にとっても故郷は生きやすく、恋しい場所であるはずですよね。
「野草でなくてもいい。植物の種をまいてみない?」
土はホームセンターで売っている種まき用の培養土でOK。「ビニールポットに土を入れて、3粒くらいぱらぱらっとまけばいい。野草の種の場合は、すぐには揃って発芽しないことも多いので、諦めないで、土に湿り気がある状態を保って見守ろう」
芽が出た後は?
「地中にしっかりと根が張って、ビニールポットの下穴から根がのぞくようになったら、地植えするか植木鉢に植え直す。根腐れしないよう、土の表面が乾いてからたっぷり水をあげてね」
ラショウモンカズラ
シソ科の多年草。写真は挿し木で根付かせたもの。栽培苗は山野草として出回る。日当た
りのいい場所に向く。花期は4~6月。
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シキンカラマツ
キンポウゲ科の耐寒性多年草。日なたから半日陰向き。花期は7~8月。種まき時期は真
夏を除く春から秋。春先に株分けもできる。
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アサマフウロ
フロウソウ科の耐寒性多年草。湿り気のある日なたが向く。花期は8~9月。種まき時期
は真夏を除く春から秋。希少な準絶滅危惧種。
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ノダケ
セリ科の耐寒性多年草。日なた~木陰向き。花期は9~11 月。種まき時期は真夏を除く春
から秋。新芽は山菜として食べられる。
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萌木の村 ナチュラルガーデン
紹介している景色は、一般公開されているポールさんの庭の一つ。春夏秋冬の景色を楽しめます。
住所:山梨県北杜市高根町清里3545
電話:0551-48-3522
時間:10:00~18:00(5~11月) 10:00~17:00(12~4月)
休み:なし
料金:入場無料
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取材・文/飯田充代 撮影/木下大造 協力/萌木の村