劇作家、演出家、女優、執筆者など、いくつもの顔を持つ渡辺えりさん。2019年12月、毎日新聞の連載「人生相談」を一冊にまとめた『渡辺えりの人生相談』が書籍化され、相談者に本気で寄り添う姿勢が話題となっています。
「誰かのために行動するようになると、自然と若返るもの。ニコニコしているとみんな幸せになるから、笑顔って大切」という渡辺さん
構想20年、女性の力を結集した芝居が実現
―あまり演劇を観たことがないという人に、おすすめの楽しみ方を教えてください。
まず食わず嫌いせずに観てほしいです。
それから、自分がどんなものが好きかによって、作品を選ぶといいでしょう。
例えば、間近で人の熱気を感じたいならば小劇場がおすすめです。
ただ、どこもいすが硬いので、体の具合が悪かったり、長時間同じ姿勢でいることがつらい場合は演舞場の方が快適ですね。
――2020年も精力的に活動されることと思います。どのような作品を予定していますか?
9月に(※)自分の作品では初めて、女性の力を結集して作る芝居を行います。
20年間、温めていた企画です。
『鯨よ!私の手に乗れ』という芝居の再演なんですが、ぜひ、女性のみなさんに観に来てほしいです。
男性社会の日本で、女性作家の力を結集して、女性の人生をテーマにした芝居を続けざまにやるというのが20年前に考えた企画だったのです。
ところが、当時一緒にやろうと誓った劇作家の如月小春さんと岸田理生さんのお二人が、約束をした矢先に意思半ばで亡くなってしまって、もう自分がその遺志を継ぐしかないと考えていました。
そして20年たって、来年65歳(※)なので、いまやるしかないと、自分でお金を集めて本多劇場でできることになりました。
女性の劇作家たちに声をかけまして、いろいろな作品を持ち寄ってやるんです。
劇作家の長田育恵さんは、童謡詩人金子みすゞを描く作品を。
瀬戸山美咲さんは、女性の生き方にテーマをあてた新作を用意しています。
ぜひ、目の前で観て、力を得てほしいですね。春には、一般の高齢女性が対象のオーディション(オーディションは、『オフィス3○○』ホームページで告知します。興味のある人は、ぜひ参加を!)も行います。
一般の方にも芝居に出てもらいますよ。
※いずれも取材時の2019年12月時点の情報です
――オーディション参加はどなたでもできるのでしょうか?
もちろんです。準備が整いましたらホームぺージで告知しますので、ぜひ参加ください。
介護施設を舞台にした芝居になるので、そこに登場するおばあさんの役を演じる方を探しています。
オーディションでは、台詞と歌に挑戦していただきます。
芝居ではミュージカルシーンがありますから、そこで思い切り歌っていただきたいですね。
――70歳を超えたら映画や演劇を観て暮らすと著書に書かれていますが、いま、やってみたいことはありますか?
外国語の教室に通ってみたいですね。
英語とフランス語、スペイン語を話せるようになりたいです。
できれば中国語も。
話せるようになったら、海外で芝居をやってみたいですね。
でも全部というのは、さすがに欲張り過ぎますね(笑)。
芝居を観ることで自分を俯瞰できる
――多忙なだけに、健康管理は大変かと思います。何か気を付けていることはありますか?
健康法というわけではないですが、とにかくよく笑って、泣いて、感情を出すこと。
そのためにも好きな音楽を聴いたり、芝居を観たりしています。
芝居を観ると、人生の縮図がそこにあって「ああ、自分はこうだったかも」と、冷静に考えることができます。
そういった時間は、とても大事ですね。
とにかく笑う、感動する、そして泣く。
泣くことも体にいいらしいのですよ。
(心を)閉ざすことがいちばん悪いことでしょうね。
――心を整えるための習慣のようなものはありますか?
沢田研二さんの歌はよく聴きます。
寝る前は、「夜明け前のセレナーデ」のようなロマンチックな曲を。
起きたときは「憂鬱なパルス」や「さよならを待たせて」など、ロック調のものが多いです。
子どもの頃から聴いているので、落ち着くんですよね。
沢田さんのあの歌声に、たくさん救われてきました。
――1月に65歳を迎えられます。どんな一年にしていきたいと考えていますか?
いろいろな場面で女性が活躍できる年にしたいですね。
それから、いま介護をしている人や、母子家庭の人など、弱い立場の人がちゃんとごはんを食べられる温かい世の中にしていきたいです。
そのために、おばさんたちにできることがあると思います。
わたしたちおばさんのパワーで、あったかい、情のある世の中に変えていきましょうね。
取材・文/笑(寳田真由美) 撮影/齋藤ジン