ビートたけしに弟子入りし、漫才コンビ「浅草キッド」を結成した水道橋博士。過激な笑いを生み出し続けた博士も、もう54歳。今、健康についてどう考えているのか伺いました。
前編「水道橋博士が語る54歳の芸人像と死生観(1)全てを超越していちばん大事なのは健康」はこちら。
『ドクターG』の収録のために心がけていること
水道橋博士は現在、現役の若手医師が症例を見て、その病名を討論を通して探っていく『総合診療医ドクターG』(NHK総合)の司会を担当しています。そんな医療現場を知る博士が注目していることは?
―― 『ドクターG』をやられていて感じることはありますか?
博士 この番組をやっている自分が収録中に体調が悪いということは、プロとして失格だと思っちゃう。収録は長丁場で8時間くらいかかる。4時間の映画観るのだってツラいじゃない? だから色々シミュレーションして、最近は前日からお酒もぬくし、朝からトレーニングもして、収録では一切食事をしないっていうのをやってる。それは炭水化物を入れると眠くなるから。あの収録は自分の中の健康のバロメーターになってますね。8年もやってるから、病気はなぜ起こって、誰かに突然襲う病気はこうで、加齢とともに来る病気は何かとか、大体のことは理論的にはもうわかってくるし、その意識は常に持ってます。
お年寄りがよく転ぶのは「ビタミンB12欠乏症」のせい!?
―― 番組を通して印象的だったことはありますか?
博士 この間、収録したものは、あるお年寄りがよく転んでしまうっていう症状を取り上げてたんです。老人っていうのは足の歩幅が小さくなって、歩き方がよちよちになって転びやすい。だから、年相応なことじゃないですかっていう話をしていくんだけど、結論を言うと「ビタミンB12欠乏症」だっていうです。その治療方法は、ビタミンB12を摂取することだけなの。あまりにもシンプルすぎる(笑)。先生、こんなあたり前のことでいいんですかって聞いたら、当たり前のことが今は行われていないから、これを言いたいんですって。昔、インスタントラーメンブームが起きた時に若者の栄養不足が危惧されて、ビタミンB1を麺に練り込むことでそれを解消していったんだけど、ビタミンB12に対してもなぜそれをやらないんだっていうのがその先生の見解なの。老人の40%がビタミンB12欠乏症で、そうならないためにはビタミンB12の錠剤を買って、それを飲めばいいんですよって。飲めばいいことなんで簡単でしょ? それとプラシーボって現象も実に興味深くて、健康を意識したり、治りたいと思ったら、ニセ薬を飲んでも、半数近く効果があるの。それは大事なことだね。
―― 確かに!
やってるのとやってないのとでは、やってる方がいい
博士 いま東京新聞と朝日新聞を取ってるんだけど、広告ってほぼ高齢者の健康グッズの通販の広告じゃん。カミさんにもおすすめして無理やり買うのね。で、「どんだけ私を高齢者扱いしてるの?」って言われるんだけど(笑)。ちょっとでもいいと思ったら全部買ってる。つい最近もストレッチポールを買った。ものすごい微妙な振動がするの。
―― 続くんですか?
博士 大まかにブームがあって、それは続いたり続かなかったりするんだけど、少しの期間でも、流行にかぶれてやってるのとやってないのとでは、やってる方がいいじゃんっていう考え方。例えば、
ビリーズブート式キャンプだって、今、誰もやってないけど、ブームの時にやれば良いんだよ。結果的にマイナスじゃないもの。
―― なんでそんなにストイックになれるんですか?
博士 なんか証明しないと気がすまないの。哲学上、こう言ってるけど、身をもって証明してないじゃんっていうのが俺の中でいちばん気になるところ。偉そうに天下国家や他人について口出しする人が、年相応の貫禄ではない感じで、不健康に太っていると「自分の体すら管理できてないのに、何故、他人のことをとやかく言えるんだろう?」って見ていてガッカリするんだよ。机上の空論や観念はいいよ、生き方においてそれを体現みせろっていうのが芸人じゃない?
後編「水道橋博士が語る54歳の芸人像と死生観(3)」はこちら。
取材・文/戸部田 誠 撮影/奥西淳二
水道橋博士(すいどうばしはかせ)
1962年生まれ、岡山県出身。ビートたけしに憧れ上京、86年に弟子入りし、浅草フランス座での住み込み生活を経て、87年に玉袋筋太郎と「浅草キッド」を結成。テレビ、ラジオ、漫才の他、文筆家としても活躍。『週刊文春』に連載コラム執筆中。
KADOKAWA (1,200円 + 税)
『広報東京都』で2009~2014年に連載されたエッセイ「はかせのはなし」を全面改稿。さらに、書き下ろしの家族とのエピソードなどを加えた一冊です。