病気やけがをしたとき、それに関する用語(病名・症状など)の意味をそもそも知らなかった、なんてことはありませんか? また、時代の流れとともに「ADHD」「ノロウィルス」など新しい用語もどんどん現れています。
書籍『やさしい家庭の医学 早わかり事典』で、病気や健康分野の正しい知識を身につけ、いざというときに役立てましょう。
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赤血球やヘモグロビンの量が少ない状態
「貧血」
●レバーや小松菜を多く食べる
「貧血」とは、赤血球またはヘモグロビン(血色素)の量が正常より少なくなった状態のことです。通常は、ヘモグロビン濃度が正常値を下回った場合を貧血といいます。
日本医師会の発表によれば、男性の場合は13.5~17g /dl、女性の場合は11.5~15g /dlが正常値となっていますので、それ以下の場合が貧血ということになります。
血液の働きのうち、もっとも大切なものは「酸素を全身に運ぶ」ということ。この働きを司(つかさど)るのが血液中の赤血球にあるヘモグロビンですので、ヘモグロビンの濃度が低くなり、酸素が正常に全身へ運ばれなくなると、さまざまな組織が酸素不足に陥(おちい)ってしまい、支障をきたすようになるわけです。
症状としては、めまいや動悸(どうき)、頭痛、息切れ、立ちくらみ、顔面蒼白(そうはく)などが見られます。貧血によって動悸(どうき)や息切れが生じるのは、不足した赤血球を早く体にめぐらせることによって酸素不足を補おうと体が反応するためといえます。
貧血はいくつかの種類に分けられますが、もっとも多いのが鉄欠乏性貧血です。つまり、鉄が不足することによってヘモグロビンがつくられなくなり、貧血になるというものです。過度のダイエットや食生活の乱れなどにより鉄が不足します。
女性の場合、妊娠・授乳期は胎児の成長や母乳をつくるときに多くの鉄を必要としますので、それによっても鉄が不足することになります。月経によって多くの血が失われることも、女性にかぎった原因になります。
鉄欠乏性貧血を改善する場合、もっともよいのは食事療法によるものです。1日3食を規則正しく摂取し、レバーや小松菜、ひじき、納豆など、鉄分を多く含む物を食べることを心掛けましょう。
一方で、男性や、閉経後の女性が鉄欠乏性貧血になった場合、疑わなければならないのは胃がんや大腸がん、胃潰瘍(かいよう)、十二指腸潰瘍などの病気です。胃や腸などの消化管からゆっくりと出血している可能性が認められるからです。この場合は、早めに医師による診察を受ける必要があるでしょう。
そのほか、再生不良性貧血(血液をつくる骨髄の働きが低下して起こる貧血)や巨赤芽球(きょせきがきゅう)性貧血(骨髄で赤血球がつくられるときに必要なビタミンB12・葉酸(ようさん)が不足して、赤血球が減少するために起こる貧血)、溶血性貧血(何らかの原因により、赤血球が通常の寿命よりも短く破壊されて生じる貧血)などがあります。
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中原 英臣(なかはら・ひでおみ)
1945年、東京生まれ。医学博士。ニューヨーク科学アカデミー会員。東京慈恵会医科大学卒業。77 年から2 年間、アメリカ(セントルイス)のワシントン大学にてバイオ研究に取り組む。その後、山梨医科大学助教授、山野美容芸術短期大学教授を経て、現在、新渡戸文化短期大学学長、早稲田大学講師。おもな著書に『ウイルス感染から身を守る方法』(河出書房新社)、『こんな健康法はおやめなさい』(PHP 研究所)、『テレビじゃ言えない健康話のウソ』(文藝春秋)などがある。
『やさしい家庭の医学 早わかり事典』
(中原英臣[監修]/KADOKAWA)
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