脳の活性化や肌の老化を防ぐ役割も! 意外と知らないすごい「骨」の力と鍛え方を医師が解説

若いころは丈夫な骨でも、特に女性は閉経を境にホルモンバランスが変わり、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の危険性が高まります。しかも、骨の役割としては全身への影響があることも明らかに。

今回は、Dr. 孝志郎のクリニック院長の藤澤孝志郎(ふじさわ・こうしろう)先生に「骨を強くするトレーニングと食材について」教えてもらいました。

重要なのは骨の新陳代謝
刺激を与えて骨を強く!

「骨は、体を支えていることに加えて、脳と連携して記憶力を向上させたり、全身の免疫細胞を活性化させて生活習慣病を防いだり、肌の老化を防ぐなど、全身に影響を与えることが分かっています」と、藤澤孝志郎先生。

その役割の中心を担うのが、骨から分泌されるオステオカルシンというホルモン。

別名"若返りホルモン"とも呼ばれ、下記にあるようなさまざまな働きをもちます。

「健康や美容にいい影響を与えるオステオカルシンですが、骨の新陳代謝の際に働く骨芽(こつが)細胞からしか分泌されません」と、藤澤先生。

では、骨の新陳代謝を促すにはどうしたら良いのでしょう。

「骨は刺激を感じるとマイナスの電気を発生します。この電気が骨の新陳代謝を促し、骨を強くします。大きな力で刺激する必要はありません。刺激さえ与えれば、何歳でも骨を強くできます」。


骨ホルモンが全身を活性化

オステオカルシンは、骨芽細胞が作り出すたんぱく質の一種で「若返りホルモン」とも呼ばれます。ここでは、オステオカルシンのすごい作用を紹介します。

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記憶力アップ
脳の海馬の働きを活発にし、記憶力を上昇させたり、認知機能の向上を促します。

動脈硬化を予防
血管を緩める一酸化窒素の産出を促し、しなやかで丈夫な血管に。動脈硬化や心筋梗塞の予防につながります。

血糖値を下げる
膵臓(すいぞう)に届くと、血糖値を下げる働きをもつインスリンの分泌量を増やし、糖尿病の予防にも。

美肌づくり
骨で作られるコラーゲンの生成を助けて、ハリのある美肌づくりに役立ちます。

長寿ホルモンの分泌を助ける
長寿ホルモンとも呼ばれるアディポネクチン(善玉ホルモン)の分泌を促し、脂肪を燃焼しやすくします。

肝心なのは骨の新陳代謝です

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骨は毎日少しずつ新しい骨に生まれ変わります。まずは破骨細胞が古い骨を壊します。次に、骨芽細胞がコラーゲンを生成し、そこに腸で吸収されたカルシウムがくっついて新たな骨が作られます。

骨を強くするには...

●骨を刺激する骨トレを行う
●ビタミンKを摂る
● 1日15分、日光を浴びる

骨の健康にはビタミンDも不可欠。紫外線を浴びることで、皮膚でビタミンDが作られ、カルシウムの吸収を高めます。

【骨を強くする方法】3つの骨トレを行う

セルフ力比べ(1日1回から何回でもOK)

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両手を胸の前で組み合わせ、両側から5秒間、全力で押し合う。

リラックスかかと落とし(5~6回×1日1~2回)

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リラックスしていすに座る。両足のかかとを上げてから、床にストンと落とす。

腕立てもどき(ベッドや布団の上で10回)

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床に腹ばいになった状態で体の両脇に腕を置く。そのまま、床に向かってグッと手を押し込んでから力を抜く。

【POINT】腕立て伏せとは違うので、腕の力で体を浮かせる必要はありません。


上の「骨トレ」は、誰でもできる簡単な体操。

肝心なのは、毎日コツコツ続けることだそうです。

骨量の減少を防ぐには、必要な栄養をしっかり摂ることも大切。

「積極的に摂りたいのはビタミンKです。併せて、カルシウムを効率よく摂れる魚を。特に、丸ごと食べられるイワシはカルシウムが多くおすすめです」

骨を強くするトレーニングと食事で、若々しさを保ちましょう。

【骨を強くする方法】ビタミンKを摂る

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骨ホルモンの材料になる
ビタミンKは、オステオカルシンの働きを活発にするエンジンのようなもの。ビタミンKを摂取することで、はじめてオステオカルシンが活性化し、骨が強くなります。脳の活性化や肌の老化を防ぐ役割も! 意外と知らないすごい「骨」の力と鍛え方を医師が解説 2304_P066_02.jpg

良質な脂と一緒に摂る
ビタミンKは脂溶性ビタミンなので、良質なオイルと一緒に摂取すると吸収量が多くなりま
す。スプーン小さじ1/2~1杯程度のオリーブオイルやごま油をからめて食べましょう。


藤澤先生おすすめのビタミンKが多い食材

ブロッコリー
100g当たり210μg(マイクログラム)
脳の活性化や肌の老化を防ぐ役割も! 意外と知らないすごい「骨」の力と鍛え方を医師が解説 2304_P066_03_W500.jpg納豆
1パック(40g)当たり240μg脳の活性化や肌の老化を防ぐ役割も! 意外と知らないすごい「骨」の力と鍛え方を医師が解説 2304_P066_04_W500.jpg

青じそ
100g当たり690μg脳の活性化や肌の老化を防ぐ役割も! 意外と知らないすごい「骨」の力と鍛え方を医師が解説 2304_P066_05_W500.jpg

どのくらいの頻度で食べるの?
2~3日に1回は摂取を

どのくらい摂ればいいの?
1日の摂取目標量は150μg

※参照:「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」、「日本人の食事摂取基準(2022年版)」


《骨粗鬆症の治療は進化しています》

骨粗鬆症の治療薬は、症状や病気の進行度に応じて選択肢が増えています。下記は藤澤先生のクリニックでの症例。6カ月に1回、骨粗鬆症治療薬の注射(デノスマブ)を打ち、併せてビタミンKのサプリメントを摂取。自宅で骨トレーニングを続けた結果、1年2カ月で骨密度が上昇。デノスマブは、破骨細胞の働きを抑制し、骨が溶けるのをブロックして、骨を丈夫にする薬です。

半年に1回の注射治療の経過(70歳女性)

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骨密度は1459m/sec
若い人と比較した値は61%
同年代と比較した値は77%

▼1年2カ月後

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骨密度は1498m/sec
若い人と比較した値は79%
同年代と比較した値は113%

※Dr.孝志郎のクリニックで治療中の骨粗鬆症患者の骨密度の変化。

取材・文/寳田真由美(オフィス・エム) イラスト/熊本奈津子 

 

Dr. 孝志郎のクリニック院長
藤澤孝志郎(ふじさわ・こうしろう)先生

宮崎大学医学部卒業。日本内科学会認定総合内科専門医。著書に『内科系専門医試験解法へのアプローチ第1集、第2集、第3集』(医学書院)、『世界一効率よく若返る! 1日5秒骨トレーニング!』(ビジネス社)など。

この記事は『毎日が発見』2023年4月号に掲載の情報です。
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