何が知りたいのかを明確に。目的到達のための検索テクニックとは/「超」独学法

何が知りたいのかを明確に。目的到達のための検索テクニックとは/「超」独学法 pixta_38511768_S.jpg人生100年時代、仕事の引退は80代、と言われるようになっている現代において、私たちに求められているのは「どれほど個人の市場価値を上げられるか」ということ。ではどうすれば個人の市場価値は上げられるのでしょうか?その答えは「独学」にありました。

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目的の対象に絞り込むにはどうするか?

検索語を1つ入れただけでは、たくさんの対象がヒットしてしまう。その中には一般的な事項を記述しているものが多く、本当に知りたいこととは関係のないことしか分からない。これでは、目的のことを知ることができない。

例えば、「金融緩和」と入れるだけでは、一般的な解説や、現在問題になっているニュース記事を探すだけのことになる。独学のためには、その中の何を調べるかが重要である。その問題意識が重要で、それに応じて、自分の知りたいことが書いてあるウェブサイトを探し出す必要がある。つまり、「絞り込む」ことが必要だ。

このための1つの方法は、自分が知りたいことを、文として入力することだ。例えば、「金融緩和政策と実質賃金の関係はどうなっているか」というような文だ。

文を入れても、検索エンジンは接続詞や助詞などは無視するから、キーワードのand検索
がなされることになる。and検索をするには、キーワードを空白で区切って入力するのだが、これと同じことになるわけだ。この場合、ヒットした記事の中に目的の言葉が入っていなかったとしても、その中に何かのヒントが入っているかもしれない。そこから目的の概念に到達できる場合もある。

 

検索語が分からないときにどうするか?

検索エンジンを利用できるようになって、「キーワードを知っていること」が大変重要になった。検索の要点は、適切なキーワードを知ることだ。しかし、キーワードは常に分かっているわけではない。知りたいことの名前は、必ずしも分かっているわけではないのである。

最も簡単な例を挙げれば、花の名だ。公園で見つけた花の名前を知ろうと思っても、現在の検索エンジンでは、すぐに知ることはできない。植物の専門家であれば、「この花の名は何ですか?」と言って指さして聞けば、直ちに教えてくれる。その人がそばにいなくても、写真を撮って送れば、教えてくれるだろう。

ところが、これまでの検索エンジンでは、そのような専門家ないしは物知りと同じようなことを教えてくれない。「言葉は分かっているが、その意味が分からない」という場合に調べるのは簡単だが、その逆は難しいのである。

「意味は漠然と分かっているのだが、検索すべきキーワードが分からない(あるいは、忘れてしまった)」という場合に、どうしたらよいか? 例えば、金融緩和問題について考えていたとき、「緩和が長引くと、かえって経済抑圧的になる」という学説があったと思い出したとしよう。その説の名は何だったのか? あるいは、その提案者は誰だったか?「金融緩和」をキーワードにすると、きわめて多数の記事がヒットしてしまう。「金融緩和に関する法則」で検索すると、別の法則が出てきてしまう。

こうした場合は、周辺のことを手当たり次第に調べてみるしかない。そして、それに関連する文章の中にキーワードが出てくることを期待する。しかし、目的にたどり着くには、かなりの試行錯誤が必要だろう。しかも、これは学説であって、法則とは言わないので、「法則」をキーワードに入れると、かえって見つけにくくなってしまう。こうした問題は、金融の専門家に尋ねれば、直ちに教えてくれるだろう。知識は依然として重要なのだ。検索をした場合に、本当に自分の知りたい情報を探しあてるのは、必ずしも容易なことではない。最近の検索エンジンは、人工知能的な検索をするようになっているが、まだ不十分だ。

 

八艘とび検索法

「検索語が分からない」というのは、このような専門的な場合だけではない。例えば、ある俳優について調べたいのだが、その名前は忘れてしまったとしよう。その人が出演した映画はいくつか見ているのだが、その映画のタイトルも忘れてしまった。そうした場合に、その俳優の名前をどうやったら知ることができるか?

1つの方法は、共演している俳優の名前で検索して、その映画のタイトルを引き出し、そこから出演俳優の名を調べることだ。あるいは、その映画のおおよその筋書きは覚えているだろうから、ストーリーに関係のありそうなキーワードを並べて映画のタイトルを引き出すという方法もある。

例えば、地下の国家、反乱、女性の首相といったキーワードを並べて、「ハンガー・ゲーム FINAL:レボリューション」というタイトルを引き出す。そこまで行けば、「ジュリアン・ムーア」という名を引き出すのは容易だ。

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つまり、関連するサイトを次から次へと渡り歩くわけだ。私はこの方法を「八艘(はつそう)とび検索法」と呼んでいる。検索テクニックの神髄は、いかにして検索語を見出すかにある。多くの場合、検索語が分かれば、「勝ち」である。目的は、ほぼ達成されたと言ってよい。

 

いくつかの注意事項

最近の検索エンジンは、一般的なものの他に、ニュースや画像等を分けて表示している。グーグルの場合について言えば、最近問題になっていることを知りたいのであれば、「ニュース」を開いたらよい。また、「もっと見る」の中に、「書籍」という分類がある。ここを開くと、Googleブックスのデータを示してくれるので、体系的な知識を得ることができる。

外国語のサイトの自動翻訳はどうか? 前に比べればだいぶ改善された。しかし、専門的な内容のものは、依然としてほとんどだめである。読んでいるとかえって混乱してしまう。そこで、翻訳文ではおおよそどのようなことが書かれているかを把握するだけとし、その後は原文を読むのがよい。そのほうがずっと効率的だ。

なお、重要な情報があるウェブサイトを見つけたら、そのURLをどこかにコピーして記録しておく必要がある。情報そのものを記録する必要はないが、サイトのURLは必要だ。そうしないと、後になってまたそのサイトを探すのに、大変な苦労をすることがある。

 

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野口悠紀雄(のぐち・ゆきお)

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年4月より早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。


 

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『「超」独学法』

野口悠紀雄/角川新書)

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この記事は書籍『「超」独学法』からの抜粋です。

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