今回は、佐佐木幸綱さんの新しい歌集「テオが来た日」から、伊藤一彦先生がいくつか短歌を抜粋し紹介してくださいました。
佐佐木幸綱さんの新しい歌集『テオが来た日』
現代の日本を代表する歌人である佐佐木幸綱さん(八十一歳)の新しい歌集『テオが来た日』(ながらみ書房)が出版されました。
本のカバー表紙にとても魅力ある犬の顔の写真が使われています。
この犬がテオ。
家のなかで飼っているそうです。
あおぞらを燕がすべり
白犬の仔犬のテオが
家に来たる日
よく晴れた日、空の燕もテオを心待ちにしていたように思えます。
佐佐木さんの「あとがき」の一節を紹介します。
「白いゴールデンリトリバーのテオがやってきたのは二〇一五年の六月六日。生まれたのは三月二十九日。生後二カ月ちょっとでわが家にきたことになる。本名テオドール。通称テオ」。
ゴッホの弟のテオドール・ゴッホの名前をもらったそうです。
そして、仔犬だったテオは今は三十六キロの立派な大きさになって、佐佐木さんのいわば息子です。
大ぶりの百合咲きたれば
花の揺れにじゃれながら
雄蕊の黄に染まるなり
白い頭の毛が黄に染まり
黄の頭ふりながら
わが膝に乗り来る
この二首はまだ幼いテオが庭の百合の花とじゃれて遊んでいます。
仔犬らしい強い好奇心による行動が目に浮かびます。
私も以前に犬を飼っていたことがありますが、特に仔犬はいたずら好きですね。
また甘えん坊のところもあります。
ウイスキーに
氷を入れて振る音に
おやっと見上げ
再びねむる
幼いテオの歌をもう一首紹介しました。
かわいらしいですね。
今年の「歌壇」一月号に佐佐木さんの「スクラム」の連作がありました。
ラグビーワールドカップの歌です。
かつてと変わらぬ良き「親子」の姿です。
寝ころべるテオおしのけて
夕酒を飲みながら見る
準決勝を