いつも元気で過ごすために運動や食事には気を遣っている。でも、その常識が間違っていたとしたら......。免疫学の権威である奥村康氏は、近年、誤った考え方によって、本来備わっているはずの免疫力を弱め、かえって健康を害している人が増えていると指摘します。では、真に健康になるにはどうすればいいのか。奥村氏の著書『ウソだらけの健康常識 「不良」長寿のすすめ (WAC BUNKO 268)』に学びましょう。
NK細胞が免疫力アップのカギ
「健康で暮らせるか、病気になりやすいかどうかを分けるのは、私たちの体の免疫力です」と奥村氏。中でもリンパ球の一つ、NK(ナチュラル・キラー)細胞が重要だといいます。
私たちの体の中では毎日約一兆個の細胞が新たにできますが、そのうち、できそこないの遺伝子を持つ突然変異を起こした細胞(異型細胞)が三千~五千個はできると言われています。それががん細胞です。
そのがん細胞が増殖しないようにしてくれるのが、NK細胞です。例えるならば町のお巡りさんのような存在で、体の中を常にパトロールしてくれているそう。他にもさまざまな病気の発症を防ぐ役割をしているといいます。健康を目指すには、免疫力を上げること、NK細胞を活性化させることが大切というわけです。
その"健康習慣"がNK活性を低下させていた!
加齢のほか、生活習慣やストレスなどの影響も受けやすいというNK細胞。一見体に良さそうなことが、実は免疫力を弱める要因となっているケースもあるといいます。
「コレステロール値は下げるほど健康にいい」は大間違い
動脈硬化を起こしやすくなるという心配から、コレステロール値が高いとよくないと思いがちですが、実はコレステロールはさまざまなホルモンの原料。不足するとNK活性が落ち、免疫力が低下して病気に対する抵抗力が弱くなったり、神経の伝達に障害が生じたりするといいます。コレステロール値が低いほどがんになる確率が高く、脳卒中など他の病気での死亡率も高いというデータもあるとか。「心臓さえ悪くなければ、総コレステロール値は三百mg/dlまでは心配ない」そうです。
菜食主義もダイエットも身体にいいとは限らない
たんぱく質はNK細胞を作るのに欠かせない栄養素だと奥村氏。体にいいからと野菜ばかりを食べていると、たんぱく質が不足してしまいます。魚や肉などの動物性たんぱく質もふくめ、バランスよく食べることが大切だそうです。
また、健康のためにダイエットをするのも、必ずしも正解ではないといいます。厚生労働省の研究班の調査で、40歳時点でBMI25以上30未満の太り気味の人は、BMI18.5未満の痩せた人よりも、6~7年長生きしたことが報告されているそう。日常生活に支障がない程度の太り方なら特段問題はなく、メタボを気にしてダイエットするのはかえって危険というわけです。
ストイックな運動は免疫力をぐんと低下させる
きつい運動をして強靭な身体になれば免疫力も上がるはずと思うかもしれませんが、これも大きな間違い。息が上がるほどの激しい運動をすると、NK細胞の力が一時的に上がるものの、運動をやめたとたん、今度は運動を始める前よりも低い値まで一気に下がってしまうそうです。
むしろ、ウォーキングやラジオ体操程度の運動の方が、免疫力を上げる効果が高いといいます。NK細胞はちょっとしたストレスでも働きが鈍ってしまうので、負担にならない程度に楽しく続けられるものがベストなのだとか。
健康に暮らすために不可欠な免疫力。いろいろ工夫しているのにどうも効果が感じられない......という方は、一度この免疫力に着目してみてはいかがでしょうか。
文/寺田きなこ
(奥村康/ワック)
血圧もコレステロールは高くて大丈夫、ダイエットや粗食は体に悪い、薬を飲むほど病気が治りにくい......。免疫学の権威が、世の中にあふれる"健康常識"のウソをズバリ指摘! 真に健康になるための方法を解説します。