サッカー日本代表・酒井宏樹「ドイツでの苦しい時期について、いま思うこと」/リセットする力

24051827.jpgフランスの名門マルセイユで不動の地位を確立し、サッカーワールドカップロシア大会での活躍が期待されるサッカー選手、酒井宏樹。しかし彼は「弱気」で「人見知り」という性格の持ち主だった...。
サッカー選手に不向きなその性格をいかにして克服してきたのか? 本書『リセットする力「自然と心が強くなる」考え方46』で、その具体的な方法を探っていきましょう。

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つらいときほど「ポジティブ思考」の練習時間

誰もがそうだと思いますが、決断したら後悔はしたくない。
成功するもしないも全部自分次第。だから最初の移籍先がハノーファーだったのは、絶対にプラスになりましたし、もしいきなり日本からマルセイユへ移籍していたら成功していなかったでしょう。それだけではなく、僕のサッカー人生がめちゃくちゃになっていた可能性だってあったと思っています。

僕が全然通用していなくても、ハノーファーは我慢強く僕を試合で使ってくれました。それによって僕はヨーロッパに馴染(なむことができたわけで、ハノーファーでは目の前の苦しい状況も最終的にはポジティブに変えていけることを学びました。

先ほど「決断したら後悔はしたくない」と言いましたが、ハノーファーへ移籍して、試合にまったく出られなかったときは「この海外移籍は失敗だったのかもしれない」と感じることもありました。

もし僕が「苦しいから」といってすぐに日本に帰ってしまったら、それこそ本当にハノーファー移籍は失敗だったということが現実になります。運良く柏レイソルに復帰できたとしても、チームは僕の代わりの右サイドバックを補強しているため、彼とのポジション争いに負けて出場できないままズルズルと現役が終わっていく未来を想像して恐怖を感じたこともありました。

しかし、「そんなサッカー人生になってたまるか」と自らを奮い立たせました。ただでさえ、僕をかわいがってくれた祖母の反対を押し切ってサッカー選手になったのだから、ここで帰るわけにはいかない。僕が下した「海外移籍」という決断を、失敗ではなく成功に変えるためには、ハノーファーで結果を残すしかありませんでした。

 

苦しい時期は「成功への過程」と考える

苦しい原因の多くは自分自身にあったように思います。いま振り返れば、ドイツに行ったばかりの頃はドイツ語も英語もまともに話せず、コミュニケーション能力に欠けていました。そこで家庭教師をつけて、1年目のシーズン途中からドイツ語の勉強を本格的に始めました。

最初に通訳を務めてくれた川原元樹(かわはらもとき)さんには「はい、宏樹。いま監督がミーティングで言ったことを訳してみて」と、常にドイツ語で考えて話す機会をつくっていただきましたし、次に通訳を務めてくれた津田恵太さんにも非常にお世話になり、お二人のおかげで僕のドイツ語はぐんぐん上達していきました。

柏レイソル時代はメディア対応が苦手だったので、できるだけ報道陣を避けていたのですが、そういう部分も変えていかなければ成功はないと思い、チームメートには明るく接して、人当たりを良くしていこうと意識をするようになりました。すると周囲も僕に気さくに声をかけてくれるようになり、私生活でもドイツ人とコミュニケーションが取れるようになって、ますますドイツ語の勉強を頑張ろうという気になっていきます。言葉を習得するにつれて、少しずつ自分の意思を伝えられるようになり、監督ともコミュニケーションを取れるようになっていきました。

ハノーファーの3年目、4年目を迎える頃には、1年目、2年目の苦しんだ経験が無駄ではなかったと感じるようになりました。そこでわかったことは、そのときに苦しい思いをしても、「これは無駄だ」「これは失敗だった」と捉えるのではなく、「この苦しい経験も絶対にプラスになる」と切り替えることの重要性でした。「苦しいから」と諦め、そこでやめてしまえば、それは確かに失敗でしょう。でも、たとえそのときは苦しくても最後に成功すれば、苦しかった時期は成功への過程になるのです。

僕だけではなく、みんなそういう苦しい時期を乗り越えてきたと思います。リオネル・メッシやクリスティアーノ・ロナウドでさえも、サッカー選手でプロキャリアのスタートからずっとうまくいっている選手はいないはずです。

「順風満帆でなくていい」
そう考えれば、チャレンジすることに不安を感じている自分を応援することができるのではないでしょうか。

 

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撮影/千葉 格

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酒井 宏樹(さかい ひろき)

1990年4月12日、長野県生まれ。千葉県柏市で育つ。柏レイソルU-15、U-18を経て2009年にトップチームへ昇格。2010年にJリーグデビュー。2011年にはチームの主力として活躍し、チームのJ1優勝とともに、ベストイレブン、ベストヤングプレーヤー賞を受賞。同年10月にはA代表に初選出される。日本での活躍が評価され2012年にドイツ・ブンデスリーガのハノーファー96へ完全移籍。主力として活躍した後、2016年6月にフランスの名門オリンピック・マルセイユへ完全移籍。マルセイユ移籍後も確固たる地位を築き、不動の右サイドバックとして活躍。日本代表でも欠かせない存在として、2018年ロシア・ワールドカップでの活躍が期待されている。

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『リセットする力「自然と心が強くなる」考え方46』

(酒井 宏樹/KADOKAWA)

「日本人は活躍できない」という前評判を覆し、フランスの名門マルセイユで不動の地位を確立し、世界の注目を集めるサッカー選手となった酒井宏樹。彼はいかにして「自信のなさ」と「メンタルの弱さ」を克服し、心を強くしていったのか。自然と心が強くなる具体的な方法をこれまでのエピソードをとおして初公開!

この記事は書籍『リセットする力「自然と心が強くなる」考え方46」』からの抜粋です。
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