人間関係の妄想はゴミ箱へ。心に静けさを取り戻す/枡野俊明

pixta_10043484_S.jpg職場、恋愛関係、夫婦関係、家族、友人...。毎日自分以外の誰かに振り回されていませんか?

"世界が尊敬する日本人100人"に選出された禅僧が「禅の庭づくりに人間関係のヒントがある」と説く本書『近すぎず、遠すぎず。他人に振り回されない人付き合いの極意』で、人間関係改善のためのヒントを学びましょう。今回はその第12回目です。

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前の記事「自分の中の「ねばならない」からいったん離れる/枡野俊明(11)」はこちら。

 

心を乱す不安を大きくしない

すれ違いざまに笑われた気がした。知り合いが集まって、こちらを見て何か悪口をいっているように感じた。他人のSNSの書き込みを見て、自分のことを嘲笑(あざわら)っているように思った......。そんなふうに感じたことがある人もいるのではないでしょうか。

態度がよそよそしい、なんだか避けられている、自分だけ誘われなかった、話しかけても反応が悪いなど、相手から冷たくされていると感じて、もしかしたら嫌われているかもしれない、と不安になったことがある人もいるかもしれません。

自分が他人から嫌われているかもしれないと思っても、いたずらに不安を大きくするのではなく、まずは冷静に、いくつかのポイントをチェックしてみてください。

・何かほんとうに嫌われるようなことをしただろうか?
・相手の状態はどのような感じだろうか?
・自分の心の状態はどのようになっているのか?

たとえば、あなたが約束の時間に大幅に遅れてしまったのであれば、嫌われるようなことをしたのはあなたですから、原因ははっきりしています。借りたものを返していない、手が滑って相手のお気に入りの洋服を汚してしまった......。これらも同じでしょう。人は完璧ではありませんから、何かミスをして、相手に嫌われるようなことがあっても不思議はありません。

原因がはっきりしていれば、修復法もおのずからわかります。まず、誠意をもって謝り、その後の対応を真剣に考える。これで関係は良好なものに戻るはずです。原因が思い当たらない場合はどうでしょうか。

「なんで嫌われているかわからないが、なんとなく嫌われているような気がする」というのがそれです。こちらのほうが悩みは深そうです。原因がわからないだけに、「何か悪いことをしたかな?」「傷つけるようなことをいったかな?」と不安が募ってくるからです。修復のための具体的な行動がとれないまま、関係が疎遠になってしまうかもしれない。それもまた、不安の材料になります。

 

妄想はゴミ箱へ。心に平静さを

プライベートでも仕事の場面でも、また近所付き合いなどでも、その事実はないにもかかわらず、まるでそれが事実であるかのように思い込むことがあります。ほんとうは、誰もあなたのことを悪く思っていないのですが、もしかしたら嫌われているのかもしれない、とあなたは思い悩んでしまうわけです。

いわゆる妄想(もうぞう)(仏教では「もうぞう」と読みます)です。やっかいなことに、妄想は人を振り回すのです。「嫌われているかもしれない」といったん思い込むと、その不安は雪だるま式に大きくなります。不安が不安を呼ぶのです。妄想の歯止めが利かなくなると、心が健康でなくなっていく。心が平静さを失えば、相手にモヤモヤやイライラをぶつけることにもなるでしょう。妄想に振り回されている姿です。こうなると人間関係はギクシャクして、うまくいくはずがありません。

自分に非がないか一度、冷静に考えてみることは大切です。しかし、考えても心当たりがなかったら、それは「妄想」だときっぱり切り捨てたらいいのです。自分に非があるかどうかを相手に尋ねてみるのも一つの方法です。

「何か気に障ることをしてしまったのでしょうか?」
「何か傷つけるようなことをいってしまったのなら謝りたいのですが......」
そんなふうに、率直に相手に向き合えば、解決の糸口は見つかるはずです。手を拱(こまぬ)いていたら、大切な人とのつながりが切れてしまう可能性もあります。

ただし、不安でいっぱいになっている心では的確な判断ができません。根拠のない不安や妄想は捨て、少し時間をおいて、関係を修復する手立てを考えたらいかがでしょう。関係がうまくいかない原因が相手にある場合も、当然あります。

たとえば、昇進試験で自分は合格して、同僚は不合格だった。おたがいにほしかったものを自分はコツコツと貯金をして手に入れることができたのに、相手は手に入れることができなかった......。そのようなときに、相手がつっかかってくることもあるでしょう。羨望や嫉妬などで心に雲がかっていると、判断を間違え、いろいろなことが歪んで見えてしまうものです。

相手の心が歪んでいるのですから、ここは、雲が晴れるのを待つ以外はありません。人間関係に問題が生じると、心は搔き乱されるものです。しかし、乱れた心のままでは、正しい解決策は見いだせません。時間をかけてでも、心に静けさを取り戻してから、対応するようにしましょう。

 

次の記事「人間関係の「距離感」は禅の庭から学ぶことができる/枡野俊明(13)」はこちら。

枡野俊明(ますの・しゅんみょう)

1953年、神奈川県生まれ。曹洞宗徳雄山建功寺住職、多摩美術大学環境デザイン学科教授、庭園デザイナー。大学卒業後、大本山總持寺で修行。禅の思想と日本の伝統文化に根ざした「禅の庭」の創作活動を行い、国内外から高い評価を得る。2006年「ニューズウィーク」誌日本版にて「世界が尊敬する日本人100人」にも選出される。主な著書に『禅シンプル生活のすすめ』、『心配事の9割は起こらない』(ともに三笠書房)、『怒らない 禅の作法』(河出書房)、『スター・ウォーズ禅の教え』(KADOKAWA)などがある

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『近すぎず、遠すぎず。』
(枡野俊明/KADOKAWA)


禅そのものは、目に見えない。その見えないものを形に置き換えたのが禅芸術であり、禅の庭もそのひとつである。同様に人間関係の距離感も目に見えない。だからこそ、禅の庭づくりに人間関係のヒントがある――「世界が尊敬する日本人100人」に選出された禅僧が教える、生きづらい世の中を身軽に泳ぎ抜くシンプル処世術。

この記事は『近すぎず、遠すぎず。他人に振り回されない人付き合いの極意』からの抜粋です
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