年を重ねるにつれ、誰もが感じるのが視力の衰え。いわゆる「老眼」ですが、これは加齢によって目の中の奥の水晶体が老化することから発症するもので、45歳前後を迎えるころから、ならない人はいない症状です。その仕組みや最新の医療技術、また、老眼になってからの生活を少しでも快適に送る方法などを、みなとみらいアイクリニック主任執刀医でクイーンズアイクリニック院長の荒井宏幸先生にお聞きしました。
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目に重要な栄養は体内で作れないものも
自分で手軽にできる目のメンテナンスとしては、やはり毎日の食事に気をつけることです。目に必要な栄養素や色素は体内で合成できないものも多いので、外からしっかり摂ることが重要です。自分の生活スタイルや食事の好みなどによって、足りない栄養素は食事の改善で補うほか、サプリメントで補給するのもいいでしょう。
サプリメントに関しては賛否両論がありますが、目のために必要な栄養素が足りない状態で過ごすよりは、サプリメントできちんと摂るほうがいいと考えています。
●ビタミンC
目の老化の大敵とされる紫外線対策のために毎日摂ったほうがいい栄養素。目の水晶体はビタミンCの抗酸化力を助けとしてレンズの透明性を保っています。「水晶体はビタミンCの塊」と言ってもいいくらいなので、しっかり摂りましょう。
●ルテイン
「ルテイン」は黄色い脂溶性の天然色素で、カロテノイドという抗酸化物質の一種。紫外線やブルーライトなどの青色光を吸収する働きがあり、光から目を守り、老化の要因となる活性酸素を除去する働きがあります。網膜の中心部に多く存在し、野菜を食べないと極端に摂取量が落ちる栄養素です。
多く含まれているのは、ケールやブロッコリー、かぼちゃ、にんじん、ほうれん草などの緑黄色野菜のほか、卵黄など。単体では体内に吸収されにくいので、血中に運ぶ役割を担う亜鉛やマグネシウムなどのミネラルと一緒に摂ることが大切です。
●ゼアキサンチン
網膜の中心部「黄斑部」の中心に多く存在するオレンジ色の脂溶性の色素。ルテインを摂取することにより体内で作られる抗酸化物質です。ルテインとセットで網膜に存在し、抗酸化力を発揮します。ほうれん草やブロッコリー、パパイヤ、クコの実などに多く含まれます。
●アスタキサンチン
強い抗酸化作用を持つカロテノイドの一種で、眼精疲労のほか、肌や血管の老化防止にもいいとされています。赤色の天然色素で、紅鮭やイクラ、鯛、えびやかにの殻などに多く含まれています。体の細胞を包む二重の細胞膜の表面、内部のどちらにも存在できる形状のため、細胞を守る力が強いとされています。
ただし、これらの栄養素を摂っても、一度硬くなった水晶体をいまの状態よりも弾力のある状態や透明な状態に戻すことはできません。ですが、老化が進む前に先に老化予防を心がけることで、老化の速度を緩やかにし、若さを保つことは期待できると考えられています。
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取材・文/岡田知子(BLOOM)
荒井宏幸(あらい・ひろゆき)先生
みなとみらいアイクリニック主任執刀医、クイーンズアイクリニック院長、防衛医科大学校非常勤講師。1990年、防衛医科大学校卒業。近視矯正手術、白内障手術を中心に眼科手術医療を専門とする。米国でレーシック手術を学び、国内に導入した実績から、現在は眼科医に対する手術指導、講演も行っている。著書に『「よく見える目」をあきらめない 遠視・近視・白内障の最新医療』(講談社)、『目は治ります。』『老眼は治ります。』(共にバジリコ)ほか。