足の指の間がかゆい、水ぶくれができる、皮がむける...これらはすべて水虫の症状です。日本人の5人に1人が水虫に感染しているといわれています。水虫の原因は「白癬菌(はくせんきん)」というカビ(真菌・しんきん)です。白癬菌による感染症を「白癬」といい、実はこのカビ、足だけでなく手や頭など体のいろいろなところに棲みつくことができるのです。
そんな白癬菌の性質や特徴、治療法や予防法を、白癬治療の第一人者、仲皮フ科クリニック院長の仲 弥先生に伺いました。
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外用薬なら、他の薬を服用している人にも治療が望めます
白癬菌が爪に感染した「爪白癬」は、おもに足白癬(足の水虫)をきちんと治療しなかったために、足の白癬菌が爪に感染して引き起こされたものです。
爪は外用薬が浸透しにくいため、治療には足白癬の角質増殖型と同じく経口抗真菌薬(内服薬)での治療が主流で、足白癬に比べて長い治療期間が必要です。
内服薬での治療方法は、「治療をあきらめていた人にも希望の光が。2018年4月、内服薬に新薬が登場!/白癬(8)」をお読みください。
内服薬での治療で難しいのは、2018年3月現在使われているテルビナフィン(商品名ラミシール)、イトラコナゾール(商品名イトリゾール)にはそれぞれ肝機能障害などの副作用や併用禁忌薬(併用を禁止されている薬)が多いという問題があることです。
特に爪水虫は高齢になるにつれて罹患率が上がります。そのため、持病で投薬を受けている方は内服薬での治療ができないことが多いのです。
では、爪水虫には内服薬しかないのかというと、そうではありません。
2014年に「エフィナコナゾール(商品名クレナフィン)」、2016年に「ルリコナゾール(商品名ルコナック)」という、爪白癬専用の外用薬が発売になりました。内服薬を使用できない患者さんにとっては画期的なものです。
この薬はどちらも1日に1回、爪全体に塗ります。それを約1年間続ける必要があります。
どんな症状の人にも効くのかというと、残念ながらそうではありません。爪白癬は進行するほど爪が厚くなって薬が浸透しづらくなるため、爪白癬専用の外用薬でも効果が期待できるのは初期症状の方になります。
治療の選択肢は増えましたが、爪白癬は放置せずに初期の段階で治療することが望ましいのです。進行した爪白癬の患者さんで内服薬の治療ができない場合は、こうした外用薬を他の爪に感染させない、家族に感染させないための予防として塗ることをおすすめします。
※商品名はすべて先発薬のものです。
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取材・文/ほなみかおり
慶應義塾大学医学部卒業後、慶應義塾大学医学部皮膚科医長、同・皮膚科専任講師を経て、1996年に仲皮フ科クリニック(埼玉県川越市)を開業。真菌のエキスパートとしてメディアに多数出演。埼玉県皮膚科医会会長、日本臨床皮膚科医会参与(前副会長)、日本皮膚科学会代議員、埼玉県皮膚科治療学会理事、日本医真菌学会評議員、日本皮膚科学会認定専門医。