年を重ねるにつれ、誰もが感じるのが視力の衰え。いわゆる「老眼」ですが、これは加齢によって目の中の奥の水晶体が老化することから発症するもので、45歳前後を迎えるころから、ならない人はいない症状です。その仕組みや最新の医療技術、また、老眼になってからの生活を少しでも快適に送る方法などを、みなとみらいアイクリニック主任執刀医でクイーンズアイクリニック院長の荒井宏幸先生にお聞きしました。
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加齢によっておこる老眼は紫外線が大敵!
老眼は加齢によって目の中の奥の水晶体が劣化する症状で、誰もが発症するものです。年を取ると肌が衰えたりするのと同じく、きわめて自然の原理なので、その症状を止めたり、改善させたりすることは残念ながらできません。ですが、目を長生きさせる方法はあります。
●紫外線を避ける
加齢の大きな一因と考えられているのが、活性酸素です。活性酸素は目の細胞も酸化させ、変性させてしまいますが、目においてその活性酸素を増やす要因となるのが、紫外線です。紫外線を多く浴びた目の水晶体は柔軟性が失われ、硬くなり、やがて白濁して黄ばんでいきます。紫外線を防ぐために、外出するときは偏光サングラスを使うといいでしょう。紫外線と目に有害な雑光をカットしてくれる偏光膜がレンズに搭載されていて、視界もよくなります。
●老眼鏡に頼りすぎない
40歳を越えて初めて老眼鏡を買うと、感動するくらいよく見えます。だからといって、一日中かけ続けるのはやめましょう。ずっと使っていると、水晶体の厚みを変えてピントを調節する目の中の奥の筋肉「毛様体筋(もうようたいきん)」にさぼりぐせがついてしまいます。毛様体筋は筋肉なので、特に老眼の初期にはときどき使って鍛えておくことも必要なのです。裸眼で見られるものは、少し頑張って見る習慣をつけましょう。
ただし、無理して行うと眼精疲労になってしまうので、長時間手元で作業するときや、夜や暗い場所では無理せずに老眼鏡を使うなど、バランスをとりながら上手に老眼鏡を使うことが大切です。
また、医学的な調査報告としては、たばこを吸う人のほうが早く老眼になりやすい、というデータもあります。たばこを吸っている人は、禁煙に励むのもいいと思います。
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取材・文/岡田知子(BLOOM)
荒井宏幸(あらい・ひろゆき)先生
みなとみらいアイクリニック主任執刀医、クイーンズアイクリニック院長、防衛医科大学校非常勤講師。1990年、防衛医科大学校卒業。近視矯正手術、白内障手術を中心に眼科手術医療を専門とする。米国でレーシック手術を学び、国内に導入した実績から、現在は眼科医に対する手術指導、講演も行っている。著書に『「よく見える目」をあきらめない 遠視・近視・白内障の最新医療』(講談社)、『目は治ります。』『老眼は治ります。』(共にバジリコ)ほか。