本誌連載陣らがおすすめする年末年始に読みたい良書。今回は、鎌田實さんがすすめる「出会いと別れについて思う本」です。
【前回】若宮正子さんがすすめる「新たな発見で暮らしを豊かにする本」
鎌田 實さんがすすめる「出会いと別れについて思う本」
心の揺らぎが輝きを放つ5つの物語
2022年刊『夜に星を放つ』窪 美澄/著 文藝春秋 1,540円(税込)
一冊目は、2022年直木賞受賞作品。
短編小説5編からなる新刊。
生きていると誰にでもやってくる別れを、柔らかく温かなタッチで描く。
カサカサに乾いていた心が、しっとりと落ち着いてきます。
両親が離婚し、新しい母とうまくいかない少年が、父に肩車される最後のシーンでは、不覚にも涙があふれてきてしまいました。
愛する人の本当の心とはを考える一冊
『本心』平野啓一郎/著 文藝春秋 1,980円(税込)
二冊目は、芥川賞作家、平野啓一郎の最新小説。
死の自己決定、貧困、社会の分断...。
愛と幸福の真実が語られる。
愛する人の本当の心を、あなたは知っていますか。
愛する人の他者性を、理解できますか。
自分とは違う人間だと認め、その人の自由を尊重することができますか。
夫婦、親子、親友...。
本心は、なかなかわからない。
わからないということを、わかることが大事。
実は自分の本心もわからないことに気がつき、本当の自分は一つじゃないと思いました。
失った悲しみから立ち直るには
『悲しみのゴリラ』ジャッキー・アズーア・クレイマー/文クレヨンハウス 1,980円(税込)
三冊目は、今年カマタいちおしの絵本。
生と死、命の大切さを、しみじみと考えさせてくれる。
「みんな死ぬの?」
「そう。だれだって、いつかは死ぬんだ...」
「ママはどこにいるの?」
「たしかなことは、誰にもわからない」
母を亡くした小さな子どもに、幻の悲しみのゴリラがそっと寄り添う。
悲しいことは誰だってある。
そんな時、悲嘆の中にいる人のそばで、悲しみのゴリラのように、静かにそっと温かい風を送れるような存在でありたいと思う。
取材・文/寳田真由美(オフィス・エム)