抜け毛は自分とは関係ないと思い、特に気にせず生活していませんか? そんな方は要注意! 髪は抜け始める前からケアすることが重要なのです。特別なことは必要ありません。衣食住を中心とした生活習慣を根本から見直すだけで、数年後の未来の自分の髪に先行投資することができます。最新の科学的根拠をもとに知識を深め、薄毛にならないための生活を今から始めてみませんか。
抜け毛にまつわるさまざまな原因や治療法、ケアなどを薄毛治療の第一人者である岡嶋研二先生に伺います。
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冷えと睡眠不足は髪の大敵であることが判明しています
ここでいう衣食住とはつまり、衣=体温調節を司るもの、食=栄養、住=生活習慣を含めた住環境の意味です。まず、「食」についてですが、一般的にタンパク質やアミノ酸が減ると、抜け毛が増えるといわれることが多いです。現代の日本において、栄養失調になるほどの栄養不足はあまり考えられませんが、タンパク質やアミノ酸などは1日の必須摂取量に足りない場合が多いといわれています。
そして次に気をつけなければならないのが、冷えです。薄着をすることはもちろん、過度のダイエットが原因で体が冷えてしまうと血流が滞り抜け毛が増えてしまいます。
さらに、睡眠不足も大きな問題です。人の身体の成長に不可欠であり、アミノ酸が約70個連なった化合物である「IGF-1」は、睡眠不足によって分泌が減ってしまいます。すると、抜け毛が増えてしまうのです。
つまり、薄毛対策として衣食住の全てを正すことが大切といえるのです。
しょうがや唐辛子、大豆製品を食べて運動を行いましょう
対策として、体を温める効果のあるしょうが、そして痛覚を強く刺激してIGF-1を増やす働きのあるカプサイシンが含まれる唐辛子を摂取するのがおすすめです。さらに、IGF-1を増やすことで、女性ホルモンと似た働きをするイソフラボンを含む大豆製品は必須です。たとえば豆腐なら1日1/2丁、納豆なら1日1パックが目安です。
また、胃を刺激する炭酸もおすすめです。糖分の入っていない炭酸水を飲むといいでしょう。
運動については、1日20分程度のウォーキングでも効果があります。毎日続けることで、筋力がついて血流が上がります。さらに運動の嬉しい効果として自律神経も整います。自律神経が整うと、睡眠の質が上がるといわれています。1日6時間以上の質の高い睡眠をとるように心がけましょう。
ちなみに、自律神経のリズムは太陽時間で決まっているので、昼夜逆転の生活はおすすめできません。
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取材・文/荒井さやか
岡嶋研二(おかじま・けんじ)先生
1978年、熊本大学医学部卒業。1982年、熊本大学大学院医学研究科修了(医学博士取得)。日本学術振興会特定国派遣研究員としてウィーン大学医学部への留学、熊本大学医学部助教授、そして名古屋市立大学大学院医学研究科教授を経て、2012年4月、名古屋Kクリニックを開院。血液学を中心に研究を進め、育毛作用を有するインスリン様成長因子-1(IGF-1)を増やす新たな方法を見いだし、育毛効果を発揮する治療法の開発へと応用している。