女優・渡辺えりさん「60歳を超えたら...他人のために頑張る」ススメ

劇作家、演出家、女優、執筆者など、いくつもの顔を持つ渡辺えりさん。2019年12月、毎日新聞の連載「人生相談」を一冊にまとめた『渡辺えりの人生相談』が書籍化され、相談者に本気で寄り添う姿勢が話題となっています。

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「とにかくよく笑い、泣き、感情を出す。それが元気の秘けつです。」

ストレスは受けて立つ。中途半端はダメですね

――ご自身が悩みを抱えたときは、どんな風に気分を落ち着かせるのでしょう?

落ち着かなくていいと思っているんです。

ストレスを感じたらそのまま感じる。

そして悩む、考える。

それでまた次に行く。

っていう風に、自分をもっていくようにしています。

泣いたり、笑ったり。

時には、くそーって思うこともあったり(笑)。

毎日、違う感情でいた方が体にいい気がするのです。

だから、落ち込むときはどーんと落ち込みますね。

そのうち時間がたって、どこかに光が見えてくるはずなんですよ。

だけど、そこで中途半端にしちゃうとまた同じように落ち込んでしまうのです。

ごまかしたことが後で返ってきちゃうんです。

徹底して一度落ち込まないと、ダメですね。

――落ち込む日々が長く続いてつらいという方もいらっしゃいます。そういった方に、おすすめしたいことはありますか?

つらい思いを抱えて、どうしたらよいか分からないときのために、絵画や演劇、音楽などの芸術があるのでしょう。

何かを集中して観たり、聴いたりしているその一瞬は、つらいことも忘れられます。

そして、自然と心が癒やされます。

そのうちにきっと、悩みを乗り越えるカギが見つかります。

これまで芸術とは無縁だったという人も、特別なことだと思わず、絵画や演劇を観たり、音楽を聴いたり、どんどん触れてみてほしいですね。

芸術はそのためにあるんです。

他人のために行動を。笑顔が幸せを呼びます

読者のお悩みに、年々、世界が小さくなる気がするという声があるのですが、何かアドバイスをいただけますか? 

年を取ると、「顔がたるんできた」「世界が小さくなった気がする」など、自分のちょっとしたことが気になるようになります。

しかし60歳超えたら、他人のために頑張りたいですよね。

他人のために何か行動するようになると、自然と体を動かすようになり、筋肉が鍛えられて体力がつきます。

すると、いつの間にか気持ちも明るくなって、物事が良い方に、良い方にと循環するようになっていきます。

当然、見た目も若返るものです。

ところが、自分のことばかりに気持ちを向けていると、どんどん暗くなります。

若い頃に比べてお尻は下がって、シワもできて。

鏡に映る姿を見るだけで落ち込みます。

だけどそんな自分を許して、他人のために活動すれば笑顔が増えるでしょう。

ニコニコしていれば周りの人も幸せになるから、笑顔でいるってとっても大切ですよ。

誰かのために活動していてうれしくなるのはどんなときですか? また、相手の反応を残念に感じることはありますか?

「ありがとう」って言われたらそれだけでうれしくて、気分が上がりますね。

何にも反応がないと「もうこの人のためにやるのはよそう」と思うこともあります。

でも、そういうときでも「この人は不器用だから、感謝したいんだけど言えないんだろう」と考えて、とにかく笑顔で何か一つやる。

そしたら、口角が上がって顔のシワも目立たなくなります。

本当ですよ。

取材・文/笑(寳田真由美) 撮影/齋藤ジン

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渡辺えり(わたなべ・えり)さん

1955年、山形県生まれ。78年から「劇団3〇〇(さんじゅうまる)」を約20年間主宰。現在も、企画集団「オフィス3〇〇」を母体に活発な演劇活動を展開中。テレビドラマ、映画、音楽活動、執筆など、活動は多岐にわたる。2018年からは、日本劇作家協会会長としても活動中。

81+m0IT0GeL.jpg『渡辺えりの人生相談 荒波を乗り越える50の知恵』

渡辺えり/毎日新聞出版)

舞台や映像、活字などの分野で幅広く活躍する渡辺えりさん。毎日新聞連載中の「人生相談」は、「相談者への寄り添い方が半端ない」「持論、見識が鋭い」と大評判。厳選された50編を収録した待望の一冊です。各章末には感涙必至のエッセイも!

この記事は『毎日が発見』2020年4月号に掲載の情報です。
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