なぜ体力測定B判定でも、日本代表として世界を相手に活躍できたのか?
数々の記録をもつ天才サッカー選手・遠藤保仁の「最速で最高の決断」をくだす思考のつくりかたの極意を大公開!
「やることが山積みで全然前に進まない」「頭の中がごちゃごちゃでつらい」などの悩みをかかえているあなた、本書『「一瞬で決断できる」シンプル思考』から考え方のコツを学びましょう。
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流れがいいときこそ「シンプル」に
サッカーの試合には必ず「流れ」がある。
実力に大きな差があれば別だが、一方的に攻め続ける展開になることはない。必ず相手の攻勢を受ける時間帯がある。
「流れ」がいいときは、おもしろいようにプレーがうまくいき、こぼれ球も自分たちの足元に転がってくる。パスミスをしても、結果的にそれが味方に渡り、ミスに見えなかったりする。反対に「流れ」が悪いときは、何をやってもうまくいかず、こぼれ球もことごとく相手チームに渡ってしまう。
したがって、試合を有利に進めるには、いかにいい流れの時間を長くして、悪い流れの時間を短くするかがポイントになる。
サッカーはいくら流れがよくても点が入らないということもあるが、流れが悪い時間を短くすれば、勝利に近づくのは確かである。
流れがいいときは、余計なことをせず、シンプルにその流れに乗っかっていればいい。
フリーキックのときも、できるだけ早く蹴って、流れを止めない。そして、流れがいいうちに点をとることが、勝利するために必要である。
一方、流れが悪いときは、その流れを断ち切る必要がある。そのために、あえてゆっくりボールをまわして相手にボールを渡さないようにしたり、意図的に大きくボールを蹴り出してプレーを切ったりすることもある。ファウルを受けたとき、リスタートのタイミングをずらすのも手段のひとつである。また、フォーメーションを変更して相手を混乱させるという手もある。
こうしたプレーや戦術が功を奏して、流れが変わることもしばしばある。
悪い流れを先読みし、断ち切る
強いチームは、流れがいい時間から、流れが悪い時間に傾きかけたときに、いち早く気づき、悪い流れに完全に傾くのを食い止めるような動きを意識的にするものだ。たとえば、流れがいいときに、バックパスや横パスを相手選手にかっさらわれるようなひどいミスをしたとき。また、敵の蹴り損ねのようなシュートが運悪くゴールマウスに吸い込まれてしまったようなときも、流れの転換点になりやすい。たったひとつのプレーが流れを逆転させてしまうことがよくあるのだ。
このようなとき、試合の流れに敏感な選手は「今のプレーで流れが悪くなるかもしれない」と先読みすることができる。僕自身も試合の流れを意識するようにしているが、流れに敏感な選手が多ければ多いほど、悪い流れに転ぶのを防げる可能性が高くなる。というのも、一人の選手の力で流れを変えるには限界があるからだ。何しろ前半後半90分のうち、選手一人がボールに触れるのは1~2分程度。ボールに触ることができないと、やれることにも限りがある。
チームの複数人が「流れが悪くなりそうだ」と察知すれば、チーム全体でゆっくりボールをまわす、わざと時間を使うなど、悪い流れを断ち切るプレーを組織的に行うことができる。
このように流れを読める賢い選手が多いチームは、流れがいい時間を長くし、悪い時間を短くすることができる。つまり、勝てる可能性が高まるのだ。
川の水も高いところから低いところに流れていくのが自然な「流れ」といえる。それに逆らって泳げば大変な体力を消耗する。しかし、流れに乗ることができれば浮かんでいるだけで自然と進むことができる。
人生や仕事にも、いい流れと悪い流れがあるのではないだろうか。何をやってもうまくいくときは、その流れに乗ってガンガン攻める。一方、何をやってもうまくいかないときは、あえて休んで気分転換をしたり、これまでのやり方を変えてみたりする。そうした日常生活のちょっとした場面で「流れ」を意識するだけでも、自然と道が開けたりすることもあるのかもしれない。ぜひ、やってみてほしい。
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遠藤 保仁(えんどう やすひと)
1980年1月28日、鹿児島県生まれ。鹿児島実業高校卒業後の1998年に横浜フリューゲルスに入団。京都パープルサンガを経て、2001年にガンバ大阪に加入。数々のタイトル獲得に大きく貢献し、2003年から10年連続でJリーグベストイレブンに選出され、現在もガンバ大阪の中心選手として活躍中。また、U-20日本代表をはじめとして、各年代の日本代表に選出され2002年11月に日本代表国際Aマッチデビュー。その後は、日本代表の中心選手として活躍し3度のワールドカップメンバーに選ばれる。「日本代表国際Aマッチ出場数最多記録保持者」「東アジア最多出場記録」「2009年アジア年間最優秀選手」「2014年JリーグMVP」など数多くの記録をもつ。178㎝、AB型。
『「一瞬で決断できる」シンプル思考』
(遠藤保仁/KADOKAWA)
「国際Aマッチ出場数最多記録保持者」など、数々の記録をもつ天才サッカー選手・遠藤保仁の「一瞬で決断できる」シンプル思考の原点に迫る! 年齢を重ねるごとに進化する「最速で最高の決断」をくだす思考のつくりかたの極意44。