俳優も憧れるクリアな声の秘密
――ところで、段田さんのお声は自然に発声されているのに遠くまでクリアに届きますね。
ありがとうございます。
昔、新劇俳優になりたいと思って京都の労演事務所でバイトしていたときに、俳優座の若手の方がいらして、声がよく響くんです。
かっこいいなと思って意識するようになりました。
自分の内側で、額に音を当てるように声を出すといい、というのを教わったり、青年座の養成所にいた頃、代々木公園で声を出しながら研究したり。
声のいい俳優さんになりたいというのはずっとありましたね。
最近気付いたのですが、観客のことをオーディエンス(聴衆)と言いますよね。
あぁ、お芝居は聴くものなんだなと。
やはり声は大事だなと思います。
読者の皆さん世代も、嚥下にも影響してきますから、発声を意識するのは良いことだと思います。
だから訓練というわけではないですが、僕は閉所が苦手で、一度脳ドックをやったときに過呼吸みたいになりかけて、途中でやめようかと思ったんです。
でも、費用は高いしもったいない!と思って(笑)。
もう1回深呼吸してダメだったらボタンを押そうと思ったら、気持ちがすーっと落ちついてクリアできた経験があります。
呼吸を深くすることで、声も楽に出せますし。
俳優は台詞を言うとき、鼻から息を吸って、口から出すというのを最初に教わります。
口から吸って喋ると肩が上がって、喋るのが苦しくなりますし、聞きづらいんです。
腹筋を使って、鼻から吸っていわゆる腹式呼吸で話すようにすると、声が楽に出せて話しやすいですし、通りもいいと思います。
――現在、NHKの大河ドラマ「光る君ヘ」にも出演。序盤から権力闘争が激しい藤原兼家役を演じられています。
衣装は大変ですが、権力のある人の役なので、周りの皆が動いてくれて、気分は悪くないです(笑)。
関白になるような人物の雰囲気が出ているといいのですが。
兼家みたいな人はいまの価値観で見たら悪い人かもしれないですが、当時としては家を守っていくための行動ですから、悪い人ではないようにも思えます。
大石静さんの脚本はいつも人物の違う面も描かれるので、単なる悪い人ではない。
そこも、演じていて楽しいですね。
取材・文/多賀谷浩子 撮影/齋藤ジン ヘアメイク/藤原洋二(UM) スタイリスト/中川原寛(CaNN)