指に起こる腱鞘炎の一種で、中年女性に多い「ばね指」。腱が動くたびに腫れた部分が引っかかり、指を伸ばそうとすると「パチン」と跳ねるようになります。今回は、山王病院・整形外科部長の青木孝文(あおき・たかふみ)先生に「ばね指」についてお聞きしました。
主な特徴
40~60代の女性に多い
中指・薬指・親指に起こる頻度が高い
朝方に症状が強い
主な治療法
指のストレッチやマッサージ
腱鞘内ステロイド注射
腱鞘切開術
ばね指はこうして起こる
【曲げるとき】
指を曲げる際に、腱が腱鞘に引っかかり、痛みが発生する。
【伸ばすとき】
屈筋腱が腱鞘に引っかかり、指を伸ばしにくくなる。力を入れて、急に引っかかりが外れた際、バネが弾けたような動きになる。
ばね指とは、指に起こる腱鞘炎の一種です。
骨と筋肉をつなぐ腱を包む筒状の通り道・腱鞘が何らかの原因によって炎症を起こし、腱が動くたびに腫れた部分が引っかかって、指を伸ばそうとすると「パチン」と跳ねるようになります。
まだはっきりとした原因は分かっていませんが、圧倒的に中年女性に多い(男女比は1対9)ことから、女性ホルモンのバランスが関係しているという学説もあります。
また、指を曲げる・伸ばすの動きのバランスが崩れることが原因という考え方もあります。
ばね指と似たような病気にドケルバン病がありますが、要因となる腱の位置が違います。
ドケルバン病は、親指の手首に近い「指を伸ばす腱(短母指伸筋腱、長母指外転筋腱)」が引っかかる病気です。
手のひらの皮膚の下にある手掌腱膜が硬くなる「デュプイトラン拘縮」という病気の症状も似ています。
徐々に指が縮こまってきて、引きつれてしまう病気ですが、ばね指のように、パチンと跳ね上がることはありません。
ばね指の治療のポイントは「痛みを減らすこと」と「指への負担を減らすこと」です。
炎症を和らげるためになるべく安静にします。
下記のグーパー体操やマッサージも有効です。
これらで3カ月ほど様子を見て、改善しなかったら、整形外科を受診しましょう。
何度も指が引っかかる場合には、腱鞘の狭くなった場所に、痛み止めとステロイド剤を混ぜたものを注射する方法を試します。
効果は約3カ月間続きますが、頻繁に行うと腱を傷めます。
次までの間隔を少なくとも3カ月空けます。
症状が長引く場合には、手術療法で腱の通り道を切り広げます。
局所麻酔の日帰り手術で、15分程度で終了します。
手術は保険が適用され、3割負担の場合、7000~8000円程度で済みます。
セルフチェックリスト
□手のひら側の指のつけ根を押すと痛い
□手のひら側の指のつけ根が熱を持っている
□手のひら側の指のつけ根が硬くなっている
□指の曲げ伸ばしがスムーズにできない
□朝起きたときに特に指が曲げづらい、こわばっている
□指が曲がったままになり、戻そうと力を入れるとパチンと跳ねる感じがする
※これらの項目に一つでも当てはまれば、ばね指の可能性がある
※手外科の専門医は「日本手外科学会」のホームページに掲載
自分でできる改善法・予防法
グーパー体操
指を曲げる筋肉と伸ばす筋肉のバランスをとることが目的。入浴時などに温めながら行うのが効果的。早く動かすのではなく、2~3秒待つのがポイント。
1.親指を中に入れて(痛みが強いときは外側にしても良い)グッと力強く手を握る。そのまま2~3秒待つ。
2.親指と小指の間の距離を最大限に広げて、指と指の間を開く。手のひらを横に伸ばすイメージを強く持って指をしっかり伸ばす。そのまま2~3秒待つ。
3.1と2を何度か繰り返す。
指の関節のマッサージ
指の第二関節(PIP関節)周辺が痛い人は、指の関節の横を通る伸筋腱(指を伸ばすための腱)が硬くなっていることが多いため、指の関節まわりのマッサージがおすすめ。
1.指の根元を反対の手の親指・人さし指の指先で挟んで、その指先でグリグリと回すように3~5回マッサージする。
2.指の第二関節を1と同じようにグリグリと回すようにマッサージする。
3.爪の生え際をグリグリとマッサージする。
文/古谷玲子 イラスト/片岡圭子