20代で芸能界デューした小泉孝太郎さんも、今年で40歳。新境地に挑んだ主演刑事ドラマも第3シーズンがスタートし、まさに脂ののった活躍ぶりの小泉さん。人気シリーズに成長した役柄や役作りについて伺う中で、お父さまへの思いが溢れ出てきました。
ほのぼのと笑える、これまでにない刑事ドラマ
─―主演の連続ドラマ「警視庁ゼロ係」がサードシーズンまで続く人気作となっていますが、演じていて手応えを感じられた瞬間などはありますか?
小泉 セカンドシーズンの時に正直手応えはありました。夕方に再放送されていた地域があったようで、ご覧になった主婦の方が、「小泉孝太郎ってこんな役やってるの?」と(笑)。「刑事ドラマなのに、見終わった後明るい気持ちになれるのがいい」と言ってくださったのがうれしかったですね。そうか、このテイストでやってきて良かったんだなと。
僕の演じる小早川冬彦という人は、純粋で天真爛漫、無邪気なんです。ものすごく個性的なキャラクターで、空気が読めない(笑)。だけど、人に毒を吐いたり、責めたり、バカにしたりするせりふは似合わない、平和主義者なんです。最初の頃は、もうちょっとサイコパスのような人物像も考えてはいたのですが、そういう感じだったらここまで続かなかったかもしれないですね。お子さんたちも見てくれるようになりましたし。
それと、これまでの刑事ドラマのように主役が目立つより、むしろゼロ係メンバーのほのぼのとした雰囲気を大事にしています。笑って見られて、しっかりサスペンスの要素もある。当初はそのバランスがうまくいけば、きっと面白い刑事ドラマになるね、と共演の皆と話していました。それがここまで続いてきたんですから、本当にうれしいですよね。
演じる役の中に自分自身も入れ込む
─―最近は悪役もされたり役の幅も広いですが、役作りはどんなふうにされているのでしょう。
小泉 僕はいつも、この人は自分の人生の中で出会った中の誰に似ているかなぁ? というのをすごく考えますね。そういえば学生時代にこういう人がいたなぁとか(笑)。例えば「下町ロケット」(2015年)での悪役の時も、そういえばすごく癖のあるベンチャー企業の人がいたなぁと(笑)。似た誰かで軸を作り、そこにいろいろと付け足していって、さらに本来の自分も足していきます。
役作りって、どこかに自分を入れた方が楽しいと思うんですよね。誰かになりきろうと思っても、結局自分が演じているので。僕はそのエッセンスを大事にしていますね。だから小泉孝太郎を思いっきり入れています。
「ゼロ係」の小早川の場合だと、わぁ~い!と無邪気に喜んでいる時の姿は、僕が無邪気になった時のそのままです(笑)。小早川の姿に本来の僕や子供時代の僕が垣間見えるかもしれませんね(笑)。
─―どんなお子さんでしたか?
小泉 子どもの頃からスクリーンの中の役者という人たちに興味がありました。幼稚園の時に親戚に映画『E.T.』( 00年)を見に連れて行ってもらったんですが、見て泣いて、終わった後に「あの中にはどうやったら入れるんだろう」と聞いたらしいですから(笑)。「あれはうそなんだよ、実際にはないんだよ」と言われて。でも、子どもだから分からないじゃないですか。「なんでだろう、あの世界に入りたいなぁ」と思っていました。
僕は政治家の家に生まれましたが、うちは父も親戚も舞台や映画を見に行ったり、食事の時にドラマや映画の話をしたり、自然にしていましたね。政治家の家としてはちょっと珍しいのかもしれませんが。でもいま思うと、そういう父からの影響も自然と受けていたのかなと思います。これが芸術とか芸能にまったく理解のない親だったら、いまの僕の人生は全く違っていたと思いますしね。
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取材・文/鹿住恭子