モネといえば、印象派の巨匠として、また、一連の「睡蓮」が有名ですが、モネ以前の絵画から大きく飛躍した作品を描いた画家であることをご存じの方は少ないようです。現在、横浜で開催中の「モネ それからの100年」展で、その革新的な作品にふれてみませんか?
丸山直文《pud d le in the wood s 5》 2010年 アクリル、綿布 227.3 × 181.8cm 作家蔵 ©Naofumi Maruyama,Courtesy of ShugoArts
クロード・モネ《ヴィレの風景》 1883年 油彩、キャンヴァス 60.3 × 78.8cm 個人蔵 ©Christie's Images / Brid geman Images
キャンバスに塗り残して自然を表現
モネ以前は、遠近法を使い、写実的に表現することが主流でしたが、モネは色彩を多用し、そこに光、風、水など形なきものを画面の中に再現しました。
白いキャンバスの上に、微妙に違う色を重ねていく。木の幹、葉、空、池、色をのせることで一体となり、塗りつぶさなかったことで、絵の中に光や風を感じることができます。
同じく森の中の水たまりを描いた丸山直文の作品にも、同様の志向が認められます。このように、モネの技法は、後世の画家に影響を与えています。
色を塗り重ねて風景を抽象化
「霧の中の太陽」は、モネがテムズ河のサヴォイホテルに宿泊したときに、窓から見た風景で、向こう岸に見える景色から、午前中の光景であるといわれています。色面を塗り重ねることで起こる光のイリュージョン。この技法も後世の画家たちに踏襲されています。
クロード・モネ《霧の中の太陽》1904年 油彩、キャンヴァス 71.0× 91.5cm 個人蔵
1880年制作の「セーヌ川の日没、冬」。モネの人生においても画業においても転換期となる作品です。朝日と夕日。光と大気、水が混然一体となり、その輝きは、色を超えて目の前に迫ってきます。
クロード・モネ《セーヌ河の日没、冬》1880年、油彩 キャンヴァス、ポーラ美術館
オランジュリー美術館に見る集大成
1897年ごろから「睡蓮」をモチーフにした作品を手がけ始め、1914年からは、のちにオランジュリー美術館に飾られる「睡蓮」制作に没頭します。左の作品は水面に映る空、葉陰、どれもオランジュリーの大作に通じるものがあります。
クロード・モネ《睡蓮、水草の反映》 1914-17 年 油彩、キャンヴァス 130.0 × 200.0cm ナーマッド・コレクション(モナコ)