「何度読んでもジワッと涙腺が...」医師・作家の鎌田實さん「大人も感動する絵本の魅力」

雑誌『毎日が発見』で好評連載中の、医師・作家の鎌田實さん「もっともっとおもしろく生きようよ」。今回は「大人も楽しめる絵本のススメ」です。

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ぼくには、娘がいます。「お父さんなんか嫌い」。思春期のころ、そう言われてショックを受けました。

30代から病院の院長になり、仕事にばかり打ち込んできました。

気が付くと、子育ては妻任せ。

娘と一緒に遊んだ記憶はありませんでした。

娘は、大学に入ると同時に、親元を離れて暮らすようになり、そのまま違う都市で働き始めました。

罪ほろぼしに、ぼくは娘に手紙を添えて、絵本を贈ることにしました。

子どものころ、読み聞かせひとつしてあげなくてゴメンという気持ちを込めて。

いまはけっこう、仲のいい親子になりました。

絵本のお陰だと思っています。

プロが選ぶすてきな絵本

長崎市の大浦天主堂の近くに、絵本の原画などを展示している「祈りの丘絵本美術館」があります。

その美術館を運営している「童話館」は子どもの本の専門書店で、とてもすてきな空間になっています。

以前から訪ねたいと思っていましたが、2019年夏にようやく実現。

その後、講演にも行きました。

その童話館では、「童話館ぶっくくらぶ」というおもしろいサービスを行っています。

0歳から15歳までの15コースがあり、年代に合ったすぐれた絵本が、定期的に届けられる。

会員のうち、半数は離れて暮らす祖父母が孫のために会員になっていると聞きました。

絵本選びは楽しいものですが、就学前の小さい子どもの場合は、専門家のアドバイスが必要かもしれません。

そんな場合にもスタッフが電話で相談に応じてくれます。

子どもにとっては特別にうれしいみたい。

毎月、自分の名前が書かれた郵便物が来る。おばあちゃんからのプレゼントというのもいい。

読み聞かせは、おじいちゃんやお父さんの味方

ぼくが言うのもちょっとはばかられますが、育児する男"いくメン"や"いくジイ"が最近の男のトレンドです。

いい時代になったなあと思います。

でも、子どもとどんなふうに遊んだらいいのかわからないというおじいちゃんもいるでしょう。

そんな人にぼくは、絵本の読み聞かせをおすすめします。

女性はおっぱいをあげたり、抱っこしたりしてスキンシップをする機会が多くありますが、男性も子どもを膝に抱いて、絵本を読んであげたらいいと思います。

『おててがでたよ』(林明子作、福音館書店)は、小さな子が洋服を着るときに袖から手が出てくるときの楽しさを表現しています。毎日の着替えが楽しくなる絵本です。

5歳くらいになると、ちょっと不条理な作品も子どもたちはじょうずに受け止めることができます。

フランスのロングセラー絵本『うんちっち』(ステファニー・ブレイク作、ふしみみさを訳、あすなろ書房)はタイトルからして子どもが好きそうです。

「うんちっち」という言葉しか言えないウサギの子の物語。

最後は、大ドンデン返しで、読み聞かせをする大人も思わず噴き出してしまいます。

親と子、祖父母と孫、大人と子どもが一緒に大笑いするなんて、とてもすてきなことです。

そして、そうやって特別な関係性が育っていくのでしょう。

いい絵本は、大人にも発見がある

『マリールイズ いえでする』(ナタリー・サヴィッジ カールソン作、ホセ・アルエゴほか絵、星川菜津子訳、童話館出版)は、童話館スタッフのおすすめの絵本です。

ぼくも読んで、大ファンになりました。

マングースの女の子マリールイズが、お母さんに叱られて家出をします。

しかし、お母さんは止めようとせず、お腹が空くからと、サンドイッチをもっていきなさい、なんて言ったりするのです。

女の子は、へびやアルマジロにお母さんになってほしいと頼みますが、断られます。

あきらめかけたときに、お母さんに再会。

お母さんはお母さんで、かわいがったり、世話をやいたりする子がいなくなったので、さびしくなって家を出て来たのだといいます。

そこで、母と子は意気投合して、一緒に家出をしようということになるのですが、おもしろいのは、「どこへ家出する?」とお母さんが子どもに聞いていることです。

子どもの選択や自己決定を優先させているのです。

こういう絵本は、大人も成長させてくれます。がんばって子育てをしている友人がいたら、絵本をプレゼントしてみるのもいいかもしれません。

好きな絵本、だれにプレゼントしますか?

ぼくが繰り返し読んでいる絵本があります。

『リンドバーグ空飛ぶネズミの大冒険』(トーベン・クールマン作、金原瑞人訳、ブロンズ新社)です。

ネズミがプロペラ機を作って、大西洋を渡ります。

少年リンドバーグは、そのネズミを見て、夢をかなえました。

すばらしい絵で、いい映画を見ているような感じになります。

『ルリユールおじさん』(いせひでこ作、講談社)は、製本職人の静かで豊かな世界を描いています。

ライオンと鳥の友情を描いた『100年たったら』(石井睦美 文、あべ弘士絵、アリス館)は何度読んでもジワッと涙腺を刺激します。

大人が感動。

ぜひ、自分で自分にプレゼントしてみませんか。

こうした作品を読むと、だれかに教えたくなります。

手軽にいつでも読める絵本は、人から人へと手渡ししたくなるのも魅力です。

年末年始、人と会う機会も増えますが、子どもや孫、久しぶりに会った人、身近すぎて感謝の気持ちを伝えていない人...さまざまな人に絵本をプレゼントしてみるのはいかがでしょうか。

絵本には人との距離を近づけてくれる力があります。

鎌田實さんの人気連載「もっともっとおもしろく生きようよ」その他の記事はこちら

 

<教えてくれた人>

鎌田 實(かまた・みのる)さん

1948 年生まれ。医師、作家、諏訪中央病院名誉院長。チェルノブイリ、イラクへの医療支援、東日本大震災被災地支援などに取り組んでいる。『だまされない』(KADOKAWA)など著書多数。

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この記事は『毎日が発見』2020年1月号に掲載の情報です。

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