激しい痛みが後遺症として残る「疱疹後神経痛」/帯状疱疹

pixta_38747114_S.jpgある日、頭や背中、わき腹などの、体の左右どちらかの皮膚にピリピリした痛みを感じた後、赤い班や小水疱(水ぶくれ)が出てきた...急にそんな症状が出現したら戸惑うものです。実は、これが帯状疱疹(たいじょうほうしん)の典型的な症状。加齢や過労、病気、旅行に出かけて疲れがたまった時などに、子どもの頃にかかった水ぼうそうのウイルスが再び活動し始めて起きる病気です。帯状疱疹の特徴や治療法、後遺症、他の病気との見分け方などについて、宇野皮膚科医院院長の漆畑先生にお話を聞きました。

前の記事「帯状疱疹に「かからない人」と「何度も再発する人」の違いとは?/帯状疱疹(6)」はこちら。

 

帯状疱疹が治ったあとの「疱疹後神経痛」に注意

帯状疱疹は、通常1~3週間で症状が快方に向かいます。しかし、帯状疱疹が出た場所や年齢によっては合併症が現れたり、後遺症として残ったりすることがあるのです。代表的な帯状疱疹の後遺症には、「疱疹後神経痛」や「ラムゼー・ハント症候群」などがあります。ここでは痛みが残る後遺症「疱疹後神経痛」について説明します。

帯状疱疹は、通常1カ月ほどで「急性期」の皮膚症状である疱疹がおさまり、次第に急性期の痛みも消えていきます。しかし、その後も「慢性痛」として「疱疹後神経痛」が残ることがあります。どこまでが急性期の痛みで、どこからが慢性期の疱疹後神経痛なのかを厳密に線引きすることは難しいのですが、発症から3カ月以上経っても痛みが続く場合は、明らかな「疱疹後神経痛」といえます。

疱疹後神経痛は神経が傷ついて変性したことで起こる痛みである「神経障害性疼痛」と、帯状疱疹の辛い痛みの記憶がよみがえり再現された痛み、つまり「心因性疼痛」が複雑に絡み合って起こると考えられています。人によって痛みの感じ方は異なりますが、さまざまな痛みのつらさを訴える人が多いです。殊に高齢者や糖尿病がある人では、神経が脆くなっているために破壊されやすく、疱疹後神経痛が残りやすい傾向があります。

疱疹後神経痛の患者の中には、自分の痛みを「服が肌に触れただけなのに飛び上がるように痛い」「風に吹かれただけで激しく痛む」「四六時中、体に電気が走るような強い痛みが続く」などと訴える方もいます。疱疹後神経痛は、ときには数年以上続くこともあります。つらい痛みのために、本人のQOL(クオリティ オブ ライフ、生活の質)が低下することも少なくありません。

このようなつらい疱疹後神経痛を残さないように、急性期から疱疹後神経痛を常に念頭に入れながら治療を行っていきますが、もし痛みが残ってしまった場合には一人で悩まず皮膚科やペインクリニックなどを受診してください。


「疱疹後神経痛の痛みに効果があるといわれているのがアミノトリプチン(トリプタノール)を始めとした三環系(注1)の抗うつ薬です。アミノトリプチンは数年前から疱疹後神経痛の治療に使用する場合も、健康保険が適用されるようになりました。ほかには鎮痛補助薬としてプレガバリン(リリカ)も使われています。また、弱オピオイド(医療用麻薬)を使用する場合もありますが、吐き気や便秘に悩まされる場合があるので注意が必要です。ほかの薬も正しく使用しないと副作用などが起きることがあります。いずれも、医師による薬の選択や量のこまめな調整が大事です」と漆畑先生。

注1:三環系抗うつ剤/抗うつ剤の1種。脳内で分泌された神経伝達物質のノルアドレナリンやセロトニンなどが再び神経細胞に取り込まれる働きを抑制することで、脳内のこれらの物質の量を増加させる効果があります。


疱疹後神経痛は高齢の患者が多いため、治療中に配偶者や兄弟姉妹などの死に直面して精神的なダメージを受けたり、がんを発症して免疫力が著しく低下したりすることがあります。せっかくよくなりかけていた症状が悪化して、痛みが再発することも。そうならないためにも、信頼できる医師を見つけて精神面でも支えてもらえるような治療が望ましいといえます。また、何かに熱中している間は痛みが抑制されることが分かっています。仕事や趣味などを積極的に行うのもよいでしょう。

もう一つ大事なのは家族のサポートです。「本当に痛いの?」という家族の一言で傷つく患者も少なくありません。疱疹後神経痛がどれほど辛く痛いものか、理解するのは難しいかもしれませんが、「大変だね」と家族が寄り添うことがぜひとも必要です。

 

○疱疹後神経痛を克服するために大切なこと
・信頼できる主治医を見つける。
・完治にこだわらないようにし、痛みとうまくつき合うように意識する。
・仕事や好きな趣味に熱中する時間を作る。
・家族や周囲の人は、病気や痛みに対して理解するように努める。

 

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関連記事:「家族は帯状疱疹の痛みを理解し、完治まで精神面で支えることが大事/帯状疱疹(16)」

取材・文/松澤ゆかり

<教えてくれた人>
漆畑 修(うるしばた・おさむ)先生

東邦大学医学部卒業後、東邦大学医学部大橋病院皮膚科部長、東邦大学医学部客員教授などを経て2007年に宇野皮膚科医院(東京都世田谷区北沢)院長に就任。医学博士、皮膚科専門医、抗加齢(アンチエイジング)医学専門医、温泉療法医、サプリメントアドバイザー。著書に『痛みを残さない帯状疱疹 再発させない単純ヘルペス』(メディカルトリビューン)、『帯状疱疹と単純ヘルペスの診療』(メディカルレビュー社)などがある。

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