父と荒海見る約束を父の日に/井上弘美先生と句から学ぶ俳句

pixta_34354371_S.jpg井上弘美先生に学ぶ、旬の俳句。6月は「切れを作る」というテーマでご紹介します。

前の記事「「鯉幟ゆらりと白き腹を見せ」/井上弘美先生と句から学ぶ俳句」はこちら。

 

百合の蘂(しべ)みなりんりんとふるひけり 川端茅舎

百合の花は夏野に彩りを添える、生命力に溢れる花で、『万葉集』の時代から和歌に詠まれています。
この句は「百合の蘂」の後に軽い「切れ」を置いて、突き出すような長い蘂を「りんりん」と強調。〈りんりんとみなふるひけり百合の蘂〉と比較すれば明らかなように、上五の「百合の蘂」が「切れ」によって際立っています。俳句は「切れ」の効果が大きいことがわかります。

作者は一八九七年、東京生まれ。日本画家を志しましたが病気により断念。写生に徹した名句を多く残しました。一九四一年に逝去。享年四四。

 


父と荒海見る約束を父の日に 鈴木節子

六月の第二日曜は父の日。母の日に比して地味で忘れられがちですが、こんな豪快な句に出合うと、父への一句を詠んでみたくなります。
この句は「父の日」の「約束」が「荒海」を見ることである点に意外性があります。母の日では詠めない内容で、娘の父の存在へ寄せる深い信頼や愛情が感じられます。一句の「切れ」は「約束を」の後にあって、「約束を」という言葉が強調されています。

作者は一九三二年、東京生まれ。「門」主宰として活躍。この度、第一句集『夏のゆくへ』を新装再版。その中の一句です。

 

※そのほかの俳句に関する記事はこちら

<教えてくれた人>
井上弘美(いのうえ・ひろみ)先生

1953 年、京都市生まれ。「汀」主宰。「泉」同人。俳人協会評議員。「朝日新聞」京都版俳壇選者。

この記事は『毎日が発見』2018年6月号に掲載の情報です。

この記事に関連する「趣味」のキーワード

PAGE TOP