サッカー日本代表・酒井宏樹がメディアの評価に一喜一憂しないワケ/リセットする力

サッカー日本代表・酒井宏樹がメディアの評価に一喜一憂しないワケ/リセットする力 24051810.jpgフランスの名門マルセイユで不動の地位を確立し、サッカーワールドカップロシア大会での活躍が期待されるサッカー選手、酒井宏樹。しかし彼は「弱気」で「人見知り」という性格の持ち主だった...。
サッカー選手に不向きなその性格をいかにして克服してきたのか? 本書『リセットする力「自然と心が強くなる」考え方46』で、その具体的な方法を探っていきましょう。

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少し厳しめの基準で設定しておく

プロのサッカー選手である以上、批評や批判は切り離せない関係にあります。もちろん自分に対する批判は気持ちの良いものではありません。でもそれを受け止めない限りは前に進めないですし、良いことだけを書いてくれるのがメディアではないと僕は思っています。

的を射ている鋭い指摘であれば受け止めますし、なかには「こういう見方をしていたのか」と参考になるものもあります。あるいは、僕自身が「今日のプレーは良くなかったな」と思っていたのにメディアからの評価が高かったり、反対に良いプレーができたと感じた日にメディアの評価が低いこともあります。同じ試合のプレーでも見る人によって評価が異なる場合もあるので、「人が違えば視点や判断基準が違うのか。であれば評価が良くても悪くてもどちらも正解だ」と考えるようになりました。

ただ、メディアの評価に流されて、自分自身がブレてしまうことだけは、絶対にあってはいけないことだと思います。

だからこそ自分自身の基準を持つことが必要になります。自分のフィーリングを大切にして、その基準をもとに自分のプレーの良し悪しを判断できれば、メディアからどんなに批判されようともブレることはありません。下位相手に良いプレーができて、メディアから高い評価をもらったとしても、自分自身の基準がブレなければ「もし相手がパリ・サンジェルマンFCやASモナコだったら同じようなプレーはできなかった。そこは課題として修正しなければいけない」という自己判断が下せるようになっていきます。

自分がどれだけ良いプレーをしても、100人いればそのうち20人くらいからは批判される。それはなくなりません。だから自分の感覚と基準だけを信頼する。でもその基準はあくまでも「多少厳しめ」です。自分の基準を甘く設定して「今日は良いプレーができた」と考えるのは単なる自己満足でしかないし、甘い基準でプレーを続けていたらそこに成長はありません。

僕は性格がちょっと完璧主義なところがあって、気になりだすと細かい部分まで気にする癖があります。勝った試合や良いプレーができた試合のほうが、かえって課題が気になるため、その点では自分自身の基準を「厳しめ」に持ち続けられているだと思います。


自分の基準を明確化するために必要なこと

繰り返しになりますが、柏レイソル時代の僕はメディア対応が本当に苦手でした。ロンドン・オリンピック代表に入っていたため、試合に出始めたばかりでも取材を受ける機会が多くなり、たとえば試合後のミックスゾーンで僕が話した内容と、キタジさん(北嶋秀朗)、タニくん(大谷秀和)のようなチームの中心選手が話した内容が違うと、「僕なんかがメディアに発信していいのだろうか......」と疑心暗鬼にもなりました。

また、メディアからの批判で一番苦しんだのが、日本代表で(内田)篤人くんと比較されていた22歳のときでした。ザッケローニ監督が期待を込めて僕を使ってくれるのですが、ピッチで結果を残すことができず、メディアから「内田のほうがいい」という意見が出るたびにいつも落ち込んでいました。

当時はまだ、「自分の基準」で考えることができていなかったがゆえに、抱えてしまう悩みだったように思います。ですが、ヨーロッパの厳しいメディアに晒(さら)されていくうちに、十人十色の評価に一喜一憂することがなくなり、「自分の基準」が明確になっていくにつれ、周囲の評価はさほど気にならなくなっていきました。

多くのメディアに評価していただくのは本当に素晴らしいことで、アスリート冥利(みょうり)に尽きます。しかし、自分のプレーの評価判断を人に任せてしまうと浮き沈みの激しい選手になってしまいます。だからといって自分を褒めている記事をわざわざ探すのも格好悪い。

やはり、厳しい目で自分の基準を持ち続けることが大事です。これは多くのアスリートが実践していることですが、アスリートに限らず、周囲の評価がどうしても気になってしまう人にとってもきっと効果的な考え方だと思います。

また、自分が気持ちいいことや心地よいことをたくさん見つけて、自分のフィーリングを大切にすることで、自分の基準を明確にしてほしいです。

 

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撮影/千葉 格

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酒井 宏樹(さかい ひろき)

1990年4月12日、長野県生まれ。千葉県柏市で育つ。柏レイソルU-15、U-18を経て2009年にトップチームへ昇格。2010年にJリーグデビュー。2011年にはチームの主力として活躍し、チームのJ1優勝とともに、ベストイレブン、ベストヤングプレーヤー賞を受賞。同年10月にはA代表に初選出される。日本での活躍が評価され2012年にドイツ・ブンデスリーガのハノーファー96へ完全移籍。主力として活躍した後、2016年6月にフランスの名門オリンピック・マルセイユへ完全移籍。マルセイユ移籍後も確固たる地位を築き、不動の右サイドバックとして活躍。日本代表でも欠かせない存在として、2018年ロシア・ワールドカップでの活躍が期待されている。

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『リセットする力「自然と心が強くなる」考え方46』

(酒井 宏樹/KADOKAWA)

「日本人は活躍できない」という前評判を覆し、フランスの名門マルセイユで不動の地位を確立し、世界の注目を集めるサッカー選手となった酒井宏樹。彼はいかにして「自信のなさ」と「メンタルの弱さ」を克服し、心を強くしていったのか。自然と心が強くなる具体的な方法をこれまでのエピソードをとおして初公開!

 
この記事は書籍『リセットする力「自然と心が強くなる」考え方46」』からの抜粋です。
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