人間関係の「ねばならない」からいったん離れる/枡野俊明

pixta_30090572_S.jpg職場、恋愛関係、夫婦関係、家族、友人...。毎日自分以外の誰かに振り回されていませんか?

"世界が尊敬する日本人100人"に選出された禅僧が「禅の庭づくりに人間関係のヒントがある」と説く本書『近すぎず、遠すぎず。他人に振り回されない人付き合いの極意』で、人間関係改善のためのヒントを学びましょう。今回はその第11回目です。

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前の記事「「沈黙」は、言葉で言い尽くせない思いを語ってくれる/枡野俊明(10)」はこちら。

 

あらゆる執着を捨て去る

相手を自分のものさしに当てはめて、相手がそこからはみ出してしまうことがあると、「なんで、こうしてくれないのだろう」とか「あんなふうに考えるのはおかしい」と、相手に違和感を感じることがあるでしょう。しかし、人はそれぞれものの見方、考え方が違いますし、価値観も違っていて当たり前なのです。その違いを認めたうえで、心を通わせていく。それが人間関係の基本となります。

たとえ話をしましょう。火と水と空気。どれもが人間の生活には必要なものです。しかし、火は水に近づけば消えてしまいます。水も空気にさらされ続ければ、いずれ乾いてしまうでしょう。また、火は空気がなければ燃え続けることはできません。
それぞれがそれぞれの役割を担っていて、それぞれに存在価値がある。しかし、その距離を間違えば、たがいがたがいを壊してしまいます。

どのような距離がいいのか。それがわかれば、いま抱えている人間関係の悩みはきっと解決できるでしょう。
あなたが暇を持て余し、気持ちにも余裕があるときであれば、ベタベタと甘えてくる人に対して、可愛らしい人だなと思えるかもしれません。しかし、忙しければ、煩わしく感じます。

人間関係は、どちらか一方が勝手にその距離を決めることはできません。相手がいるのですから、双方が擦り合わせながら、ふさわしい距離をとっていくもの。

ベタベタと甘えてくる人がいて、何か利用されるような感じを受けても、相手のことを好ましく思っていれば、受け容れるかもしれません。しかし、相手を好ましく思っていなければ警戒して、距離をとろうとするでしょう。相手が同じように接してきても、あなたの受けとり方次第で距離のとり方は変わってくるのです。

美容院に髪の毛を切りに行って、美容師さんととても近い距離になるのに嫌悪感を感じないこともあれば、なんとなくもっと離れてほしいと思うこともある。日常の人間関係でも同じです。

近づきたいと思う相手とうまくいっていなければ、あなたが変わるしかありません。あなたのなかに、何かはからいがないか? 相手を利用したいと思う下心がないか?ほんとうに相手のことだけを思い、行動しているか? まずは自分の心に問いかけてみることです。

はからいや思惑があったのでは、うまくいくわけがありません。そのような変えるべきところは変える。そのうえで、相手と接するという姿勢が大事です。
 

ともに活きるための距離感

距離をおきたいと思う相手がいるのであれば、背を向けて逃げるのではなく、きちんと対
峙(たいじ)するのも一つの方法です。私はいま優先して取り組みたいことがあるので、あなたと向き合っている余裕がない、ということを言葉できちんと伝えるのです。

職場が同じ、血縁関係にあるなど、自分の力でその距離がコントロールできないのであれば、あなたの内なる、相手への思いを変える努力をすることです。

人間関係のなかで、「ねばならない」と思い込んでいる、自分のものさしがあるかもしれません。夏になったら「お中元を贈らないと礼儀を欠いていると思われてしまう」、冬になれば「年賀状を出さないと失礼なやつだと思われてしまう」......。

しかし、「ねばならない」が気持ちの負担やストレスになっているのであれば、いったん、そのことから離れるのも一つの方法です。

苦手な相手との付き合いも難しいと感じるはずです。しかし、必ずしも克服する必要はないのではないでしょうか。充分に距離をとって接していれば、多少の煩わしさは残っても、悩みのタネにはならないと思います。

また、克服したいのであれば、相手に対する見方を変えることです。頑固だから嫌いと感じている人でも、見方を変えると、揺るがない意志の持ち主と受けとめられたりするものです。

火には火の、水には水の、空気には空気のよさがあります。火と水を離しておけば、火が消えることはありません。絶えず空気が流れ込むようにしておけば、炎が絶えることはありません。水にほどよく空気があたっていれば、水面にはそのときどきでしか味わえない水紋が描かれることでしょう。火を水に変えることはできませんが、その距離を変えることは可能です。そうすることで、あなたも相手も活かせます。

  

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枡野俊明(ますの・しゅんみょう)

1953年、神奈川県生まれ。曹洞宗徳雄山建功寺住職、多摩美術大学環境デザイン学科教授、庭園デザイナー。大学卒業後、大本山總持寺で修行。禅の思想と日本の伝統文化に根ざした「禅の庭」の創作活動を行い、国内外から高い評価を得る。2006年「ニューズウィーク」誌日本版にて「世界が尊敬する日本人100人」にも選出される。主な著書に『禅シンプル生活のすすめ』、『心配事の9割は起こらない』(ともに三笠書房)、『怒らない 禅の作法』(河出書房)、『スター・ウォーズ禅の教え』(KADOKAWA)などがある

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『近すぎず、遠すぎず。』
(枡野俊明/KADOKAWA)


禅そのものは、目に見えない。その見えないものを形に置き換えたのが禅芸術であり、禅の庭もそのひとつである。同様に人間関係の距離感も目に見えない。だからこそ、禅の庭づくりに人間関係のヒントがある――「世界が尊敬する日本人100人」に選出された禅僧が教える、生きづらい世の中を身軽に泳ぎ抜くシンプル処世術。

この記事は『近すぎず、遠すぎず。他人に振り回されない人付き合いの極意』からの抜粋です

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