ある日、頭や背中、わき腹などの、体の左右どちらかの皮膚にピリピリした痛みを感じた後、赤い班や小水疱(水ぶくれ)が出てきた...急にそんな症状が出現したら戸惑うものです。実は、これが帯状疱疹(たいじょうほうしん)の典型的な症状。加齢や過労、病気、旅行に出かけて疲れがたまった時などに、子どもの頃にかかった水ぼうそうのウイルスが再び活動し始めて起きる病気です。帯状疱疹の特徴や治療法、後遺症、他の病気との見分け方などについて、宇野皮膚科医院院長の漆畑先生にお話を聞きました。
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痛みをがまんさせない環境が、症状の悪化や後遺症を防ぐ
家族が帯状疱疹になってしまったら、どのように対応したらいいでしょうか。帯状疱疹では家族がいる場合、家族の協力が大きな意味を持ちます。
帯状疱疹は特に高齢者に発症しやすい病気です。高齢者では症状も強く、後遺症の疱疹後神経痛も残りやすくなります。家族が帯状疱疹になった場合、きちんと通院して治療薬を指示通りに服用できようサポートするのはもちろんのこと、入浴のときにゆっくり湯船に浸かり、十分な睡眠がとれるよう生活環境を見直すことも大切です。
帯状疱疹は基本的に痛みと皮膚症状から症状が始まりますが、そのあとの経過は個人差があります。早く治療を受けて症状が軽くすむ人もいれば、その一方で、どんどん痛みが強くなる人や、皮膚の状態が悪化してしまう人もいます。患者は肉体的にも精神的にもつらい状態が続くことがあり、そんなときに精神的な支えになるのは家族です。
特に、帯状疱疹の症状の一つである「痛み」の程度はさまざまで、人によってはがまんできないほどの強い痛みを感じることがあります。日本人はがまん強いことが美徳とされる風潮がありますが、帯状疱疹に関しては痛みをがまんしてはいけないのです。なぜならば、帯状疱疹の痛みが耐え難いほど強い場合、疱疹後神経痛を起こしやすくなるからです。
家族は帯状疱疹に痛みがともなうことを理解し、「痛みをがまんせずに口に出してもいい」という雰囲気を作りましょう。また、痛みがつらそうな場合には病院に付き添って、医師に相談したり、痛みを和らげる薬を出してもらうよう一緒に医師に相談したりすることで、患者本人も心強く感じるでしょう。
「家族の心がけとして重要なのは、患者の痛みの声に耳を傾け、そのつらさに寄り添うことです。皮膚の状態は目で見ることで理解できますが、痛みの程度は本人にしかわからないものです。それでも痛みに対して『痛くてつらいよね』『大変だね』と共感することが、病気へのストレスをやわらげて、痛みを軽減することにつながります」と漆畑先生。
○痛みが緩和する因子
・鎮痛薬、抗うつ薬など
・十分な睡眠、休息
・ストレスの減少
・周囲の人の理解や共感
○痛みが増強する因子
・疲労、不眠
・不安、うつ状態
・悲しみ、怒り
・周囲の人の無理解や孤独感
痛みが残ってしまう後遺症「疱疹後神経痛」では、痛みがさらに強くなることは前の記事(激しい痛みが後遺症として残る「疱疹後神経痛」/帯状疱疹)でも触れました。目に見えない慢性的な痛みが続くなかで、患者は精神的にもかなりつらい状態になるものです。痛みの感じ方はその人の心理状態にも左右されるといわれるので、患者の身近にいる家族や周囲の人は、常に痛みに対して理解を示し、親身になって患者の話に耳を傾けるようにします。それが患者の心を安定させて、痛みを和らげる可能性を高めるのです。
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取材・文/松澤ゆかり